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夏バテ晩酌

今宵も私は酒を飲む。
元気があっても元気がなくても、疲れていても疲れていなくても。飲むことに理由などない。あるのは、酒を飲むという事実だけ。

晩酌(ばんしゃく)とは、夕食時など、夕方から晩の時間帯に飲むのこと、または、そういった時間帯に飲酒する習慣のことである。

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土用の丑の日。

その日の福岡市の最高気温は、34度あるいは35度だった。正確な数字は覚えていない。私の性格的に正確なものは覚えられないのだ。数字はあくまでも数字。私の人生に大きく影響を与えることはない。大事なのは、私がどう感じたかだ。その日の私がどう感じたかといえば、暑い。その一言に尽きる。

しかし、なんだか気だるい。

起床後、犬の散歩のために外に出た。その時私は、朝方に降った雨が、再び空に帰っていく瞬間に出くわしてしまった。アスファルトにへばりついていた雨が、湯気となって立ち上り、私の皮膚にまとわりつく。乾燥しやすいアラフォーの私には、ありがたいことだと思った方がいいのかもしれないが、そんなことはない。肌がしっとりとはならない。ベタベタする。ベタベタするのは10代から20代前半にかけての若い時期に、付き合い始めた恋人同士と触れ合う時だけでいい。

それにしても台風3号のせいなのか、どうにも肩が凝る。
いや? 気圧のせいではなく、もしかすると何かに取り憑かれているのかもしれない。ストレッチをしても効果がないから、多分、何かに取り憑かれているのだろう。どこぞの悪霊かもしれないし、note毎日更新の呪いかもしれない。重くのしかかるプレッシャーだろうか。

そんなことを考えながら、なんだか疲れたなぁと独りごちる。そして、なんか元気が出るもの食べたいなぁ、と思う。

そりゃもう、土用の丑の日に食べるなら鰻でしょ!
今日の晩酌は鰻でしょ!

ということで、私は仕事終わりにスーパーマーケットへ寄ることにした。土用の丑の日ということで、スーパーマーケットには鰻が大量に陳列してあった。どれも大ぶりなものが多かったが、中国産のものでも一尾、税込1,500円は下らない。国産だと倍はするようで、税込3,000円近くする。我が家は食べ盛りがいる四人家族なので、どう考えても一尾では足りない。他のおかずを用意するとはいえ、二尾は欲しいところ。

本当は国産をいただきたかったが、流石に無理!
ということで、大奮発をして、中国産の鰻を二尾購入した。税込3,000円近くもする。家計に大打撃。でもこれで元気が出るといいなぁと淡い期待を抱きながら、千円札を3枚と少しの小銭を財布から取り出した。3,000円で足りなかったのは、山椒も購入したから。鰻といえば、薬味は山椒と私の中で相場は決まっている。

帰るなり、ビールのプルタブを起こす。

プシュッと軽快な音がする。グラスを傾けて、ビールを注ぐ。そして、そのグラスを口に当てる。冷えたビールが喉を駆け降りる。仕事終わりの一杯のうまいこと。私の口からは唾液がじわじわと滲み、ビールの苦味と一緒くたになり、私はそれをゴクンと飲み込んだ。その瞬間、口から思わず吐息が漏れた。今日もお疲れ様でした、と自分に乾杯をする。

ビールを飲みながら食事の用意をした。食事ができた頃には、グラスが空になっていた。空になったグラスに氷を落とす。そこに焼酎を入れた。さらに炭酸水を流し入れる。いも焼酎の炭酸割り。暑い夏はこれもいい。とはいえ、夏に限らず年がら年中飲んでいることは、ここだけの秘密。いや、秘密にする意味がない。隠すほどのことでもない。

スーパーマーケットで買ってきた鰻をカットし、レンジでチン。

ごはんに乗せて山椒をたっぷりふって。

甘辛いタレとふんわりとした鰻に、ピリリとした山椒。どれか一つ欠けても、このおいしさは成立しない。私は鰻とご飯を頬張り、口の中で夏の風物詩をめいっぱい堪能すると、ゴクリとそれを飲み込んだ。冷えたグラスを右手に持ち、グラスのふちに唇を押し当てる。グラスを傾け、ゆっくりといも焼酎の炭酸割りを口の中に流し込む。鼻から少し芋の香りが抜ける。

美味しい食事と美味しい晩酌で、力がゆるりと抜けていく。

あぁ、力が入っていたのか、と思う。
疲れるはずだ、と。



晩酌とは、オンからオフに切り替えるスイッチなのかもしれない。






夏の連続投稿チャレンジにチャレンジ中。

せっかくだし補足してあった、 #今日の晩酌 で連続5記事書きます!
お付き合いいただけると嬉しいです!





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