【UWC体験記㉛】24 Hour Race(チャリティマラソン)の主催ー孤独と忍耐の6か月(前編)
私のUWC生活の中でダントツに一番の時間を費やし、一番傷つきながらも一番思い入れの強いものが、この24 Hour Raceの主催。
まずは1年目にはランナーとして参加し、主催者に選ばれるまでを以下からお読みください↓
選ばれた主催者チームは5名。私ともう一人がExecutive Directorで、他の1人ずつMarketing、Community、Business DevelopmentのDirectorの3人。
実際のレースは3月なのですが、1年目の終わりの夏休み頃からミーティングをして、少しずつ計画を始めました。実はこれは国際的にいくつもの場所で開催されているもので、本部が香港に設置され、そちらに大人のアドバイサーのような方々がいます。
その本部からはロゴを使わせてもらったりお金の管理などを助けてもらいますが、基本的には何をどうやるかは私たちが全て自由に決めていきます。
今年も昨年と同様、この24 Hour Raceでの募金額はA21という人身売買やModern Slavery撲滅を目指すチャリティに寄付され、タイでの子どもの権利保護センターの設立に充てられることになりました。
9月の新学期になってから学校のいろんな部門の責任者の先生方をミーティングを行い、私たちの計画をお話した上で、今年のレースでは今までに無かった外部ランナーの招致の許可をもらいました。
ランナー募集開始
10月の最初の全校集会で時間をもらい、私たち5人で簡単なプレゼンテーションを行い、その日中にランナーのサインアップを開始します。
学校の公式行事でないイベントの中ではACでは最大規模であるため、1年生でも既に知っている人は多く、あっという間に160人の生徒と40名の教員の合わせて200人以上のランナーが集まりました。
このランナーたちは8人のチームでサインアップするか、2人組、もしくは個人としてサインアップし運営側でチームを作ることもできます。こうして全てのチームが確定した後には、それぞれのチームにインタビューを行い、その動画を編集したものをイベント公式インスタグラムなどにアップしたりもしていました。
そしてそれぞれのチームのファンドレイジングのオンラインページをセットアップし、目標金額を定めそれに向けてそれぞれでファンドレイジングを始めてもらいます。
運営チームメンバーの募集
10月にもう1つ行ったのが、私たち5人と一緒に運営を手伝ってくれるチームメンバーの募集。Executive、Marketing、Community、Business Developmentのチームにそれぞれ数人入ってもらい、私たちがリーダーを務めます。
私はExecutiveとして財政、安全管理、そして人身売買の問題についてのAdvocacy(提唱)担当のチームメンバーを募集します。多数の応募者の中から選考を行い、かなり良いメンバーを揃えることができました。
この中でも私が特にこだわりが強かったのは、Advocacyの強化。昨年のRaceで感じた大きな改善点として、人身売買やModern Slaveryというとても大きな国際問題についてのチャリティレースであるのに、よく理解していないランナーが多かったこと。
私としては走ることやランナーの快適さより何よりこの社会問題を周知させた上で多くの寄付額を集めることが最大の目的。そして選考した2人のAdvocacy担当者たちと早速ミーティングを行います。
人身売買という問題を広めるには
1年生のこの二人は私よりもUWC外でのプロジェクト運営の経験が豊富で、私がリーダーであるチームのメンバーにはもったいないほど。私が考えつかなかったようないくつものアイデアを出してくれて、やる気もすごい。
まずは11月に行ったランナー用の説明会において2人にA21、そして人身売買とModern Slaveryについての説明を担当してもらいました。そしてその後のPeaCo(平和委員会)でもセッションをもらい、2人にプレゼンテーションとディスカッションをやってもらいました。
そして、UWCでの生徒の多様性を活かし、生徒の中でModern Slaveryに関連する個人的な経験がある人がいないか声をかけます。すると3人が返事をくれ、みな知人が被害にあったり話を聞いたことがあるなど。
