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【UWC体験記⑲】ラテンアメリカダンス(CAS)ー性差別的音楽を伝えるパフォーマンス?

私の1年目のCASの3つのうち、AにあたるPhysical Activityはラテンアメリカダンスでした。

ラテンアメリカダンスとは、その名の通りラテンアメリカの曲を踊るダンスで、有名なのはペアで踊る社交ダンスのタンゴ、チャチャチャ、サンバなど。

3位までどのCASに入りたいかの希望を出せる中、割と適当に3位に書いてあったものになりましたが、びっくりするほどしっかりと取り組むことになります。

食堂でのフラッシュモブ

最初にやることになったのはバチャータという種類のダンス。ゆっくりと曲線的な動きの多いペアダンスです。

まだダンスの覚え始めというところでCASリーダーから驚きの一言が。「せっかくだからこれフラッシュモブでやろうよ!」

フラッシュモブとは、海外ではたまに行われる、路上などで突然通行人らしき人たちが一斉に踊りだすといったパフォーマンスの形です。なのでCASメンバーだけでなくIberolatino(ラテンアメリカ)のnational groupからもやりたい人を募集し、CAS以外での練習も始まりました。

まだ10月頭だったので私にとっては実はこれがAC(私の学校)に来てからの初めてのパフォーマンスの機会、しかもまったく触れたこともないバチャータ、そしてフラッシュモブという形で緊張しまくりです。

そして金曜日の昼ごはんの間、突然スピーカーで大音量で音楽を始め、私たちは食堂の真ん中で踊り始めます。次第に他の生徒たちも盛り上がってきて、ルーティーンが一回終わったところで私たちの誘い入れもあって多くの人たちが立ち上がり踊りはじめ、食堂が急にダンスホールへと変わります。

食堂でのフラッシュモブ

他の生徒がやることは多少突飛であっても必ず全力でのってくれる学校の雰囲気は本当に好きなところです。ただこれがCASであることは他の人たちからは分からないので「え?Saraどうしたの??」と何人もの人にあとから聞かれました(笑)。

Iberolatinoのnational eveningに私が?

そして冬休み明けの1月。今度Iberolatinoのnational eveningがあるため、CASのメンバーとしてnational groupに入っていない私のような人もダンスを披露するよ!と伝えられました。

しかもダンスは3種類。フラッシュモブでやったバチャータ、そして他にヒップホップのダンスを2種類。ヒップホップは社交ダンスとは全く種類の違う、1人でやるものになります。

そしてもちろんIberolatino national groupの中で参加したい人も集め、大人数でCASの時間以外にも練習が入ります。

ここできついのは、CASの中でも半分がラテンアメリカ人である上に、10人ほどの他のラテンアメリカ人が加わり、もはやダンススタジオ内はスペイン語が共用語になっていること。残念ながら第二言語でフランス語を取っていた私は勉強になる訳でもなくただ一切何も理解出来ず、ひたすらお手本のダンスを見て真似してました(笑)。

もちろん配慮して英語でたくさん話しかけてくれる人もいたのですが、他のラテンアメリカ人以外のCASメンバーが来なくなってしまったりともはや私だけ完全アウェーな環境にも。それでも真面目に毎回の練習に行き続け、本番を迎えました。

Iberolatino National Eveningに参加

私が出演するのはショー全体ではほんの一部でしたが、それでもエンディングに出させてもらったり、リハーサルをともにして来たことでIberolatinoの人たちも仲間として受け入れてくれ、とても楽しい経験になりました。


ラテンアメリカ音楽は性差別的?

社交ダンスというと男女のペアで女子は露出の多い煌びやかなドレスで踊る、というイメージが強いと思うのですが、これってよく考えるとかなり男女の固定観念に沿ったものになります。

やはり伝統的なものであるので社交ダンスのあり方を変えるべきだ!とまでは思わないのですが、UWCのような環境にいるとここには違和感を感じるのが普通のこと。トランスジェンダーの人や同性愛者の人でオープンにしている人も結構いる中で、「私は男性(女性)とくっついて踊りたくはない」という人も当然います。

そしてペアダンスはやりたくない、という人や同性同士でのペアを組む人も自然といて、誰も疑問は呈しません。ただこれがUWCを一歩出ると競技でなくても、まだまだ社会として「男女ペア」以外はあまり受け入れられにくいという現実があります。

そもそもラテンアメリカ音楽にはストレートな恋愛ソングが多いのですが、その多くが男性目線で女性を所有物と見たり、性的な対象としてしか見ないような表現ばかり。昔からのこの音楽の特徴が現代の音楽でも続き、しばし批判を浴びることもあります。

ある日のCASの中でラテンアメリカ出身の人たち中心にこの議論が沸き起こり、近づいていたFemiCon(フェミニズム会議)でこのメッセージを伝えるためのパフォーマンスをできないか、ということになりました。

FemiCon(フェミニズム会議)でのパフォーマンス

年度末に近かったこともあり結局パフォーマンスをすることになったのは私含めて3人だけ。白いTシャツに絵の具で手形をたくさん乗せ、それを着てまずは典型的なラテンアメリカのポップ音楽「Hay Que Buono」に合わせて踊ります。

ダンスで着たTシャツ

このミュージックビデオで分かるように、かなり男性目線な曲で女性はお尻を振ったりするばかり。ただ、もちろんパフォーマンス自体はいつも通りものすごく盛り上がります。

パフォーマンスのあと、解説を入れます。

「今のパフォーマンスで盛り上げてくれたみなさん、日頃パーティでもラテンアメリカ音楽が流れても同じように楽しくダンスしますよね。」

「今大人気のDespacito、 Taki Taki、 Gasolinaなどの曲。スペイン語で歌詞は分からないかもしれませんが、全てがかなり明確に女性をsexualiseしたり、卑下するような言葉や態度が含まれています。」

「私たちがそういう曲を流したり、盛り上げることはそういうものを肯定するという意思表示にもなってしまう。流行りに何も考えずに乗っかるのではなく、一度その曲が表現する内容まで考えませんか。」

話し始めたときから一気に会場は静まり返り、真剣な雰囲気でみなが聞いてくれました。

そしてこのパフォーマンスをもってこのCASは終了となりました。

Physical ActivityのCASというとスポーツのものはお遊び程度のものが多く、他のダンスのCASでもどれもが週一回のお試し程度で終わってしまいます。私はもともと希望していたCASで無かったのですが、ここまでじっくりと体験させてもらい、とてもやる気が強かったCASリーダーの2年生には感謝しています。


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