終火5話「涼太への不信感」
年も開けると、あっという間に1月も半ばになっていた。
正月は涼太が実家に帰って来ていたので、ゆっくり過ごせるかと思っていたのだが、大晦日から元旦にかけて過ごしただけ。初日の出は一緒に見に行くことができたのは良かったのだが、2日は用事があって3日には横浜に帰らなければならないと言うのだ。
お正月の三が日はずっと涼太と一緒に居られると思っていたのに。
クリスマスイブを境に、どんどん涼太への不信感が募っていく。
涼太の私への愛情が前より少なくなっているように思えた。
付き合ってから1年半以上も経てば、確かに付き合いたての頃のような新鮮な気持ちも無くなってくるのかもしれないが、涼太の私への気持ちが時々わからなくなる。
お正月ぶり以来だから涼太と会うのは20日ぐらいか?
合鍵を持っていた私は涼太の留守中に部屋に入り、涼太の帰りを一人部屋で待つ。待っている間、私と涼太の共通の好きな音楽でもあるELLEGARDENの曲を聴こうとCDを棚から取り出し中を開けると、何かが落ちた。
落ちたものを拾うと、私は目を疑った。
香織さんと葉月ちゃんと涼太の3人で一緒に写ってる写真。
そして仲睦まじく映っている。お正月の公園で撮った写真のようだ。
だって……この富士山の雪の写真が物語っていた。
2日の時の真っ白な富士山は今でも覚えてるくらい綺麗な雪をかぶった富士山だったから。
てことは……
25日のクリスマスの日も一緒に過ごしたのかもしれない。
そんなことを思っているとアパートの階段を上る足音がした。
もしかして、涼太が帰って来たかも?
私は慌ててCDを元の棚に戻し、何事もなかったかのようにスマホを見てるふりをした。
「涼太お帰りなさ~い」
「ただいま~ ん? 加奈子どうかした? 僕、何か変?」
「ううん。そうだ、明日一緒にメガネのレンズ入れに行こうか」
私は何も見なかったことにして、平然とその場をやり過ごした。
「うん」
本当は、「この写真、何? なんなの?」と言いたかった。
けど……
そんなこと言ったら、私と涼太の関係が終わってしまいそうで怖くて見て見ぬふりをするしかなかった。
だって……
私は涼太のことが好き! 大好きだから! 失いたくない!
私の目の前から涼太が居なくなるなんて考えられない!
私はベッドの中で目覚める。涼太の温もりは寒い冬には何とも言えないカイロとでも言おうか、私は涼太の腕の中で目覚めると隣で、気持ちよさそうに眠っている涼太を見ながら幸せな気持ちになれる自分がいた。
昨日のことは私が見ないふりをしていれば良いのだから。
それからも、香織との怪しいことは多々あったが、私はずっと見て見ぬふりをしてやり過ごしていたが、3回目の夏がやってきた。
そして花火大会の日が……
その時の私は、なんとなく、なんとなくだけど、もう涼太との関係もそろそろ終わりに近づいている気がしていた。
いつ「別れよう!」って言われるかビクビクする日々だった。
ただ、何があっても私の口から別れ話を切り出したくなかった。
だって……
今でも好きだし、別れたくない気持ちが大きいから、涼太が口にするまではしがみ付いていようと思っていた。
そして明日は、いよいよ花火大会だ。
昨年は都合が合わず、花火大会には一緒に行けなかった代わりに、ささやかではあるが、一緒に砂浜で二人だけで花火をした想い出がある。
それはそれで幸せだった。
涼太と浴衣を着ていく約束をしていたので、明日着ていく浴衣を枕元に置いて私は眠りについた。
さぁいよいよ明日は花火大会ですが、その話はまたってことで。
次回のお楽しみ~
気が向いたら明日また更新できたら更新しようと思います。
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