なのでその人たちにインタビューを行わせてもらい、その動画も(許可を得て)イベント公式インスタグラムでアップします。自分たちの同級生たちのそういった経験を耳にすることで、今までは他人事だと思っていたこともぐっと近くに感じられるだろう、というのが狙いでした。その上でSNSにアップすることによって学校外の人にも届く可能性があります。
その後、2人の当初の役割であった学内でのAdvocacyだけにとどまらならず、学外でもどうやってこの問題の周知を広められるかを一緒に考えます。
まずチャレンジしたのは他のUWCにこの24 Hour Race自体を広めること。他のUWCでも開催されるようになったら当然そこでもModern Slaveryが取り上げられることになり、周知アップにつながります。
これは私たちが夏前に計画していたものの1つで、Community Directorが一度全てのUWCへの連絡を試みていました。返事がほとんど無かったため、校長から全てのUWCの校長たちとのミーティングで提案してもらおうとしましたが、上手くいかず、正直少し諦めていたもの。
ですが2人が粘り強く全てのUWCへのアプローチを続け、最終的には17校全てとコンタクトが取れた上に、いくつかの学校では実際に開催されることになりました。
そしてUWCの外のコミュニティにもさらに広められないかと、他のModern Slavery撲滅に取り組むNPOに連絡を取りSNS上でのコラボをお願いしたり、ランニングイベントに連絡し会場でファンドレイジングをやらせてもらえないかとお願いしたりしました。
これも何回もメールを送り続けたのですが、結局ほとんどの団体やイベントからは返事さえ来ない、来てもお断りのメールが届きます。他のNPOは中には「こちらに寄付してもらえるならコラボ可能」と言ってくるところも。所詮は高校生がやっているもの、しかも何も金銭的なインセンティブがない立場での大人との交渉の難しさを身にしみるように感じました。
仕事量の偏りがおかしい…
11月あたりから気付き始めました。明らかにDirectorの中で私への仕事量の偏りが大きすぎる。
もう1人いたはずのExecutive Directorに関しては、なるべく私も自分の仕事を分担するようにしているものの最終的にはもあちらの分も全て私がやっている。そしてCommunity Directorは外部ランナーの募集など、数少ないその人の仕事を何回催促しても一向に進まないため、私が引き受けざるを得ない。他の2人も自分のやるべきことは分かっているようですが、学業で忙しそうで中々進捗が見えない。
11月に行ったランナー用説明会はプレゼンと原稿をCommunity Directorが作成予定だったのですが、前から分かっていたはずなのに前日の夜の段階で「まだ何もできていない」と言ってきました。次の日の授業後すぐにプレゼンだったのですが、「明日の授業中に作る」と。大事な説明会なので私が事前にチェックをする時間が欲しかったため、今日中に作ってくれと少し強めに言いました。
すると、「そんなに僕が作るものを信用できないなら君が作りなよ」と言われその場を去っていき、その場にいたもう一人のExecutive Directorも「僕も今日締め切りのレポートがあるから無理」と消えていきました。
悔しいけどここで私がイライラするからといって何もやらない訳にはいかない。その後午前4時までかかってプレゼンと原稿を完成させ、次の日に直前に話す場所を他のメンバーに伝え、何とか乗り切ることができました。
また、このレースは学校からは一切予算は出ないため、ファンドレイジングとは別でランナーにチケット代を払ってもらい、それを用いて自分たちでやりくりする必要がありますが、これも私が1人で考えなければいけない。予算を使う場所は当日ランナーに配るTシャツや安全用備品、食料など雑費を含めると無数にあります。
その中でも一番大きなまとまった出費はレース当日に配備する救急チームへ。何かあったら大変なため、24時間のレース中常に1人の救急隊員を雇うことになります。一応担当になっている教員に相談したところ、その先生が予約してくれると聞いていましたが、冬休みを明けると一転「まだ予約してなかったの??」と私が責められることに。
このような私が一番ストレスだった教員とのコミュニケーションも全て私が1人で最初からやることになってしまっていました。
他のDirectorたちが何もしていないのに私と同じような立場を名乗っていることが段々ストレスになってきて、ついに冬休み中に、「このような状況が続いたらもう同じチームでは活動できない」と最終勧告をしたつもりでしたが、結局その後もほとんど変わりませんでした。
