記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【Outer Wilds考察】骨から見るOuter Wilds生物の生態

******************************************
この記事ではまたもやNomai、加えてHearthianという生物たちの生態について好き勝手に妄想しており、
Outer Wilds本編のネタバレをふんだんに含みます。
******************************************

本記事で引用しているスクリーンショットは全てOuter Wilds本編のものです。


前回、Nomaiの脚の進化史についての妄想を公開したところ、思った以上に多くの方に読んでいただけてひっくり返りました。ゾンビとしてこれほど嬉しいことはないです。本当にありがとうございました。


実は、記事としてまとめるには根拠薄弱であまりにも妄想がすぎるので無かったことにしていた考察ネタがもういくつかあります。自分の専門でない領域に踏み込んだネタもあったため無責任な放言になりそうで迷っていましたが、「逆に架空宇宙生物の専門家なんかいるか???」と思い直したので、今回掌編集としてまとめることにしました。






Nomai編

※以降、前提として、Nomaiは地球哺乳類の子孫であるという仮説を置く。詳細は前回参照。

Nomaiの腹回りについて

Nomaiの骨格設定画とゲーム中でのモデルを比較してみると、ゲーム内モデルでは下の方の肋骨がなんか後ろ向きに飛び出ている。

引用 左: Ian Jacobson ARTSTATION, https://ianjacobson.artstation.com/projects/3ozm5A (2022-03-07 アクセス), 右: 本編スクリーンショット

この不思議な肋骨について、「飛び出てた方がカッコいいから」以外の理由をひねり出したいと思う。

この肋骨はそもそも動くのだろうか?脇腹よりちょっと上、肋骨の下の方を触りながら深呼吸してみると分かるが、肋骨というのはあまり可動域が無い(基本的な役割が内臓の防護なので動く必要がない)。一方で例えばヘビを見てみると、彼らは自分の胴体よりも巨大な獲物を飲み込むために肋骨が自由に広がるようになっている。Nomaiにもそのような事情があったのだろうか?

引用 左: Ian Jacobson ARTSTATION, https://ianjacobson.artstation.com/projects/3ozm5A (2022-03-07 アクセス), 右: 本編スクリーンショット

Nomaiの顎を見てみると、どうも食物をすり潰すのに適した歯をしているから草食に思える。そのため木を丸呑みなどするのでない限り、ヘビのように肋骨が可動したり、もしくは後ろに向かって生えたりする必要はないように思うのだが……

サボテンを食ったNomaiが絶対にいたと思う Coleusあたりとか

一方で地球哺乳類というのは植物を消化するのがド下手クソなので、草食の動物は腸を長くして植物が消化の工程を長く過ごすよう時間を稼ぎ、栄養分をできる限り吸収する戦略をとらないといけない(詳細は省くが、なんと腸内に住む微生物がせっせと分解して栄養に変えてくれた草を横からさらって吸収している)。
Nomaiはヤギやウシと異なり二足歩行生物なので、腹に長くて重い腸が収まっているのは結構腰にクるような気がする。そうするとこの飛び出た肋骨は腸の収納スペースを稼いでいたとか、腸を支えるなんらかの支持構造の痕跡だとか……かなあ?

更にもしこの肋骨が可動するのであれば、ヘビのように「普段は腸を畳んでおき、草を食べた直後だけ肋骨が開いて腸の展開スペースを確保している」みたいな妄想さえ可能であり、つまり木の炉辺太陽系に残っているNomaiの肋骨がもれなく開いているのは例の彗星が来たときにNomaiたちがちょうどお昼ごはんとか食べてお腹いっぱいな時間だったからとか……………かなあ????

つまみ食いがすぐばれる


Nomaiの第3の目について

第3の目がある場所、ヒトでいう前頭前皮質(前頭前野)がある位置だと思うんですけど、この辺って性格とか意思決定を司る部位だったはず。そういう場所に第3の目のためのでっかい眼窩なんかができたら間違いなく脳機能がなんらか変質するはずというか、Nomaiが好奇心サイコパスなのってこれのおかげなのでは……?
もしくは、突飛な話だが、我々ヒトで睡眠などの概日リズム調整に関わっている脳の部位(松果体)が前回言及した地球生物の第3の目(頭頂眼)と起源が同一であるように、Nomaiの第3の目はもはや脳機能の一部も担っていて、あの器官こそがNomaiの思考をNomaiたらしめているとか…… … ……?????(信じないでくれ)



Hearthian編

Hearthianについては正直これまで以上に何一つとして根拠のある推測ができない。なぜならどこにも彼らの内部構造が分かる資料が無いからです。保健室みたいなところにHearthian体模型があってくれよ…!

詳しく!!!!!!!

博物館の展示からしてHearthianにも生物学者がいるはずなのだが、心の底からそいつと話がしたい。
しかし話も聞けず、22分間でレントゲン装置を作ることもできない以上、妄想の寄る辺はたった2つしかなく、1つめはもちろん村で暮らしている生身のHearthianの外見、2つめは鍋の中で煮えている魚である。

キャンプで食う鍋
木の炉辺生態系で唯一の骨格標本

ちなみにこれから分かることとしては、「木の炉辺には地球脊椎動物に似た内骨格生物がいる(そしてそれはHearthianと共通祖先をもつはずだが、彼らがどの程度系統的に近いかは全く分からない)」ということぐらいしかない。4つ目の魚なのでHearthian(とその先祖)とそれなりに近縁と思ってよい気はするのだが……。この魚の頭骨、上2つの穴は眼窩だとして下の穴は何?筋肉の付着箇所?骨の構造からして顎が動かないように見えるが……そうすると筋肉(頬)の運動でエサを吸い込んで食べるタイプの採餌行動をするのか……?ブツブツ……ブツブツ……

