海空断片

Fairy Tail

 むかしむかしあるところに、おんなのこと王子様がおりました。ふたりはわすれられたまちのわすれられたお城に、ふたりきりで住んでいました。
 太陽は毎日おなじ時間にあかりをけして深い海の底にしずみ、月は毎日おなじかたちで星の海をわたり、そしてまたおなじ時間になると、太陽があかりをともして海の底からのぼってくるのでした。
 おなじような毎日が、おなじようにめぐっていきました。
 ふたりはときどきちがうことがしたくなって、だれもいないまちを探検したり、ふたりだけでかんがえたあそびをしたりしましたが、たいくつな日々がつづいていくこともわるくないとおもっていました。
 ずうっとおなじ毎日がつづけばいいと、王子様はおもっておりました。
 ずうっといっしょにいられればいいと、おんなのこはおもっておりました。
 けれどそのねがいは、かなわなかったのです。

 ずっと忘れられたままでいられればよかったのにね。

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