正直、これも私が面と向かって怒りをぶつけるよりも黙って他の人の分の仕事をやってしまった方が精神的に楽だから。ガツンと言うときには言わないとあとあと自分が困るとは分かりつつ、最後までなかなかこれはできませんでした。
教員の責任転嫁
今年のレースで新しく挑戦したかったものが、外部ランナーの招致です。
これはCommunity Directorの仕事だったのですが私が11月に代わりに引き受けてすぐ、既に学校が持っている連絡先を先生に聞いていたところ、他の外務担当の先生が居合わせており、「私が連絡とってあげるよ」と言ってもらったのでお任せしました。
そこから数週間経っても連絡が無いため、冬休み中から私からも進捗を聞き始め、毎回「あちらの返信が遅れているけど、数校興味はありそう」とのこと。冬休みが明けて1月の間も同じ返答だったため、Phoenix Conferenceが終わってすぐにその人のところへ直接話しに行きました。
すると、私を見た途端「私に何をしてほしいか正確に教えて」と。え??2か月前に正確にお伝えしていたのですが…話しを聞いていくとどうやら本当は他の学校への連絡もほぼやっていなかったよう。
「もうあまり時間は無いけど1からやるしかないね」と言われます。そして当初の予定のフルでの参加ではなく、数時間の参加の招待に変更させられます。この時点で本番まで1か月しかなく、今までの時間、そっちが引き受けてなかったら私がとっくにやっていたのに、、と少し怒りが湧いてきます。
そしてそれでもこの日はまだ外部生徒の招致にはポジティブな態度を見せてくれていて、今度は本当にコンタクトを取ってくれるようだったのですが、この数日後全く違う趣旨のメールが届きます。
「外部の生徒たちを招待することが安全面などで大丈夫なのかが自分には分からないので、他の先生に許可を取ってほしい。自分はもう諦めた方がいいと思っている」
この前話したことと違うし、私たちは以前他の先生たちから許可が出ているのですが、担当の先生からの許可を取らなくてはいけなくなります。早速その先生のところに行くと、今度は「自分には何も権限は無いから、外務担当の先生に聞いてくれ」と言われ、板挟みになってしまいました。
しかもその先生には「あなたたちが今まで先延ばしにしてきたせいでこんなにギリギリになってるんだからも諦めた方がいいんじゃない」と言われ、必死に全ての経緯を説明します。するとやっと理解してくれ、だったら学校のSafeguarding(安全管理)主任のところに行って許可をもらうように助言してくれます。
なので主任のところに行ったところ、その先生からは特に何も問題点は上がらず、反対はされません。しかし「担当の先生と外務の先生たちが良いって言ったらいいよ」と言われ、結局最終的な許可はどこからももらえない状態に。
あとで問題になった時に自分が責任を取りたくないからとお互いになすりつけるような様子には正直もう許可はどうでも良くなり、自分で1からコンタクトを取ることにします。
ただこの時点で残り3週間を切っており、周りの学校に片っ端から電話をかけ続けますが、結局全てが無回答か断られてしまい、実現はなりませんでした。正直他の学校の生徒に参加してもらうこと自体はそこまで大切なことでは無いのですが、前からずっと計画してあったことだけに私のせいではないもののとても悔しかったです。
カーニバル
本番の1か月前に24 Hour Race Carnivalというイベントを学内で開催しました。これは各チームがそれぞれ出店できるカーニバルで、ここでの売上額もファンドレイジング額に加算されるというイベントです。クッキーやドリンクなどの定番から、マッサージやゲームでお金を取るチームもあり、どのチームもかなり気合を入れて準備を行います。
このイベントがConferenceのわずか1週間後だったため、Conference直後も私はすぐにこちらの準備。昨年は人身売買とModern Slaveryは一切関係ないカーニバルになっていたため、せっかくなら少しこちらもアピールしたいと思い、会場にポスターを貼り、関連する動画を流します。
当日は私の事前の計画不足から、集まってきた運営メンバーとあまり効率よくセットアップを行うことが出来なかった上、カーニバルの楽しい雰囲気の中ではModern Slavery関係のポスターなども全く効果が無く、1か月後の本番に向けて自分に「もっとしっかりしないと!」と喝を入れるきっかけになりました。
これはチャリティ?それともビジネス?
