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ある日突然新しい名前をつけられた

角砂糖はどうやって作られるのか、
唐突に疑問に思った。

例えば大きな砂糖のかたまりを切ると仮定する。
きっと切り口のまわりのお砂糖は
ほろほろこぼれ落ちていくに違いない。

角砂糖は、グラニュー糖と液糖から作られています。グラニュー糖に液糖を混ぜてねり、四角い角砂糖の形をした型に流し入れて押し固めます。その後、温風で乾燥させ水分を飛ばせば角砂糖のできあがりです。
― https://loohcs.jp/articles/5276

なるほど、角砂糖はグラニュー糖を
固めて作られているのか。
考えてみれば当たり前の話である。

ふと、砂糖は人間の感情に
当てはめられるのではと考えた。

サラサラのお砂糖を手で掴むことはできないけど、
押し固めて角砂糖にすれば手に取ることができる。

感情を言語化することは難しいけど、
きちんと筋道を固めて整理すれば言語化できるし
誰かに上手く伝えることができる。

砂糖のかたまりを角砂糖にはできないように、
1度抱いた歪な感情を整理することは簡単ではない。

ずっと容器に入れっぱなしの角砂糖が
端からどんどん欠けてしまうように、
どんな思い出だって年月とともに風化していく。

どうせなら、1番綺麗な
角砂糖になった瞬間を切り取って残したい。

そんな気持ちでこの日記の名前をつけた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

名前といえば、私はSNS上の名前を
「さらぴ」としている。
もちろん本名ではない。

この名前をつけられたのは大学1年生の時、
初めてのスペイン語の授業でのことだ。

先生は日系アルゼンチン人の穏やかな人だった。
めちゃくちゃいい先生だったけど、
その先生には唯一の欠点があった。

それが、日本人の名前を忘れてしまうことである。

「ごめんねぇ〜わたし、覚えられないからね〜」
先生は、授業がはじまって真っ先に
私たちにスペイン語ネームをつけはじめた。

そこで私に与えられたのが「サラ」という名前だ。
友人たちは、親しみを込めて私のことを
「さらぴ」と呼んだ。

「さらぴ」は、今までの自分では考えられないほど
バイタリティに溢れていた。

スペイン語の勉強のために海外ドラマを見始めた。
ラテンな登場人物にカルチャーショックを受け、
ジメジメした性格がちょっとはマシになった。
人生で初めて外国人の友達ができた。
海外旅行に行ってみたいと思うようになった。
(スペイン周遊計画はコロナでキャンセル。無念。)

「さらぴ」という新しい名前は、
狭い世界しか知らなかった自分に、
新しい世界、新しい可能性を見せてくれた。

大学を卒業し、
リアルな世界の「さらぴ」はもう居ない。

でも、SNSで、「さらぴ」として文字を綴る。

この名前が、新しい世界を見せてくれたように。
新しく名付けたこの日記が、
私に新しい“何か”を見せてくれることを期待して。


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