見出し画像

スリランカカレーの名脇役。その名はパリップ

お皿の上のまとめ役

スリランカカレーの名脇役、その名はパリップ。跳ねるような、軽やかで可愛らしい名前も好きです。

シンハラ語でずばりレンズ豆の意味で、インドやネパールのカレーでは「ダル」として名が通る、いわゆる豆のカレー。

カレーとはいうものの、口あたりはポタージュスープに近いでしょうか。ココナッツミルクでさっと煮込んだ、ほんのりスパイス香る優しい味が特徴。わたしは胃腸が疲れ気味の時に、お粥のような感覚でパリップだけを食べて調子を整えます。

画像6

右手前の黄色いカレーがパリップ。スリランカカレーの個性豊かな仲間たちをまとめる、頼れる一品でもあります。いつもいるけど我が我がと主張せず、さりげなくみんなをまとめてくれる、そんな存在感。役者なら名脇役。パリップを擬人化するとこんな感じかしら!?

チリたっぷりのチキンカレーを、はたまた黒胡椒のきいた魚カレーを食べて口の中が火事になったら、水を飲むのではなくパリップにレスキューを。優しいココナッツミルクの風味で、辛味や刺激が緩和されますよ。

画像3

(写真)南部の港町・マータラのレストランで。ガツンと辛い魚カレーの隣にパリップ

こんな豆で作ります

もっともポピュラーなのは、マスールダル(皮むきのレンズ豆)で。日本ではヒラ豆と呼ばれますが、英語名のレッド・レンティル(Red Lentil)で売られていることもあります。美しいオレンジ色が目印。

画像1

皮を剥いてあるので浸水の必要もありません。火の通りも早く短時間で調理できるのでおすすめですが、他の種類の豆(以下参照)でも問題なく作れるので手に入れやすいものを使いましょう。

・チャナダル:チャナ豆(小粒のヒヨコ豆)
・ムングダル:緑豆
・マタールダル:エンドウ豆
・トゥールダル :樹豆
・ウラッドダル:ケツル小豆(日本ではモヤシ豆)

簡単なのも魅力

パリップは思いついたらすぐ、簡単に作れるところも魅力。スリランカカレーはインドのカレーと比べても手順や調理法が易しいのも特徴のひとつですが、なかでもパリップの作り方は豆と他の具材を火にかけるだけという至ってシンプルなもの。

こんなふうに材料(豆・タマネギ・トマト・カラピンチャ・ランペ・ニンニク・ショウガ・スパイス類・ココナッツミルクなど)を鍋に投入して、火にかけるだけ。

画像2

不思議なことに、熱を加えると鮮やかな黄色に早変わり。15~20分程度で煮溶けます。

画像4

スリランカのいくつかの家庭でパリップを教わりましたが、豆の種類やトゥナパハ(ミックスカレーパウダー)の配合量が違ったりと味も千差万別。

汁気が多いバージョンやしっかり煮詰めたもの、また軽く炒めるように仕上げるものなど調理法もさまざまです。主菜のカレーが汁気のないものだと水分多めのパリップにしたり、その逆だと煮詰めてみたりと、他のカレーや副菜とのバランスを考えて作ります。
また、豆の食感を残したい時は調理時間を短く、よりポタージュスープに近づけるならばマッシャーで潰したりと、その時々で変化をつけるのも楽しい。

バリエーションで味に広がりを

仕上げにホウレンソウなどの葉野菜を少し入れると、彩りもきれい。茹でて刻んで最後にサッと加えてもよし、少量の油でマスタードシードと軽く炒めて混ぜるのもおすすめです。

アーユルヴェーダの「春は苦味」を意識して、菜の花フキノトウ入りパリップも乙な味。菜の花は手に入れやすくなりましたが、なかなかお目にかからないフキノトウバージョンは見つけたら必ず作る一品です。

茹でてアク抜きしたフキノトウをざっくり刻んでパリップに混ぜて。ちょっとした手間ですがこれが実においしい。春先のこの時期だけの、身体も喜ぶご馳走です。

画像7

世界各地で豆料理は多数あれど、美味しさ、調理の簡単さ、栄養価などから、パリップは金メダル級の存在感を放っているかと。もしも豆料理オリンピックなるものがあれば、スリランカカレーのパリップを強く推したい!と自称・広報大使は思います。

さて。三寒四温とはよく言うもので、近頃の寒暖差に少々身体がまいっています。今夜はお粥代わりに消化に良いパリップを食べて、穏やかに過ごしましょう。
みなさんも、お身体に気をつけてお過ごしください。


記事で登場したスリランカのミックスカレーパウダー「トゥナパハ」も、ぜひ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?