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店長の役割は、スタッフが安心して働ける環境を整えること

冨田 智恵子(とみた ちえこ)さんは、2019年に千秋庵製菓に入社し、現在は新千歳空港店の店長として活躍しています。今回の【一日千秋】では、冨田さんのこれまでの歩みや入社の経緯について、現在の仕事やこれからのことなど、いろいろと掘り下げてお聞きしました。

【プロフイール】
冨田 智恵子(とみた ちえこ)
出身地 神奈川県
生花店や百貨店、食器メーカーなどでの勤務を経て、
2019年 千秋庵製菓株式会社 入社
      新千歳空港店 配属(販売職)
      本店、ノースマン大丸札幌店、大谷地店などでの勤務を歴任
2023年 同社 店舗運営部 新千歳空港店 店長(現職) 


入社のきっかけ

― 冨田さんのご経歴をお聞きします。

冨田:私は神奈川県生まれで、北海道千歳市で育ちました。千秋庵製菓に入社する前は様々な仕事をしてきましたが、実は社会人としてのスタートは生花店だったんです。私は昔から、新しいことや興味があることにどんどん挑戦をする性格なので、「お花屋さんで働いてみたい!」と思い立って生花店に入社し、そのまま約10年間勤務しました。

 生花店での仕事は水仕事が多くて手が荒れますし、まとまったお花はとても重たくて体力が必要だったりと、大変に感じることが多くありました。それでも約10年間も勤務できたのは、私自身が繊細な仕事が好きだったからだと思います。例えば、お客様のご要望に合わせてブーケやコサージュを作ったり、乾燥気味なお花をキレイに再生させたりといった毎日の細かい作業が楽しかったんです。

ー その他にはどんな仕事を経験されましたか?

冨田:生花店の次は、札幌市内の百貨店で販売職を経験しました。
これも当時、札幌に初進出する百貨店のオープニングスタッフ募集の広告を見て、「新しくお店をつくりあげる仕事って面白そう!」という挑戦意欲が湧いたことがきっかけでした。入社後は、希望していた食器部門で和洋食器やキッチン用品などの販売を担当し、徐々に商品の発注・管理も任されるようになりました。
その後、家庭の事情で千歳市内で仕事をする必要があり、食器メーカーや菓子メーカーの店舗(いずれも千歳市内)で販売職として働いていました。

― 千秋庵製菓に入社したきっかけは?そして、入社後はどのような仕事をしましたか?

冨田:私は2019年4月に千秋庵製菓に入社しました。
実は…私は以前、札幌千秋庵 新千歳空港店でアルバイトとして半年ほど勤務したことがありました。そこで、2018年に同店をリニューアルするというタイミングに合わせて再びお声がけをいただき、リニューアルをした翌年に入社をしたという経緯です。

 私が入社した2019年の新千歳空港店はとても多くのお客様が来店しており、毎日圧倒されていたことをよく覚えています。
しかし、その様子は新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年を境に激変しました。あんなに賑わっていた新千歳空港店は休業となり、私自身も1か月以上の自宅待機が続き、「このまま仕事がなくなるかもしれない…」という不安を抱えながら過ごしていました。その後、札幌市内の直営店舗が少しずつ再開しはじめたことを受け、私も札幌市内の直営店舗の運営を行うことになりました。当時は、店舗の営業状況やスタッフの出勤状況に合わせて勤務をする必要があったため、午前中は札幌市内の百貨店で勤務し…午後からはスーパーマーケット内の店舗で勤務するなど、札幌市内を縦横無尽に走り回っていました。
そしてそのまま、本店(札幌市中央区)勤務を軸として札幌市内の複数店舗を兼任するような時期が続きました。今改めて当時のことを思い返すと…よく複数店舗のことを同時に進めていたな…よくやり遂げたな…と感じています。

新千歳空港店について

ー 現在の新千歳空港店はどのような状況ですか?

冨田:現在の新千歳空港店は、私を含めて9名のスタッフで通常通りの営業を行っております(取材した2024年5月時点)
メンバーは、私よりも社歴が長いベテランスタッフから大学生のアルバイトスタッフまで幅広い世代が在籍しており、みなさんコミュニケーション能力が高い方ばかりです。

ー 新千歳空港店は、現在の札幌千秋庵直営店の中で唯一、札幌市外にある店舗ですが、「新千歳空港店ならでは」の特徴はありますか? 

