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運命を狂わす、スリリングな一皿『ボイリング・ポイント/沸騰』スタッフブログ

ロンドンの高級レストラン。妻と別居し、さまざまなことに忙殺されるオーナーシェフのアンディは開店直前の店に出勤してきた。クリスマス前の金曜日、予約はオーバーブッキング気味で、食材の発注忘れや衛生管理士の検査なども重なり、殺気立つ雰囲気のなか店が開店する。次々と出現するトラブルにアンディやスタッフたちのイライラが次第に沸点に近づく・・・

映画『ボイリング・ポイント/沸騰』
映画『ボイリング・ポイント/沸騰』

運命を狂わす、スリリングな一皿

アンディの出勤の様子から最後まですべてワンカット、NO編集、CG不使用の文字通りのワンショット作品。
ワンショット映画というと場面転換でのカットや会話での切り返しができないといった制約があることで、物語が文字通り一続きになり、物語の起伏や自然な時間の経過が凝縮されることで独特のテンションを維持できる代わりに、観ている側は一息つくところが殆どなくなり、作品のペースについていくのが大変だったりするのですが、この作品もそうした意味で典型的なワンショット映画らしい仕上がり。

現実にはそういう濃度で起きるわけはない次々と起きるトラブルや、新事態を敢えて詰め込むことでテンションを高め、物語の頂点を築いていきます。
なので、オープニングで起きるあれやこれやから開店後に起きるトラブルなど、観る側としてはアンディたちスタッフと同様にイライラが募り、決して楽しい系の映画ではありません。
まして、食事を提供する側の映画なので、登場する料理が美味しそうに見える飯テロ映画ではない。

この異様なテンションの元となるあれやこれやは“接客業あるある”な、さまざまなトラブルや出来事のオンパレードであり、実体験を持つ人にとっては登場人物たちの心理を身近に感じる部分かと思います。
こうしたトラブルを注意深く見ていると、それぞれに起こり得る理由があり、この日にそれが具現化したというだけで、その種はそれ以前から撒かれていたらしいことが窺われ、後半に向かうにつれ、アンディやお店はこの後どうなってしまうのか?といった不安が徐々に増してくるのです。
そうした意味で“Boiling Point”というタイトルはなかなか絶妙なネーミングだと思います。

果たしてお店は閉店まで無事営業できるのか?
観客はこの決して降りることの許されないジェットコースタームービーを最後まで見届けることで、ようやくその結末を知ることができるのです。
エンディングの最後の数秒まで堪能していただきたい。
上映時間95分とそれほど長い作品ではありませんが、観終わってからどっと疲れが襲ってくるのでした。

『ボイリング・ポイント/沸騰』静岡シネ・ギャラリー上映情報

2022/8/5(金)~8/18(木)上映

8/5(金)~8/11(木)まで
①10:45~12:25
②14:20~16:00
③19:30~21:10

8/12(金)~8/18(木)まで
①10:30~12:10
②14:35~16:15
③19:35~21:15


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