Hearthianの頭について

大木を睨みつけるMarlの喉、よく見たら喉仏みたいな出っ張りがある

Hearthianといえば4つ目と大きな耳だが、例えばヒトと比較したときにこのことがどう影響するか考えてみたい。そもそもHearthianの頭がどの程度ヒトの頭と類似性があるかという話だが、まず目・耳・鼻・口などの感覚器官が頭部に集中していることからして、情報伝達のラグを無くすためにも、脳のような情報処理の中枢器官もまた頭部にあると思ってよいだろう。頭蓋に脳が目いっぱい詰まっているとしたらHearthianの脳はめっちゃでかい。やっぱり28万年で宇宙進出したような種は違うな……ヒトなんて数十万年前あたりはようやくホモ・サピエンスに分岐した時期なのに…

一方で気になるのが、目が増えているおかげで、顎や顔を動かす筋肉が発達するためのスペースが狭くなっているように見えることだ。これでゲーム内での表情の乏しさが説明できる。 いや、Hearthianの筋骨格系のサンプルがない以上、根拠はないんですけど……。
Hearthianは雑食性、かつPorphyによれば先祖代々割と酷いものを食っていたとのことだが、顎の筋肉が弱い種には結構過酷な食生活だったんじゃないだろうか。文明が発達した現在だったらもう少しいいものを食べているだろう。
たぶん、小さくて柔らかくて飲み込みやすい加工食品とか…………

これか~~~~~~~

これもか~~~~???????(樹液ワイン)

次に大きな耳について。地球陸上生物だと、身体にある大きくて薄い構造物(ゾウの耳、トカゲの帆など)の役割はだいたい「放熱」とみなされる。Hearthianの場合、「放熱」が必要な割にはクソ熱間欠泉の近くに住んでるんだよな。湿気がないと干からびちゃうが暑さには弱いとか、そんな生態なのかもしれない。

無い回

(おまけ)アンコウとクラゲ編

アンコウについて

木の炉辺太陽系の愉快な仲間であるアンコウ(以下「闇のイバラアンコウ」と呼ぶ)、こいつだけは22分後といわず今すぐ絶滅してほしいのだが、一方で宇宙生物としてはめちゃくちゃ興味深くて大好きだ。何故かというと地球のアンコウと外見上は似ているくせに体の中身がまっっったく違うからだ。こういうのを収斂進化という。(ほんとか?)

飼育下の闇のイバラアンコウ
闇のイバラアンコウの骨360°
チョウチンアンコウの骨格図
出典: Wikipedia (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Himantolophus_groenlandicus.png)

闇のイバラアンコウとチョウチンアンコウの骨を並べてみると思った以上に違うのではないだろうか。地球脊椎動物は身体を形成するときに遺伝子の制約を受けていて「体のどの位置になんの器官を作るか」がだいたい決まっているので、例えばヒトの腕と鳥の翼のように見た目がどれだけ変形しようが骨や筋肉1つ1つの相同性が追えたりするのだが、このアンコウ同士にはそうした共通の構造がほとんどない。私見では闇のイバラアンコウとチョウチンアンコウはウニと栗のイガぐらい違う。

--ここからしばらく読まなくていい部分-----
まず闇のイバラアンコウの骨格はざっくりいうと球殻のようだ。本物の提灯と似た形状である。球殻であるが故に脳が入っていそうな場所が見当たらない。どういうこと?額から後頭部にかけては頭蓋なのだろうが脊椎と肋骨の複合体のような形状をしていて隙間さえ空いている。下顎の骨は一枚板のような形状で、仮に地球脊椎動物として無理やり解釈するなら化石種ゾウのplatybelodonみたいに左右の下顎の前方が融合してヘラみたいに変形した上で顎関節側が潰された感じだろうか…。あと頭部以外の骨が触手の部分しかない。食った探査艇が首から出ていきそう。消化機構はどこにあるんだ?触手は肉がついてるとまだ魚のヒレが変形したもので通りそうだけど、骨になると魚のヒレと共通点が無い。つぶつぶな骨が連なった感じはウミユリなんかに似ているが…。
--読まなくていい部分終わり-----

個人的にOuter Wilds宇宙の生物が地球生物と類似点を持つのは「前回の宇宙で『眼』に入った意識的観察者が(=Outer Wildsを作ったのが)こういう生物だったから」という解釈なのだが、闇のイバラアンコウに関しては本当に今回の宇宙でいきなり生えてきたとしか思えない。分かりそうで分からない絶妙に""未知""な造形で興奮する。

クラゲについて

巨人の大海にいるクラゲ、元々は氷漬けの第5惑星で暮らしていたものだと思っていたが、もし闇のイバラアンコウと同時期同所で暮らしていた時期があったのなら、あの電気ビリビリは捕食者(アンコウ)対策だったのだろうか。
全員焼いておいてくれればよかったのに……。


今後の展望

進化古生物学界隈には「人間の鼻が高いのは眼鏡をかけるために進化したから」というミームがある。「本質を見失って何かに無理やり意味を見出している」さまを笑うジョークである。

一方で「化石種の変な形状(例: 恐竜のよくわからない羽やトサカ)の役割、『異性へのアピール』で片付けられがち」というあるあるもある。「分からないからって適当に済ませるな」という教訓である。
今回の記事は公開するに値する内容だったかどうか未だに迷うところではあるが、自分なりに筋道を立てて考えた結果という誠意は見せられたと思う。

言うまでもないですが、本記事は全編ただの妄想にすぎないので、一笑に付してくれれば幸いです。

[追記] 2022-06-18
DLC編も書きました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?