コロナ禍のハイブリッド授業:大学教員@香港のつぶやき(その1)

「サルタックのブログは内容が硬すぎる」という読者の皆さんから頂いた声を踏まえて、今年1月からお届けしている「理事のゆるふわ日記」シリーズ。第7回は、代表の荒木が動乱の地(!?)香港からお届けします。現在私は、香港の大学で社会学の教員として働いていますが、理事の山田が紹介したピッツバーグ大学と同じように、コロナの影響で昨年9月末まで授業は全面オンラインでした。その後はハイブリッド型(対面の授業とリアルタイムのオンライン授業を同時に実施する方法)を採用し、対面で授業を受けたい学生は教室に来て、オンラインが良い学生はオンラインで参加します。本学の教員の中には、全面オンラインになった時に「無理!」と拒否反応を示したものの最終的に頑張って対応し、何とか波に乗ってきたところでハイブリッドが導入された結果、途方にくれている人も少なからずいました・・・。が、幸運にも私の場合、前任校@日本で早くからハイブリッド型を導入しており慣れていたこともあって、比較的スムーズに移行することができました。

とはいえ、実際に教室にやってくる数名の学生と画面の向こう側にいる数十名の学生を同時に巻き込んでいくのは容易ではなく、日々どうすれば楽しくインタラクティブな授業になるか考えているところです。そんな中、これまで何度か「これは盛り上がっている!」と感じる場面がありました。読者の皆さんのご参考になるかは全くわかりませんが・・・せっかくですので香港の学生と盛り上がった瞬間トップ5をご紹介したいと思います。

第5位:埼玉ネタ
このサブタイトルを見て、「いやいや嘘でしょ、埼玉で盛り上がる訳ないでしょ」と思った方もいるかもしれませんが、本当です。別のブログで紹介したように、私はオックスフォード大学に留学していた際、出身地の埼玉県から奨学金を頂くとともに「埼玉親善大使」なるものを拝命しました。留学が終了するのと同時に大使の任も解かれましたが、引き続き「勝手埼玉親善大使」として埼玉の魅力を広めるべく、機会を見つけては自己紹介と絡めて埼玉の名所や特産品を説明したり、「翔んで埼玉」をススメたりしています。多くの場合、海外の人にとって「埼玉」は初耳なので「そんな場所が日本にあるんだ」程度の反応で終わるのですが、香港の学生は違いました。とある授業の初回、いつも通り自己紹介の中で埼玉アピールをして、「コロナが収束して日本に行く機会があったら、是非埼玉にも行ってね」と締めくくり次の話題に移ろうとした瞬間、とある学生が「Professor, is Saitama perhaps the hometown of XXX?(先生、もしかして埼玉ってXXXの出身地じゃないですか?)」と聞いてきました。それを聞いて他の学生たちも「あぁそうだ!」と乗ってきたのですが、私自身は何度か聞き直しても「XXX」が何のことか分からず、埼玉出身のワールドクラス有名人といえば所ジョージかな?神木隆之介かな?若田光一かな?まさかカズレーザーじゃないよね?と思いながらさらに聞いてみると、どうやらアニメのキャラクターとのこと。結局、XXXは広東語だったので分からなかったのですが、正解は・・・「クレヨンしんちゃん」でした。クレヨンしんちゃんの舞台は埼玉県春日部市ということで、日本のアニメ好きが多い香港の学生たちの間で、埼玉県はいわば聖地だと痛感した瞬間でした(←恐らく言い過ぎ・・・)。

第4位:ラッキールーレット
念のため、ギャンブルではありません。山田の記事でも触れられているように、オンライン/ハイブリッド型授業で教員にとって辛いことの一つは、学生の反応が見えづらいこと。カメラをオンにしても全員を一度に見るのは難しいですし、学生が何を理解している/していないか、どのタイミングで面白いと感じているか/飽きてしまっているか、等はなかなか掴み切れません。そのため、発話でもチャットでも、できるだけ反応してほしいと私から学生に働きかけるようにしていますが、中には非常に消極的で意見があるのに言わない人も少なくありません。とはいえ、単にこちらから指名して発言を促すだけでは、あまり面白くない上に私の恣意性が入り過ぎてしまう気がするため、先日から愛用し始めているのが「ラッキールーレット」です。こちらのサイトを利用して、受講生の名前を入力してルーレットを回し、これで運良く(悪く?)指名された学生が質問に答えることになります。初めてこれを画面上に映し出した時は、ディスプレイ越しに学生が手に汗握る様子が見て取れて興味深かったです(笑)。最近は、ルーレットの興奮を味わいたくて!?、発言できるのに敢えて私がルーレットを発動するのを待っている学生もいるとかいないとか・・・。

第3位:コンビニ
香港の大学で担当している授業の一つが「Sociological Research Methods(社会学研究手法論)」です。これは、その名のとおり社会学の研究手法をあれこれと扱うコースなのですが、その内容の一つに「サンプリング手法」があります。アンケート調査などをする際、調査を通じて明らかにしたい人全員(=母集団)にアプローチできない場合、母集団の中から一定数の人(=標本)を選んで調査をする(=サンプリングを行う)ことになりますが、そのための方法が「サンプリング手法」です。この手法の一つが「convenience sampling(便宜的サンプリング)」と呼ばれるもので、誤解を恐れずに単純化してしまえば、お願いしやすい人にお願いしやすいタイミング・方法でアンケートなどに答えてもらうアプローチになります。これを授業の中で説明する際、学生がイメージしやすいように「convenience」にちなんでコンビニの写真を一緒に載せてみました。使った写真は香港の至る所に存在するセブンイレブンだったのですが、気づけば学生との間で他にどのコンビニが好きか、コンビニの何が好きか/嫌いか、という話に脱線。。。こうした雑談になると、普段は「沈黙は金」とばかりに発言がない学生も積極的にコメントを発するようになるのが不思議なところですが、その中でやたらと多くの学生が「OK」「OK」と言い始めました。これまで、香港滞在中に「OK」というコンビニは見たことがなかったので、そんなお店もあるのかと思いながら話を進めて明らかになったのは、なんとOKは日本の「サークルK」!日本人としては「サークルK」と呼ぶのが当たり前ですが、確かに円の中にKが書いてあるので「OK」とも読めなくはない・・・。目からうろこの瞬間でした。

続いて第2位、第1位も発表したいところですが、残念ながら早くも今回の記事は書き過ぎてしまったようです。。続きは、次回(恐らく来月末)にご紹介しますので、乞うご期待ください!(その他、香港事情でご関心のあるテーマがあれば、是非お寄せください)

サルタック代表理事 荒木啓史

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