私が本番が近付いてくるにつれて他のメンバーと衝突することが多かったのは、なるべく多くのお金を得ることだけを目指していいのか、というところ。
私たちは各チームに目標金額を言い渡しており、全くファンドレイジングしないチームが出るのを避けるために、「この目標に到達したらレース走れる」と伝えていました。実際にはもちろん、ある程度ファンドレイジングをした形跡があれば到達していなくても全員にレースに参加してもらいます。
すると24 Hour Race自体の本部からも本番が近付くにつれて目標に到達しないチームにははっぱをかけるよう催促されるため、私たちも少し焦り気味になります。
私は昨年、自分もランナーとして参加した際に直前になるにつれて主催者たちがおどしのようにファンドレイジングをやらせてくるのが嫌だったので、絶対に自分はそれだけはやらないと決めていました。なので、目標額から遠いチームとはミーティングを行い、ランナーたち自身でファンドレイジングの策を考えてもらったり、私からアドバイスを言う程度。
しかし、レースの2週間前。全てのチームのリーダーが入っているグループチャットで他のDirectorが突然「まだ目標に達していないチームは、このままだとレースには参加させないか、自分でお金を払ってもらう」という発言をします。
私にも何の断りもない突然の発言に怒りが。こんなの脅しどころか、様々な経済状況の人がいる中で「自分で払ってもらう」とは絶対に言ってはいけない。ただ、直接注意してもこの人は絶対に自分の誤りを認めたりはせず、訂正はしないだろう。
よく考えた結果、私がそのグループで「みなさんに自分でお金を払わせるようなことはありません。それでもファンドレイジングはこのレースの一環でもあるので各自で当日まで全力を尽くしてね!」というようなほぼ真逆のトーンでのメッセージを送りました。
すると、私たちDirector5人のグループチャットにおいて、先ほどの発言をした本人、そして他の人たちも私に対して「なんてことをしてくれるんだ」と。残念ながらこのメンバーの中では私が一番英語での文章形成の能力が低く、次々に私への批判のメッセージが送られてくるも即座に反論ができません。
みなは「社会問題を解決するためには少しでも多くのお金を強制的にでも集めなくてはいけないんだ」と言い、確かに一理ある。ただ私は、社会問題解決のためにお金を集めるのなら、完全にクリーンで道徳的な方法でやらないと意味が無いと思っています。
人身売買解決のために人からお金を巻き上げるなんて、本末転倒だし、本当に自分も力になりたいと思ってやってやるファンドレイジングしか、堂々と胸を晴れるものではないとおもいます。多少この考えのせいで集められた金額が減ったとしても、私はこのイベントではこの考えを貫きたかったのです。
これは他の場面でもしばしばぶつかることになります。例えば、スポンサーしてもらう企業を探すときに、私は違法労働を使っていないかなどを完全にチェックしたいのですが、みなは良い取引であればそこまでそれは気にしない。
私にとってはこの24 Hour Raceの運営は完全にチャリティ活動であり、社会問題を何よりも前においてやっているけど、他の人にとってはこれは「ソーシャルビジネス」に近いものであり、私にとっては社会問題を盾に使っていかに利益を上げることで自分の功績を積むか、というものに見えてしまいました。
1人でもやるしかない
2月に入っても未だ何もやらないもう一人のExecutive DirectorとCommunity Directorに関して、他の2人のDirectorと話してもうこのタイミングでクビにしようと言うことに。しかし、どこからかその情報が漏れたため、結局タイミングを逃しこの5人のDirectorのメンバーで最後まで続けることになります。
