見出し画像

元道職員SOGIハラ訴訟 第1回口頭弁論期日について 2021.9.6 15:30-

画像1
画像2

2021.9.6 札幌地方裁判所8階805号法廷15:30-16:00

当日は傍聴券が配布され、法廷内撮影も行われました。

【内容】

①訴状・答弁書陳述

②書証の取調べ

③訴状の要旨陳述 弁護団 犬塚賢護弁護士

訴状の要旨陳述

訴状の要旨をご説明いたします。
まず,本件訴訟は,元道職員であった佐々木さんの扶養認定等の申請に対し,北海道及び共済組合が,相手が同性であることを理由にこれらを拒否したことについて,性的指向による差別的取扱いであるとして,それぞれ国家賠償法に基づいて損害賠償請求をするものです。
佐々木さんは同性パートナーとの交際開始後,ペアリングの購入,札幌市パートナーシップ宣誓,同居などを経て,当該同性パートナーと内縁関係に至りました。
北海道や共済組合の規定によれば,婚姻関係のみならず,「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」であれば,その相手を被扶養者として認定した上で,各種扶助を受けることができます。
 そこで佐々木さんは,平成30年7月,当該同性パートナーを被扶養者として,北海道には扶養手当及び寒冷地手当の区分変更を申請し,共済組合には扶養認定をするよう申請しました。
 しかし,これらの申請に対しては,共済組合からも,北海道からも,パートナーが同性であるため認定できないとして,全ての申請が認定不可とされました。これを受けて佐々木さんは,北海道に対し,平成31年4月にも再度,扶養手当等の申請をしていますが,こちらも同様の理由から認定不可とされています。
 もう一度言いますが,北海道や共済組合の規定によれば,「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」でさえあれば,扶養認定及びこれに係る扶助を受けることができます。これを前提とすると,北海道や共済組合が佐々木さんの扶養認定等の申請を認定不可とした決定は,内縁の相手方が同性か異性かという違いによって取扱いを区別するものといえます。
ところで,今年3月17日,同性婚に関する訴訟の判決が,この裁判所,そしてこの民事第2部の裁判体において言い渡されました。同判決によれば,恋愛対象が同性か異性かといった性的指向の問題は,自らの意思に関わらず決定される個人の性質の問題であり,こういった事柄に基づく区別取扱いは,「真にやむを得ない区別取扱いであるか否か」という観点から妥当性を検討しなければならない,としています。そして,佐々木さんが同性パートナーと内縁関係に至ったことは,佐々木さんの性的指向によるものですから,被告らの,内縁の相手方が同性であるという理由で行った認定不可決定についても,「真にやむを得ない」といえるほどの強い正当化事由が存在する必要があります。
被告らは,認定不可とした理由として,先例がないこと,職員間の公平を欠くこと,納税者の理解が得られないこと,内縁関係は婚姻が有効に成立することが前提の考え方であるところ,現行の法制度下で婚姻できない同性カップル間に内縁関係は認められないことなどを挙げています。しかし,これらの理由は,内容自体が間違っていたり,不当あるいは不合理なものであったりと,いずれも「真にやむを得ないといえるほどの強い正当化事由」にはなりません。
これらからすれば,被告らが佐々木さんの各申請を不可としたことは,「真にやむを得ない区別取扱いである」とは到底いうことができず,佐々木さんに対する不当な区別取扱いであり,憲法14条に係る平等原則違反だといえます。なお,被告らは地方行政を担う者として,性的マイノリティに対し,民間企業や一般市民よりも高度な配慮が求められていました。それにもかかわらず,本件に関して一切そのような配慮をしていなかったのですから,被告らの各決定に少なくとも過失があることは明らかです。
 そこで,本件訴訟は,被告らに対し,被告らの差別的取扱いによって佐々木さんが受けた精神的損害及び経済的損害について,賠償を請求するものです。

④原告意見陳述 原告 佐々木カヲル(社会福祉士)

令和3年(ワ)第1175号 損害賠償請求事件
原告 佐々木 カヲル
被告 北海道 ほか1名
意見陳述書
2021年9月6日

札幌地方裁判所 民事第2部合議係 御中

原告  佐々木 カヲル

原告の佐々木カヲルと申します。
本日は、このような機会をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

まず、私がこれまで、被告らに求めてきたことを、お伝えしたいと思います。

それは、私を「普通」に取り扱ってほしい、ということです。
つまり、個人として尊重され、人が生まれながらして持っているはずの権利を、
私にも与えてほしいということです。
何か、「特別な扱い、特別待遇」を求めたつもりはありません。

2018年7月、私は、勤務先であった北海道、そして、地方職員共済組合北海道支部、さらには、この裁判では被告になっていませんが、一般財団法人北海道職員互助会に対し、扶養認定や寒冷地手当の増額支給、結婚祝金などを求めました。

私とパートナーは、同性であるが故に、婚姻制度を利用できませんが、
人生をともにするパートナーとして、愛情と信頼に基づく真摯な関係であることを確認し合い、札幌市パートナーシップ宣誓制度を利用しました。
また、二人の間で、パートナーシップ契約(同性婚契約)書を交わしています。

