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「靴磨きの習慣」

いつも右の踵の
内側が一番 磨り減ってた
パパの靴

砂埃もいつだって
右の先についてた
いっぱいいっぱい

最初に乾いた布で拭いて
それから靴墨をつけたブラシで磨くのよ

  あの日まで
  毎朝続いた習慣は
  パパの中に今も残ってる?
  小石ほどでも

一番じゃなくちゃダメ
国語も算数も理科も
みんなみんな

うちはよそとは違うんだ
日曜でも月曜でも それが
パパの口グセ

ブラシでしっかり磨いたら
最後にもう一度乾いた布で磨くのよ

  あの日まで
  毎朝続いた習慣を
  私は幾つになっても
  忘れられないでいるよ

あの日
帰ったばかりのパパは
一番になれなかった私に
履いてた靴を投げつけたんだよね
踵の減ってない左の靴は
私の額に 思いきり 痕を遺した

磨き終わったら
キレイに揃えておくんだったね
パパがいつでも履けるように
パパのお気に召すように

  あの日まで
  毎朝続いた習慣を
  私は幾つになっても
  忘れられないでいるよ

 
  あの日まで
  毎朝続いた習慣は
  今何処にいったんだろう
  あなたの中で

―――詩集「家路」より


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