また、上記のような全体の方向性や理念は絶対に譲れなかった私は自然と今までは味方だった2人とも距離が開いていき、気が付いたら1対4の構図になってしまいました。ミーティングで私が必死に考えたアイデアや計画を見せても、本気にせず適当なジョークで笑われたり、小さな落ち度でも探されたりし、その代わりに何も代替案を持ってこないため、私はもうこのメンバーに頼ることは諦めることにしました。
逆に「自分一人でやらなきゃ」と思ってからは逆に気が楽になり、特にわざわざ報告もする必要もない。2週間前から詳細な計画用のドキュメントを作り、それを他の人に見せることもなく自分でとにかく詰めていく。変に他の人に仕事を任せて一旦期待するよりも、自分で最初からやる方がよっぽど効率的であることに気付きました。
Tシャツやトロフィー、ランナー用のバッグや備品なども一旦は他の人に頼んだものの結局は私が全部1から注文していきます。
実はレースの2週間前からIBの最終試験の模試が。特に成績には関係ないこの模試と、200人が参加するイベントで何か少しでもミスが起こるリスクを見比べ、何も迷いなく人生で初めて本気の勉強ゼロで自分の試験時間以外は24 Hour Raceのための作業をしていました。
そんな中、レース本番の1週間前に当日の食事について食堂の人と打ち合わせを行った結果、レース時間を午後6時からではなく1時間繰り上げた方が良いことが判明。学校内に住む生徒には支障は無いはずですが教員のランナーは自宅から来る人もいるのですぐに連絡します。
すると私の英語の先生で教員ランナーの取り仕切りをやってくれている先生からすぐに連絡が。「すでに走る時間をそれぞれが決めていて、仕事の関係でその時間以外は走れない人もいるのでこの時点での時間変更は非常に困る」
お城の中の小さな部屋でパソコンに向かっていた私は大慌て。どうしよう、やっぱり元の時間に戻そうか、でも食堂の人にも言っちゃったし、どうしよう…その英語の先生のメールのトーンがとても怖かったこともあり、なんとか震えながら時間変更をした理由を書いて送ります。
そのまま何も手につかずひたすらその先生からの返信を待ちます。ただ私たちの模試期間中でも一年生達は通常授業のため、なかなか返事が返ってこない。祈るようにパソコンの画面を見るだけ。
すると、私が一番信頼していてよく24 Hour Raceのことでも相談していた先生がその部屋をミーティングで使うとのことでたまたま入ってきてくれ、真っ暗な部屋で顔は真っ青な私を見て「大丈夫か?!」と。経緯を説明すると、「相手が先生だから怖いと思うけど、普通のランナーと同じだから。絶対何とかなるから。」と何度も言ってくれ、あの時の絶大な安心感は忘れられません。
そして結果的に英語の先生はきちんと調整を行ってくれ、本当に大丈夫にはなりましたが、自分が全てをやりきると決めた以上このようなひやひやが何度もあり、その度に何度も1人でパニックを起こしていました。
そしてさらにこのような時に辛いのは、これほど多額のお金が関与し、教員含め学校の半分以上が参加するレースの運営者である以上、簡単に友達に弱音を吐いてレースについて心配させてしまう訳にはいかないということ。なので表面は常に「チームワークは上手くいっている」「何もトラブルは無い」ということを装い続けなければいけなかったことでした。
Focus Weekの開催
レースをついに金曜日に控えた月曜日からは24 Hour Race Focus Weekとし、CouncilのセッションをModern Slavery関連にしてもらうなど、なるべく雰囲気を高めていきました。月曜日の夜には最後のランナー説明会。これももちろん私が1人でプレゼンを用意し、ほぼ一人で進行させた説明会です。
そしてCouncilセッションはなるべく私たちの運営チームのメンバーにやってもらうようにしていたのですが、一番のリーダーである私がやらないのはおかしいので、自分もWellCo(健康委員会)のセッションを「Modern Slaveryの精神的・身体的な健康被害」というテーマで1年生とペアで実施します。