冨田:新千歳空港店の特徴は「一期一会のお客様が多いこと」だと思っています。
ご来店されるお客様は、旅行やビジネスでなど立ち寄る方がほとんどで、札幌市内の直営店と比較すると、札幌千秋庵の商品のことを知ってくださっているお客様が少ないと感じています。
そのため、商品のことや札幌千秋庵の歴史のことを尋ねられることが多く、この「一期一会のお客様に札幌千秋庵のことを知っていただくこと」が新千歳空港店の役割のひとつだと考えています。

 そして現在は、コロナ禍以前のような賑やかさが戻ってきています。特に最近では、アジア圏を中心とした海外からのお客様が多くご来店されています。私は、単語程度の外国語しか話せませんが…心の込もった日本語で接客するようにしています…。心を込めて話せば、意外と伝わるものです…(笑)

ー 新千歳空港店での仕事内容について教えてください

冨田:日々の仕事内容としては、

・商品の発注、補充、陳列
・レジの運営管理
・スタッフの勤怠管理

など、他の店舗と大きな違いはありません。もちろん私自身も、毎日店頭で接客を行っています。その中で私は、店長として会社の考えを理解するとともに、チームのスタッフ全員が同じ方向を向いて仕事をしてもらえるように意識しています。

仕事のこだわりややりがい

― 毎日の仕事の中で、冨田さん自身のこだわりはありますか?

冨田:私は接客の中で「お見送りの言葉を添えること」にこだわっています。
具体的には、接客の最後に「ありがとうございます」をお伝えした後、「またお待ちしています」という一言を添えています
店頭がとても混雑している時などは、お客様全員に伝えきれないこともありますが、「前のお客様にはしていたのに、次のお客様にはしなかった…」ということにならないように、一人ひとりに向き合って、お見送りの言葉をお伝えしていきたいと思っています。

 この考えは、以前、百貨店の研修で受けた教育の賜物だと思っています。
当時の研修は、私にとっては今思い返しても本当に辛く厳しいもので、寝言でも「いらっしゃいませ」と言ってしまうほどでした…(笑)。しかしながら、そこで叩き込まれた接客用語の一つを自分なりに少しアレンジしたのが、「またお待ちしています」という言葉なんです。
当時教わった接客用語は「またどうぞお越しくださいませ」でしたが、札幌千秋庵のお店では、もう少し柔らかい言葉の方が良いだろうと考え、少し砕けた感じで「またお待ちしています」とお伝えするようにしています。

今では新千歳空港店のスタッフ全員が「お見送りの言葉を添えること」を実践しており、私の想いと行動が少しずつ浸透してくれているのかな…と思っています。

― 仕事に「楽しさ」を感じるのはどのような時ですか?

冨田:最高に嬉しいのは、お客様から「ありがとう」と言ってもらえた時ですね。私たちからお客様に「ありがとうございます」と言うのは当たり前ですが、お客様の方から「ありがとうございます」と言っていただける機会はなかなかありません。

 つい先日、パッケージデザインがリニューアルされた山親爺を購入されたお客様から、「これからスイスに行くのですが、このパッケージデザインがとても素敵なのでお土産に持って行きます。この絵を描いたデザイナーさんを教えてください」と尋ねられました。そこで、【一日千秋】をご紹介すると、「調べてくれてありがとう!じっくり読んでみますね!」と大変喜んでいただけました。私はこのお客様からの「ありがとう」の言葉がとても印象に残り、最高に嬉しく感じました。

― 仕事に「やりがい」を感じるのはどのような時ですか?

冨田:大変なことをやり切った時ですね。
何か新しいことを始める時や、新商品の発売やイベントを開催する時は、その進め方やルールを決めますが、この「決める過程」がとても大変です。
ルールを決める時は、その時々の状況に応じてスタッフ全員で意見を出し合います。しかしながら、決めなくてはならないことが膨大にある中で、いろいろな意見が出るのでなかなか進みません…。そこを何とかまとめてルールを決め、無事にスタートして軌道に乗った時には「やった!!」という達成感が感じられますね。

店長としての想い

ー 冨田さんはその新千歳空港店で「店長」という役割ですが、店長を任命された時はどのような心境でしたか?

冨田:本音を言うと…お話をいただいた時は「いやいやいやいや‥‥(苦笑)」という感じでした…。ただ、最終的には「もう断れないし…まぁ、いいか…」と腹をくくりました。決まったことはやるしかないですね。

ー 店長としての役割はどんなところにあると思いますか?そしてその役割を遂行するために取り組んでいることはありますか?

冨田:私が思い描く店長の役割は「お店をどのようにしていきたいかという未来像を描くこと」「描いた未来像に向けてスタッフとみんなでお店をつくり上げていくこと」だと思っています。

 特に、新千歳空港店の運営に関することは、私が店長として独断で決めることはせず、スタッフみんなで意見を出し合いながら決めていくように心がけています。
例えば、毎日のルーティーンワークの中には、商品の発注、陳列、在庫の整理などの業務があります。新千歳空港店では、これらの業務に対して日別に作業者を変えた作業分担表を作成したうえで、日々の業務を進めています。この方法を採用することによって、スタッフ全員が全ての業務を行うことができるようになり、誰かが欠けてもスムーズな店舗運営ができる状態になっていきます。そしてこの方法は、私が独断で決めたものではなく、スタッフ同士がコミュニケーションをとりながら、全員で決めて、全員でつくりあげてきたものです。

― スタッフへの日常的なヒアリングやコミュニケーションはどのようにしていますか?