その上で、関係部署に、パートナーと同居し、同一世帯、同一生計となったことを届け出たのです。

しかし、私の届出に対し、返ってきた答えは、
事実婚、内縁関係にも認められる扶養認定、寒冷地手当の増額支給などは、
パートナーが同性であるからできない、

私を「普通」に取り扱うことは、他の職員との公平性を欠き、
税金を納めている道民が理解しないからできない、という不合理な区別、差別でした。

同性パートナーとの婚姻は、法律が変わらないと認められません。
しかし、扶養手当や寒冷地手当の増額支給は、給与条例や被扶養者認定基準において、
「事実上婚姻関係と同様の事情にある者」に支給すると書かれており、
同性カップルを除く、排除するとは、ひとことも、書かれていません。

しかも、他の職員との公平性を欠く…とは、

私の公平性はどこへいってしまったのでしょうか。

そこで、私は、私とパートナーとの関係を、内縁関係と同等と認め、
事実婚、内縁関係と同等の取扱いをしてほしいという要望書を提出しました。

私が受けた不合理な区別、差別に納得がいかなかったからです。

しかし、これについても、何らの検討もされず、完全に「無視」されました。

つまり、私が要望書を提出した後の対応について、支援者とともに情報開示請求などをしたところ、
同性パートナーに扶養認定等ができない「理由」が示された文書も、
同性パートナーに扶養認定等ができない「決定」に関わる文書も、
存在しませんでした。

私は、膨大な書類作成をし、何度も関係部署とやりとりをしました。
何度も二人の関係性を証明する書類を提出し、要望書も提出しました。
その結果、無視され、差別され続け、心身ともに疲れ果てたのです。
そして、不合理な区別、差別を当然とする組織に、
自分が所属し続けることに困難を感じ、働く気力がなくなったのです。

退職届には、次のような退職理由を書き、北海道知事あて提出して依願退職しています。
・北海道及び地方職員共済組合北海道支部が同性パートナーを被扶養者として認定せず、また、北海道職員互助会による結婚祝金も支給されないこと。
・北海道人権施策(推進)基本方針で性的マイノリティの人権について明記されているにもかかわらず、「公金の支出には、職員間の公平性の確保と道民の理解が必要」と人事課より説明があり、性的指向によるセクシュアル・ハラスメントを受けたと感じたこと。

これらにより、北海道職員であり続けることに困難を感じ、労働意欲が低下したため。


私の周りにいる当事者の多くは、「ふつう」がいい、「ふつう」でいいといいます。
つまり、ここでいう「ふつう」とは、自分たちに与えられるはずの権利を、最初からあきらめるということです。
私も以前はそうでしたが、社会的に少数である人々、マイノリティは、マイノリティであるが故に、あきらめることに「慣れさせられている」気がします。

しかし、私が、私なりの「普通」、当たり前の権利を求めるのは何故でしょう?
それは、私が「社会福祉士」「ソーシャルワーカー」としての教育を受けてきたからだ、
と思います。
私は、個人の権利を守ることを、当然の職務として仕事をしています。
社会福祉士の倫理綱領と、行動規範によって行動しています。

つまり、あらゆる差別、抑圧、排除、無関心などを認識した場合は、専門的な関心を持ち、また、人権と社会正義が守られるよう、人々とともに社会に働きかけなければならないと
教えられてきたのです。

ところで、社会的に少数である人々、マイノリティが「普通」に取り扱ってもらうには、
社会的に多数である人々、マジョリティの理解が必要となるのでしょうか。

自らの意思ではどうにもならない「性的指向」や「性自認」によって不合理な区別、差別を受けることは、当然のことなのでしょうか。

私は、人権課題については、多数である人々、マジョリティの「理解の度合い」を条件としない、と考えています。

例えば、女性の参政権。今では与えられるのが「普通」、当たり前と思われていますが、
そうでない時代がありました。
女性の参政権は、マジョリティである男性の理解の度合い、を条件として与えられたものでしょうか。


私は、今回の訴訟、つまり、同性パートナーがいる職員の扶養手当や寒冷地手当の増額支給を求める裁判について、記者に質問された鈴木直道北海道知事が、テレビで、こう答えているのを観ました。
「他都府県において、道の取り扱いと違った取り扱いをしているところはないと承知」
「国や他府県の取り扱いと社会経済情勢の変化ということも見極めつつ適切に対応していく考え」。


しかし、私はこう考えます。社会的に多数である人々、マジョリティの理解が得られない場合、公の機関こそが、率先して制度を柔軟に解釈・運用し、古い制度を改正し、民間の理解水準を高めていくことが求められる、と。

また、北海道が掲げる「北海道人権施策推進基本方針」にある「性的マイノリティ」の人権や、法務省が「啓発活動重点目標」「啓発活動強調事項」に掲げている「性的指向・性自認」による差別の解消について、
税金を使うことに、なんらの問題もない、何か問題があるのだろうか、と。


最後に、私は、今回の裁判にあたり、

社会的に多数の人々、マジョリティが、普通の生活の中で、当たり前に与えられている権利は、社会的に少数の人々、マイノリティには与えられていない、
という事実を知っていただくとともに、

多様性の尊重と公正な社会のあり方について、

傍聴席に座っている方々をはじめ、
みなさまにも一緒に考えていただきたいと思っています。

また、裁判長をはじめ、裁判官のみなさまには、
憲法をまもり、人権を擁護する「法の番人」として、
明確な司法判断を下していただきたいと考えています。

以上



この先には文章はありません。

元道職員SOGIハラ訴訟ではカンパ(寄付)を集めております。いただいたカンパは、憲法第14条1項「法の下の平等」を求める裁判を支える費用として使わせていただきます。あたたかいご支援お待ちしております。

ここから先は

0字

¥ 500

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?