Council セッションに来てくれた人には専用に作ったシールも配布し、ほとんど1年生ではありますが多くのランナーも参加してくれます。
そしてもう1つ、あのAdvocacyのチームメンバーの2人と最後に企画したのがModern Slaveryに関してのミニエキシビション。これはMarketingチームのメンバーだった私の同級生に相談し、デザインなどを考えてもらい、私たちでセットアップを行います。
模試の最中にデザインしてくれた人にも、最後までやりきってくれたAdvocacyの2人にも本当に感謝でした。
学校の安全ルールが大きな壁に
レースの1週間前に寮管理の責任者の先生とミーティングを行い、何か生徒の安全面で見落としが無いかをチェックしてもらっている際、他のDirectorの口から、香港にある24 Hour Raceの本部から大人が1人、このレースの全てを見にイギリスまで来る予定だと聞きます。
来るかもしれないというのは分かっていたものの、まさか数時間の滞在だろうと思っていた私はここで初めて24時間フルで滞在するつもりであることを知ります。
するとその次の日、その先生からメールで「生徒の安全面を考えると外部からの入校者は常に教員に付き添われていないといけないが、それだけの教員のキャパシティが無いため許可できない」と。はるばるイギリスまで飛行機で飛んでくる人を校内に入れられないという事実に私はパニック。
慌ててその先生のところに行き、どうしたらいいかすがるように聞きに行きます。Conferenceでヴィヴィさんを迎え入れたときはほとんどの時間私たち生徒だけと過ごしていたのに…と言っても、「今は安全ルールが厳しくなったの」と言われるばかり。
どうしたらいいんだろう、と絶望寸前でありながらも他のメンバーに相談してもしょうがないし、誰にも話せない。その状態で落ち込んでいた私を見かけたいつも優しい図書館司書の先生が「大丈夫?」と。久しぶりにかけられたその言葉に思わず泣き出してしまいました。
その先生もランナーであるため、「しまった」と思いながらもすでに遅く、久しぶりにかなりの弱音を吐いてしまいました。もちろんその先生は何かしてくれる訳では無いのですが、話を聞いてもらっただけでもかなり落ち着きました。
そしてその夜、ファンドレイジングとしてあるチームから買ったフォーチューンクッキーの1つを開けてみます。すると中から出てきた小さな紙には「Don’t try so hard」という言葉が。今の私が一番必要だった言葉にまた涙が出そうになります。この後レース当日まで毎日フォーチューンクッキーを開け続けることになりました(笑)。
だからといって入校者の問題が解決するわけではなく、私たちに残された手は入校者に付き添ってくれる教員を探すことのみ。必死に色んな先生に声をかけ、少しずつ分担してもらい24時間中なんとかある程度の時間はカバーできるようになりました。
この頃はおそらく本当に私は体と心が限界に近く、毎日3時などに寮のQuiet Room(自習室)で作業中に寝落ちし、朝5時などに起きてやっとベッドに入る、という生活。唯一、レースを楽しみに待つランナーたちの声や少しでも一緒に頑張ってくれる運営チームの人たちからモチベーションをもらい、踏ん張っていました。
前日の夜には、心配してくれた寮の1年生たちが「明日が大一番なんだから」と、夜12時に既に寝そうになっていた私を3人がかりで補助してくれながら無理やりベッドに連れて行ってくれました。
こうしてついに、6カ月間毎日準備を続けてきた24 Hour Raceの本番の日を迎えることになります。学内最大規模のイベントの行方、そしてレース終了後も終わっていなかったさらなる苦難については後編へ続きます。
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