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企業広報バイブル #35 広報部の都合

🎵日米のリーディングカンパニーで企業広報を統括して気付けば28年。IT系、インターネット系、不動産、エンターテインメント企業、広告代理店、流通業界トップ企業広報アドバイザーまで色々。かなりの私見も交えて色々書いてみようと思い立ちました、、、🎵

情報の出し方、、、にも当然、いくつかテクがある。リリースを書いて一斉配信、これが普通ではある。しかし、記者さんにとっては独自ネタの方が大きな記事にしやすい訳である。会社にとってリリース前に情報が漏れてしまい「抜かれる」を避けるために情報管理が重要。そりゃそうだ、大きなネタで多くのメディアを呼んでいる記者会見の前日に、そのネタでばーーーん、と記事が出てしまったりしたら大騒ぎだ。広報は記者会見の準備どころか関係各所への説明に追われ、株価が乱高下しする。悪夢である。俗にいうスクープね。

ただ、、広報が意図的にこれを仕掛ける場合もある。特定の影響力があるメディアに1発リーク、、、、あたかも、抜かれたかのように、、、記事としては「〜ということが本紙の独自取材で分かった」とか、「〜という事実が関係者への取材でわかった」というようなトーンになる。リリースを配信する前に、日頃から関係値を築いている記者さんに持ちかけて、情報提供してスクープとしてばーん、と行ってもらう。その場合は、意図せず抜かれる訳ではないので社内の調整はバッチリ行う。

昔々のお話し。こちらはベンチャー企業、とある大企業との業務提携に関する共同リリースまで話が進んだ。大きく記事が欲しかった。社長と話をして、先方の広報に相談して先方主導でリークをお願いしようという事になった。「相手は大企業で番記者(その企業だけを担当している記者)がいる。十分交渉できるはずだ。ウチは小さな会社だし相手の広報に託したいと、お願いしてきてくれ」そりゃそうだ。

先方に伺い広報との打ち合わせ。こちらは私一人。先方は6名(笑えた)。
「わかりました。1紙にいきましょう。XXXX新聞(業界紙)で」
「え?XXXX新聞(業界紙)ですか?このネタ、XX新聞(大手新聞社)で行けますよね。御社の番記者さんいらっしゃいますし」
(なぜか、先方の広報6名は固まり下を向く)

「すいません、こちらの想定とちょっと違い、私では決断できません。社に持ち帰って社長と相談させていただけませんか?」

当然、会社に戻って報告すると社長はキレていた、、、「は?え?」
(この社長、前職はその大会社の副社長、その前はその会社の広報宣伝部長🤣)

「なあ、、おかしいと思わないか?普通ならネタは悪くないし、あそこの広報の腕ならXX新聞でいけるはずだよなあ。なんか裏があるとしか思えない」
「裏??」その時は社長が何を言っているのか分からなかった。
「今、6時。今晩一晩、捕まえられるだけの知り合いの記者を捕まえて飲み歩き情報収集してくれ」(えええ、またまた、、、隠密仕事かーーー)

ドンピシャであった。
ある大手メディアOBが、「あそこの会社とXX新聞社、しばらく無理だろ」

先週、XX新聞であの会社の都合悪い記事、それも本社要人がらみ、が大きく掲載されていた。スクープ記事。広報はアメリカ本社からキツーーいお叱りをうけ、日本の広報部長の首が飛ぶ騒ぎとなり、彼らはXX新聞社にクレームをいれ、現在は絶賛、出禁中にまで発展している事がわかったのだ。

そりゃ、そこにお願いしてくれ、は出来ないですよねーーーー🤣

社長室で黙って私の報告を聞いていた社長は、おもむろに受話器を上げた。
なんと、その大企業の社長室。
「社長にXXから電話だと伝えて欲しい」(嫌な予感)
「お繋ぎします」

「そっちの、○ケ広報より、ウチの広報のが腕利なので、今回はウチからXX新聞へ入れる。広報に『手を出すな』と伝えてくれ」

私ににっこりと振り向いて、、、「よろしく」
(素敵にばーーーん、と行かせていただきました)





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