カラスの群れる場所

僕はピアノを習っている。

僕の家にはピアノがない。だからいつも帰り道の公園で練習するんだけど、練習すると言っても鍵盤もないから先生に習ったことを思い出して指を動かしてみる。

その公園には昔は茶色かったようなベンチがある。遊具などはなくベンチしかない公園。とても大きな木が3本あって静かな場所だ。すぐそばに川がある。綺麗なベンチではないのだけれど僕はそのベンチが好きだ。なんで好きかというとピアノの練習の場所だから。

僕はベンチには座らない。

ベンチをピアノにするからだ。

鍵盤の音のしないベンチ。

ちょうど座るところが鍵盤で背もたれが譜面台。譜面を開いて今日のおさらい。音がないから頭の中で音を出す。これは指の動きが間違えていてもわからないんだけどゆっくりやってみる。

僕は地面に座る。

ひんやりと地面の冷たさと土の柔らかさがお尻に伝わってくる。

僕がそこで練習を始めるとどこからともなくカラスがたくさんやってくる。カラスは鳴かない。

なんでなのかわからないけれど鳴かないカラス。

僕のベンチを叩く指の音だけが微かにする。

その音を静かに聴いているかのようにカラスは鳴かない。

ヘタクソな僕は感覚で指を動かす。

頭の中のイメージではとても綺麗な音を奏でている。

きっと僕の頭の中から音が漏れ出しているのだと思う!

それをたくさんのカラスが聴いてくれている。

大切な僕のオーディエンス♪

今日もありがとう。

僕、きっと上手くなるからね。








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