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泪が三日月を滑り落ちた夜に

泪が三日月を滑り落ちた夜に

帰り道、細く細い三日月が空に浮かんでいた。

空は青とも紫ともピンクとも言えないような、ぼんやりとした色合いだった。私は静脈のように空を覆う枝越しに三日月を見た。細く細い三日月。

私には、その三日月がこちらを向いて笑っているように見えた。決して楽しげな笑顔ではない。三日月から思い出されるのは職場の同僚の冷ややかな嘲笑の口元。嫌な笑顔だ、と思った。その笑顔を思い出して私の胸はしくしくと痛んだ。次第

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