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第3章 03 これまでと、これから(最終回)

地域の個性が生きる時代

さて次は「これから」を見ていきましょう。

 これからは人口が激減していきます。激増した時とは逆ですから「鳥取県」1つ分が毎年消え失せるのです。そして生産年齢人口割合もどんどん縮小していきます。消費する人も生産する人も減っていく時代。

 何もしなくてもお客さんが増えていく時代から、いろんな手立てをしたってお客さんが減っていく時代の到来です。

 事業でいうと、何か大きな問題を起こさなくても、必ず売上が減っていくわけです。かつて日本が経験したことのない継続的な市場縮退局面に突入しているのが今です。そしてこの状況は100年程度続くと言われています。

 一方で日本は、豊かさに関して、不足を補ったり、不便を便利にしたりというモノの尺度ではなく、自分を豊かにしてくれる経験を重視する成熟社会になったといえます。

 経済成長期のようにモノで満たされる豊かさではなく、学びや旅行、地域での活動や人とのつながり、家族との時間や日常の暮らし、趣味や娯楽といった余暇の使い方に代表される経験や体験によって豊かさを感じる時代になったと思います。

 そしてそのあり方は人それぞれで良いという考え方。つまり「みんな」という何か1つのまとまった志向があるわけではなく、多様な個人による多様な豊かさを寛容する時代です。

 多様性とはつまり違いです。最近は色んなところで多様性多様性と叫ばれるわけですが、多様性=違いですから、違いって実はとても受け入れがたいものだと思います。

 人と意見が違うのはやっぱりしんどかったりします。それを受け入れていこうという時代です。人と違う方がいいし、個性が大切ですから、それぞれが寛容であり、それぞれを尊重する必要があるということです。

 そういう意味で、その個性の源である努力や能力や才能がとても大事になってくると思います。「みんな」と同じで良いという人は埋もれていくし、自分の好き嫌いがしっかりしていないと、豊かな暮らしに近づくことができなくなっていく。

 これまでの「みんな」という幻想が通用した時代とはえらい違いです。そして多様な個性を認め合い、それぞれがそれぞれでその個性を伸ばしていく時代です。みんな平等ではなく、出来る人と出来ない人がいて良い、もっというと、その方が良い。

 そのような状況で上手く振る舞えるのは「平等・公平・公正」を基本とする行政機構のような公ではなく、圧倒的に民になります。

 まだ誰も見たことのない、けれど世の中に求められる商品やサービスを、少数から多数に広げていくことができるのは民が得意とするところで、いわゆるエベレット・ロジャースが発見したイノベーションとその普及といわれる分野です。

 都市計画やまちづくりにおいても、これまでの公による大きなまちづくりではなく、民による小さなまちづくりが求められるのは、そのような時代背景があるからです。

 つまりこれからのまちづくりは、みんなという多数派ではなく、個性ある少数がまちを動かし、多数、つまり一般大衆である「みんな」を巻き込んでいくことになります。

 またこの多様性という話を地域として捉えると、これまでの都会と田舎といった2極の話ではなく、それぞれの地域にそれぞれの個性があり、そしてそれらが尊重される社会になるわけです。

 つまり、地域の個性が活かせる時代に突入します。まだ東京で消耗してるの?と言ったブロガーがいましたが、まさにその時代。都会の方がステータスがあって、田舎にステータスがないというような画一的な考え方ではなく、どちらの暮らしもその人の好みによって選べば良い時代です。

 それぞれの地域の個性やポテンシャルをしっかりと伸ばし、その地域を好きな人に選んでもらえるようになる時代。

 これまでの時代のように、田舎から都会に出て、いい会社に入って、都会で暮らしている自分に悦に入る人やそれに憧れる人もいれば、そんな画一的なライフスタイルってダサいよねって言う人が多くなっていく時代。

 多様な暮らし方を求める人が増えていく時代であり、地域それぞれの個性がもっともっと活かせる時代になっていきます。

 そのような意味で、都市計画やまちづくりに求められる職能は、多様な暮らしを求める層に向けて地域が持っている価値をいかに未来に変換できるのか?ということに尽きるわけです。

人口が減る時代を楽しく生きる法則

「これまで」と「これから」について考えていくと、少し前にも書きましたが、「これまで」と「これから」では考え方を逆にしてみるのがいいのではないかと思っています。

 なぜならば、日本のあらゆるところで勃発してるように、人口増加時代に作られたシステムが老朽化を起こし様々な場面で問題を引き起こしているからです。

 これからは増加した時と同じ速度で人口が減少します。これまでのシステムの根幹が揺るがされているわけです。

 なので、これまでとは考えを逆にしてみるというのが、人口減少時代を楽しく生きる法則になりそうです。

 「これまで」が全て間違えであるということを言いたいのではなく、何か違和感を感じたら「これまで」の逆で発想してみると、意外と答えが見つかるかもしれないという感覚です。

 詳しくは最後の章で新しい都市計画序論として説明したいと思っていますが、ここでは箇条書きで紹介します。

 お上・公共 → 民間・個人
 中心・都心 → 分散・ローカル
 建てることが正義 → 建てないことが正義
 機能分化・純化 → 複合・混合・多様
 みんな・多数(マス・大衆) → 自分・少数(パーソナル・ニッチ)
 慎重に計画 → 行動しながら変化
 強い・頑健 → しなやか・反脆さ
 大きい(身銭を切らない) → 小さい(身銭を切る)
 選択肢が多い → 選択肢が少ない
 外を意識 → 内を意識
 目に見えるもの → 目に見えないもの
 大きな経済圏 → 小さな経済圏
 課題ありき(Issue Driven) → 未来ありき(Playful Driven)


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