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人はわりと簡単に変われる

私は動物が大の苦手だった。
保育園の時の遠足で動物園に行った時は
永遠に泣いていたらしいし、
小学校の鶏小屋の掃除は泣き叫んで
毎回先生がついて、掃除させられていた。
そんな私に地獄は訪れた。

小学4年生の夏、我が家に犬がやってきた。
ブリーダーに捨てられかけている所を
親が、1匹引き取ってきた犬だった。
名前はランディーと名付けられた。
最初はゲージに入っていたが、初めての環境
なんて関係ないかのように元気だった。
ゲージ越しだったら見ていられるくらいには
なっていたが、やはり怖い気持ちが強く、
犬がゲージから出ると、椅子の上に体育座りして、逃げてないフリをして逃げていた。

そんなある日兄に、
「絶対に痛くないから、絶対!絶対だよ!」
と言われ、椅子から足をだした。
犬は元気に噛んできた。が
もちろんそれは甘噛みで全く痛くなかった。
嫌いはこんな小さなきっかけで好きに変わり、
簡単に触れるようになっていった。
そして私は誰よりもランディーを愛し、
誰よりも動物が大好きな人間になっていた。

そしてすくすく育っていたある日、
ランディーの後ろ足に腫瘍が見つかった。
歳はもう12歳になっていた。
病院で検査し、悪性の可能性があると言われ
すぐに手術しようとした。
が、できなかった。
年齢もあり、麻酔に耐えられず、摘出しても
そのまま起きない可能性が高いと言われ
手術を断念。あと半年と宣告された。

それから2年間ランディーは生きた。
病院の先生も驚くくらい長く生きてくれた。
そして私が休みの日の夕方安らかに眠りについた。
死を理解できる大人になり、もう2度と会えない事が苦しくて悔しくて大号泣した。
火葬はその日の23時となり、それまで
亡くなったランディーの温もりの消えた体を抱きしめ、手を握りまた泣いた。

気づけば苦しい時も楽しい時も
ずっとそばにいた。
今は2匹犬を飼っている。
2匹とも何の縁があってかブリーダーに
捨てられてしまった犬だ。
2匹ともすごく可愛いし大好きだが
私はこの世界で1番ランディーが好きだ。
誰よりも幸せであってほしい。また会える日が来たら最初からたくさん遊び尽くしてあげる予定だ。もう私に椅子はいらない。

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