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ロシア政府の暗部に切り込む、緊迫のドキュメンタリー『ナワリヌイ』スタッフブログ
「ロシア」「ウクライナ」に関係する内容の可能性がある記事です。
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ロシア政府の暗部に切り込む、緊迫のドキュメンタリー『ナワリヌイ』スタッフブログ

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映画『ナワリヌイ』スタッフブログ

ロシアの反体制活動家アレクセイ・ナワリヌイは2020年8月20日、シベリアでの取材の帰途、旅客機の機中で急激な体調不良を訴え、機はオムスクに緊急着陸。ロシア当局はオムスクの病院からの移送に難色を示したが、その後ドイツに移送され、ロシアの神経性毒物“ノビチョク”による中毒と診断された。この中毒事件の驚くべき真相に迫るとともにナワリヌイがロシアに帰国する様子などを追うドキュメンタリー。

映画『ナワリヌイ』
映画『ナワリヌイ』


反体制派の有力者としてプーチンから忌み嫌われ、テレビや新聞など既存のメディアから封殺されたナワリヌイは、ネットでの活動を主軸にしたのでしたが、この映画で描かれる活動の様子を見るに、国境を越え速報性のあるネットでの広報活動の重要性を熟知しているのだと思います。
自らの生命の危機に瀕し、ナワリヌイは中毒事件の真相を追うことでロシアの暗部に切り込んでいきます。

ナワリヌイは英国に本拠を置く調査報道機関ベリングキャット(Bellingcat)の協力を得て中毒事件の関係者と思しき人物の行動履歴を集めていきます。
そこで集められる実行犯の絞り込みの様子は、大きな見どころのひとつ。
諜報・情報収集活動のうち、いわゆるオシント(open-source intelligence = OSINT)と呼ばれるこの手法はネットやニュース、書籍など、一般に(=合法的に)入手可能な情報の断片を突き合わせることで有意な情報にたどりつく活動のことで、ネットなどを通じたグローバルな情報システムが世界のあらゆる局面に張り巡らされている現代においては非常に有効な方法だと思います。
そして、特定した実行犯に対して直接電話を掛ける場面は必見。
これを成し遂げて反体制活動の大きな武器としていくところは、ナワリヌイのしたたかさと活動家としての手腕の手堅さを大いに実感するポイントだと思います。

ドイツで瀕死の状況を脱したナワリヌイは驚くべきことにロシアへの帰国を決意する。
その強固な意志と信念の強さはどこから来るのか?
映画は本人のインタビューなどを通じてその理由を明らかにしていきます。
中には返答に困るような質問にも敢えて答える。
特に注目すべきはロシア国内での極右とされる活動家との関係。
言論が封殺され、政治家が毒を盛られるような体制に対抗し“プーチンを大統領から降ろす”という大目的を達成するためには、国内で勢力のある組織との連携はタブーではない、とするナワリヌイの主張は議論の分かれる部分かと思われますが、我々西側世界の感覚からかけ離れたシビアな社会環境下において、不正義を糾す手段として“敵の敵は味方”というナワリヌイの選択は非常に興味深いものがあります。

2021年1月17日、ナワリヌイはロシアに帰国。
映画はその模様を機内と現地での映像を用いて詳細に伝えていきます。
ナワリヌイの帰国はロシア当局の帰国・出頭命令に応じたものでしたが、収監は当然のことながら、最悪の場合命の危険があるにも関わらず、帰国を果たす決意を固めた様子を見ると、その意思の硬さに驚愕を覚えるのです。
自らの信念の正しさと、それを支持するロシア国民の支援を信頼しての行動なのだということが窺われます。
帰国すればどうなるか、その覚悟を決めての映画製作であり、万一の場合に備えての一種の遺言でもあるインタビューの様子は、決して悲観的な様子はないものの、強力な意思のもとで行われたものであることが画面からひしひしと伝わってくるのでした。

「諦めるな」
「悪が勝つのはひとえに善人が何もしないからだ」

ロシア国民のみならず、正義を成そうとする人、それを支援する人々が持つべき心構えを、これほど端的に表す言葉はほかにないと思います。

映画『ナワリヌイ』静岡シネ・ギャラリー上映時間

2022/7/8(金)~7/21(木)上映予定
7/8(金)~7/14(木)まで
①12:00~13:40
②20:00~21:40
7/15(金)~7/21(木)まで
①9:50~11:30
②17:55~19:35

『ナワリヌイ』公式HP


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静岡市葵区御幸町にある、サールナートホール/静岡シネ・ギャラリーです。 定期的に演奏会、講座などのイベントを開催。3階には、映画館・静岡シネギャラリーを併設。 当館で開催するイベント、上映する映画の情報などを発信します。 http://www.cine-gallery.jp/