ごはんがないから、パンを食べるしかなかった。

ごはんがない。まただ。

私はまた、米を買い忘れた。つい先日も同じ過ちを犯したというのに、また米を買い忘れていた。金曜日に5kgの米袋に入っていた米をきっちり使い切って、週末に買いに行こうと思っていたのに、すっかり忘れていたのだ。

週末の自分を過信すべきではなかった。週末の私は本当に信用ならない。ウキウキとアルコールを摂取しては、怠惰な生活を送ってしまう。何を食べて何を飲むかばかりを考えてしまって、本来すべきことなど、明後日に放り投げてしまう。土曜日の明後日は月曜日なので、月曜日が憂鬱になること必死だが、その憂鬱さすらもアルコールが溶かしてしまう。基本的に私は何も考えず、週末になるとただただ楽しいことだけを考え続けてしまう。

その怠惰な私のために、スマホにはリマインダーという素晴らしい機能が付いているのだが、金曜日の夜は「米」と一文字だけ書いた雑なリマインダーをセットすることを忘れていた。まあ、大丈夫だろうと。きっと私は米を買い忘れないだろうと。

八十八と書いて米。88回もの手間を経て、家庭に届けられるべき米を、たかだか一回の横着のために手に入れ損なったのだ。私のバカ、バカ、バカ！

昭和のアニメばりに頭をポカポカと叩いたりはしなかったが、あー、今日も米がねーや、と思いながら、私は朝のうちに夕食の下ごしらえをした。その日は、手羽元をトマトで煮たものと野菜たっぷりのお味噌汁。そしてサラダ。

私は下ごしらえを済ませると、また米を買い忘れてはたまらない、とリマインダーをセットした。

米！！！

絶対に忘れるもんかの感嘆符

そして、夕刻。

私は仕事帰りにスーパーへと自転車を走らせた。米・米・米と頭の中で念仏を唱えるように米米と唱え続ける。そのうちに、頭の中で浪漫飛行が流れ出し、カールスモーキー石井がとてもいい声で、そして雰囲気のある発音でマイハート🎶と歌った気がした。

スーパーに到着するなり私は米をカゴに入れる。

だがしかし、米を今から炊くのか？　
めんどくさくない？　
えー。ご飯いる？　
こないだ米がなかった時は、米の代わりにに焼きそばを食べたし、別にご飯じゃなくてもよくない？

急に私の脳内で米を食べるかどうか会議が開催された。※インサイドヘッド。

コメナシ｜米なくてもよくね？ギリギリで生きて行こーぜ。
ハラペコ｜米はなくてもいいけど、炭水化物は必須。食べないと生きてけない。
ゲンリョウ｜炭水化物に頼りすぎ。タンパク質とビタミンがあればいいって。
マッスル｜タンパク質万歳！鶏肉最高！
マリーアントワネット｜米がなければパンを食べればいいじゃない。
みんな｜なるほど！
ビショク｜味噌汁用意してたやん。パンと味噌汁合う？
ハラペコ｜ナポリタンに味噌汁合うんやけん、ありでしょ。
ジャン=ジャック・ルソー｜人間は生まれながらにして自由である。しかし今やいたるところで鎖に繋がれている。味噌汁にはご飯でならなければならないという思考は、その末路である。
みんな｜味噌汁と合わせるものに自由を！イエーイ！

カオス・インサイドヘッド

ということで、パンもよきかな、と米とは別に食パンも購入した。いつもなら６枚切りを購入するのだが、なんとなく厚みが欲しいと思い、５枚切りを購入。

帰るなり私は鶏肉のトマト煮と味噌汁を温めた。食パンを外袋から取り出し、皿に出す。せっかくだし、チーズをのっけちゃえと、食パンにマヨネーズを塗りたくり、その上にピザ用チーズをたっぷりのっけてトースターで焼いた。

よく考えたら、私は汁物ファーストでサラダセカンドな人間だ。味噌汁は単品で食べるので、パンでもご飯でもあまり関係がない。我が家の面々は三角食べをしないので、主食がパンでもご飯でも焼きそばでも影響がないようだった。

むしろ、珍しくパンが出ている食卓に、みんな湧き立った。

さっくりとしたパンの上に乗せられたチーズはとろとろでこんがり。一口、口に含むとチーズの匂いがふわんと鼻を抜ける。５枚切りにしたため、トースターで焼いても、中はふんわりとしていて柔らかい。ふわふわとサクサクの食感が楽しめるところに、トロットしたチーズがびよんと伸びて楽しい。私は耳の部分だけちぎると、そこに鶏肉のトマトソースを載せる。コクのあるトマトソースがパンと絡んで、これまた美味しかった。

レオン｜ばんごパンと味噌汁もありよりのあり？

ほんとかなぁ。