冨田:特別なことはしていません。コミュニケーションは、業務を進めていく過程で十分にとることができますし、意識せずとも自然と連携の輪が広がるものだと思っています。わからないことがあれば、わかる人に確認すれば良いですし、それでもわからなければ全員で確認し合います。こうすることで一体感も生まれますね。

ー その他に取り組んでいることはありますか?

冨田:広い意味で言うと「環境づくり」です。そして少し具体的に言うと「スタッフの勤怠管理の徹底」「プライベートを大切に過ごすためのルールづくり」の2つです。

 
まずは「スタッフの勤怠管理の徹底」です。
これはシンプルに、店長である自分自身が「早く帰ること」「しっかり休むこと」を実践しています。そうすることで、他のスタッフにとっても帰りやすく休みやすい空気感が生まれると思っています。そして何よりも、これは店長にしかできない仕事だと考えています。

 そしてもう一つは「プライベートを大切に過ごすためのルールづくり」です。
私は仕事のことでも個人的な相談でも、どんな話でも聞くようにしていますが、どんなことがあっても勤務時間外に集まることはしませんし、勤務時間外にLINEやメールなどでメッセージを送ることもしません。これは、仕事が終わってくつろいでいる時や休日に仕事の連絡が入ると、どうしても気になってリラックスできないだろうという思いによるものです。そのため私は、「話したいことは会った時に面と向かって話す」ことと、「必要なことは店舗の連絡ノートに書く」ことを徹底しています。

 「連絡ノート」は昔ながらの方法ですが、とても有効なものだと私は思っています。例えば連休を取得し数日ぶりに出勤したスタッフは、連絡ノートを見ればお店の動きを理解することができるため、安心して休むことができます。一方でその間に出勤しているスタッフは、他のスタッフのためにお店の動きをしっかりと記入します。働いているスタッフと休んでいるスタッフが、ともに思いやりをもって地道なコミュニケーションをとることが、店舗の良い循環を生んでいると感じています。

 そして、最も気を付けていることは「自分一人で決めないこと」です。
何か決めなければならないことがあったとしても、「こうやってね」とは言わず、「これはどうする?」という相談をします。この方がスタッフとのコミュニケーションがとれますし、さまざまな意見を聞くことで、私自身が気づかされることも多いんです。私は、店長だからといって一方的に自分の考えを押し付けるようなことは絶対にしたくありません。スタッフの意見にできるだけ耳を傾け、良い意見があればまずは一度試してみます。その結果としてうまくいかない場合は、別の方法に挑戦すれば良いだけですし、積極的にアイデアを取り入れて実行する柔軟性を常に持っていたいと思っています。

 私自身はどんな時も謙虚さを忘れず、驕ることなく、偉ぶることもなく、スタッフが安心して仕事を頑張ることができる環境を整えていきたいと思っています。そして、このことが店長の役割だと思っています。
何かあった時にみんなを守れる存在でありたいですね。

これからのこと

― 最近の千秋庵製菓について、どう感じていますか?

冨田:伝統をつなげながら進化していると感じています。
もともと私は、新しいことや何かを変えていくことが好きなので、「私の好きな感じ!」とワクワクしています。

― 今後、挑戦したいことはありますか? 

冨田:新千歳空港店でしかできないことがあると思っています。他の直営店にはないこと、空港だからできること、空港じゃないとできないことが絶対にあるハズです。これをみんなで考えてチャレンジしたいと思っています。今後もスタッフ全員で、いろいろと意見やアイデアを出し合っていきたいですね。

 そして、個人的にはもっと旅行に行きたいと思っています。
今年の初めには、東北地方の美術館で開催されていた展覧会を見に行きました。その時はちょうど大雪の日で、行きも帰りも飛行機が欠航して大変でしたが…「ルートを変更してグルメを楽しもう!」と気持ちを切り替えて、むしろ楽しみました(笑)
さまざまなアクシデントや変化を楽しむことも旅の醍醐味ですね。

|編集後記|
入社後すぐに複数の店舗を兼任し、今は新千歳空港店の店長として店舗を盛り上げている冨田さん。冨田さんのやわらかな空気感が一緒に働くスタッフに安心感を与え、新千歳空港店を温かい雰囲気で包み込んでいます。きっとこれからも、頼れる店長として活躍してくれるでしょう。

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