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京都ギャラリー「グリーン&ガーデン」でのパフォーマンス記

 本年のラストイベントは、京都「ギャラリーグリーン&ガーデン」(以下G&G)で開催された「EROS-美と快楽の闇を彷徨うものたち」のグループ展に参加した。


 オファーを受けたものの、私は展示出来る作品を作る作家ではないので何を、どう展示すればいいのか、ずっと頭を悩ませていた。モデルとして写真家に撮って頂いた写真は沢山あるが、それを展示してもなぁ。パフォーマンスDVD上映も考えたが、グループ展という事を考えると邪魔になるだろうし。初夏にオファーを受けたが、内容が全く想像できず苦しんでいた。

 光が見え出したのは、イベント「秘宝館」で展示もやろうと決まった時、連鎖的に思いついた。妖しい秘宝館的にいろんな物が見れるコーナーにしよう。その括りは私の「デビュー40周年」としよう。
 そこで私のやってきたジャンルを「映画」「緊縛」「ストリップ&パフォーマンス」「切腹」とコーナー分けして展示することにした。

 ようやくテーマが決まり、展示物を吟味しだした9月。映画コーナーは私のお気に入り作品のポスター展示。新東宝「緊縛•SM•18才」。これは即座に決定したが、これだけでは面白くない。何か臨場感が欲しかった。そこで雑誌の取材記事を選んだ。「映画の城」(東京三世社)1984年6月号より「女優の1日密着ルポ」。本当は雑誌そのものを展示したかったが、多数の人が見るギャラリーではリスクを減らすため、部分コピーで勘弁してもらう。

 「緊縛」に関しては選ぶのが大変な位、たくさんの写真を保持している。しかし写真家の展示ではないので、雰囲気が伝わる作品がいいかと思い、濡木痴夢男氏率いる緊縛美研究会での1コマ、緊縛中の写真と、杉浦則夫カメラマンから個人的に頂いた写真にした。その写真はグラビアを数多く撮って頂いた中でも、私が特に印象深い写真で、おそらく私が20歳位の頃、「S
Mセレクト」(東京三世社)でのグラビア。桜色の着物。着衣での緊縛が厳しく続き、着衣ならではのフォルムが生かされている。私はずっと以前に、杉浦氏にこの写真が好きと伝えたことがあり、それを覚えてくれてくれたのだろう、プリントして頂いたのだ。体が柔軟で体力があったからこそ耐えられた撮影だった(緊縛撮影は体力がなければ持たない)。

 「ストリップ&パフォーマンス」では、写真週刊誌「フォーカス」での1コマに決めていた。路上パフォーマンス「原宿歩道橋逆さ吊り」の記事。さて他は。これも写真ではあまり伝わるものではない。ストリップ劇場での記録映像はあるので、それを流すか。そう思い、改めて記録映像を観てみたが、やはり従業員らが撮った映像。照明が白飛びしてたり、お客さんの頭が入ったり、画角もイマイチ。これじゃねぇ。

 しかしここで別のアイディアが浮かんだ。プロフィール映像を作る。つまり展示以外で写真を増やせば、もう少し何かを伝えることが出来るのではないか、と思ったのだ。そこで、私という人物だけでなく、様々な観点からみた写真を30枚選び、スライドショーを作った。
 これを作ったことにより展示写真も選びやすくなった。後のパフォーマンス写真は、サディステックサーカス2014「牡丹灯籠」とストリップでの金粉ショーの1コマ。

 「切腹」の展示も色々考えた。本当は真剣「雪」を展示したかったが、刀鍛冶師と連絡が取れなかった。鍛治師は制作に入ると半年から1年近く籠る、と以前聞いていたので断念するしかなかった。
 切腹として私は、自分の信念である「悲愴美」の切腹を現したかった。そこで以前私が分譲写真を作っていた頃の、多数のシチュエーションでの切腹を見てもらおうと思った。桜、雪、海などイメージ先行切腹だ。
 そしてもう1枚は、愛好者が作ってくれたコラージュ写真。私のいろんな切腹ポーズを撮り、寺の門前写真に多数貼り付けた物。門前での集団自決風作品が出来上がった。私はこの作品の熱意が好きだ。CGを使えば容易く出来るのであろうが、この手間暇を惜しまない感じがマニアックであり、嬉しい。

愛好者によるコラージュ

 さて展示は以上だが、やはり私の本質は、パフォーマンスをしなければ伝わらない。私は会場でのパフォーマンスを決めた。
 京都で最も観光シーズンの11月。ギャラリーは古民家を改装しての2階。いい佇まいだ。今回のイベントはギャラリーということもあり、朗読と切腹。朗読は拙著「蓮の誘惑」抜粋。輪廻転生を軸とした内容は、切腹への気を高めてくれる。読み終わり、いよいよ腹切り。
 曲は坂本龍一「async」。この曲はふっと何かが降りてきて、私の背中を押してくれるように感じる。模造刀は「雪」。これは鍛治師に作ってもらったもの。真剣を作ってもらった際に、真剣を使用することはできないので、いつでも使えるように模造刀をお願いしたのだ。小説では朱鞘の短刀だが、デビュー30周年で作ってくれた短刀を使いたかった。約10分の切腹演技。「死」はいくら演技とはいえ常に真剣だ。もちろん妄想の中の「死」であるので、痛くも匂いもない。私は気持ち良く昇天した。

 終了後は今回のキュレーターで画家の中井結氏と対談。中井氏はゴスロリ系の画を描き、札幌で知り合ったのだが、ゆっくり話したことがなかったので、かえってお互い聞きたかった事があり、その質問も新鮮であった。
 

中井結氏作品

そして同年代だったと分かり、1980年代のエロ本話も盛り上がった(いやお客様は置いてけぼりでね)。特に超変態雑誌「ビリー」(白夜書房)の話。中井氏はこの雑誌の愛読者であった。


 質問では血糊がどうやって出てるか、なんて事を聞かれたが、こればかりは明らかに話すことは幻滅ですね。

 終了後は、bar「バルバラ」へ行き、SM仲間である龍崎飛鳥ママ、ゆかママと懐かし話を愉しんだ。1週間の展示期間の中、京都滞在16時間という短い時間だったが(そのうち半分は睡眠と移動)、新しいことに挑戦できたこと、とても刺激となった。そして自分の原点を見つめる良い節目となった。

 そして私よりも早くに、このnoteで知り合った「はるなつさん」が鑑賞レポートを挙げてくれていた。はるなつさんはストリップ劇場の観劇レポートを綴っているが、その文章に踊り子愛が感じられ、とても嬉しく思う。合わせて読んで頂きたい。


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