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私のひぃばぁちゃん

私のひぃばぁちゃん。
そう、母方のひぃばぁちゃんはちょっと癖があり、
謎めいたひぃばぁちゃんだった。

今思うと、誰にも似ていなくて、誰にもキャラが被っていなくて、細っいのに誰にも何も言わせないオーラを醸し出していた。

私の記憶に残っているひぃばぁちゃんの姿は、
掘りごたつの奥角席で、キセルをくわえ少しだるそうに座っている姿だ。

じぃちゃんは町の偉いさんをしているみたいだし、
ばぁちゃんは専業主婦で夏休みなど子供や孫がわんさか集まると家事の船頭をきってをあれこれやっている笑顔の素敵なばぁちゃんだった。
か弱そうなひぃばぁちゃんは、ただちょこんと座っているだけなのに、
ひぃばぁちゃんの一角だけは「近寄るでないっ!」というような異様な空気に包まれていた。

今は亡きひぃばぁちゃんだが、私の記憶に鮮明に残っていることがある。
それは「かんのむし」だ。

「かんのむし」ってなぁに?

ひぃばぁちゃんの家は広かった。
まぁ、田舎だからっていうのもあるけれど、それは広かった。

ある年の夏休み。
そうだなぁ、私は小2くらいだっただろうか。
外でひとしきり遊んだ私はひぃばぁちゃん家に戻ってきて、玄関に入ると、廊下の方で他の孫達と母親達とひぃばぁちゃんがわちゃわちゃ喋ってるのが聞こえてきた。
「うぉぉぉぉ!」なんて声も聞こえた。
私は「なんだなんだ!!」と駆け寄っていき、その様子をのぞき込んだ。
っとその瞬間、兄の掌から白いものがウジャウジャ出てきていた。
私は声を失った。
「なんじゃこりゃぁ!」
状態だ。

後で母に聞くと、それが「かんのむし」だったらしい。
因みに、その後、私の掌からもその白くて細長い虫のような短い糸のようなものが出てきたのは言うまでもない。

母曰く、ひぃばぁちゃんは昔からその「かんのむし」を出すことができた。
近所の人も、もちろん母達もやってもらったらしい。
今思えばその秘儀を受け継がせてもらっておけば良かったと思うのだが、当時の私はひぃばぁちゃんのオーラがさらに大きくなっただけだった。
さらに付け加えるならば、お腹が痛い時はひぃばぁちゃんの手がその痛みを治してくれたらしい。
母よ、本当なのか??

そんなひぃばぁちゃんなのだが、1枚だけ私と一緒に写っている写真が残っている。その写真はなぜか私の記憶と異なり、ひぃばぁちゃんの横で掘りごたつに入り、笑顔でいる私とひぃばぁちゃんの姿だ。
記憶って怖いわね。

そして、あれから何十年たっただろうか。じぃちゃんも亡くなり、ばぁちゃんも記憶をだいぶ無くしている。
ひぃばぁちゃんはいったい今あの世でどうしているのか、私は気になって仕方がない。
 

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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