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企業広報バイブル #36 日米テレビ取材の違い

🎵日米のリーディングカンパニーで企業広報を統括して気付けば28年。IT系、インターネット系、不動産、エンターテインメント企業、広告代理店、流通業界トップ企業広報アドバイザーまで色々。かなりの私見も交えて色々書いてみようと思い立ちました、、、🎵

今回はテレビ取材のお話である。
私が長くお世話になった外資のエンターテイメント企業。ここは注目度も高かったため(というか私の前任者が8年間も取材を受けていなかったことも大きい)、私が攻めに転ずると取材依頼は非常に多かった。

ただ、私の尊敬する本社広報トップは常日頃から「リクエストされたから」ではなく、「我々にとって良いタイミングと内容だから」、と私にはリクエストして頂戴。この取材が日本にとって良いのか、良くないのかの判断は責任者であるあなたなのよ、と言われていた。これは非常に学びとなった。

アメリカ本社(ロス)の取材を絡めた依頼も頻繁に入った。本社のマネージメントへの個別取材のみならず、サンフランシスコやNYの関連会社、そして、アナハイム。大型特集の場合は全部巡るとかなりのパワーが必要である。早朝から夜までキッツキツのスケジュールで真夏などダイエット効果抜群だったりする😅。

事前の取材内容のすり合わせから国を跨いでの取材セット、移動含めたスケジュール組み、、、神経がもがれて禿げる勢い(楽しいけど)。テレビ局からの無理難題なリクエストは全部飲める訳ではないし、こちらも、お勧めがあったりする。当然、全部、本社や関連会社の広報部隊の協力なくしては実現しない。

3.11以来、アメリカの会社は(いや全世界的に)ゲートクリア(訪問者の入社時セキュリティ)の手続きは厳しいのでクルー全員の情報を事前に提出は必、入館手続きも時間がかかる。提出したタイムテーブルに沿って決められたルートでクルーを動かさねばならない。それでも、それでも、実際に現場に入ると予想外のことが起きたり、OKしたけど急にダメになったの、などとケロッと言われたり、テレビ局のディレクターから事前の予定にはないんですが、ここに入って、カメラ回せませんか?などと言われたりと、、

クルーとディレクターで4、5名。だが、そこに、特集などでタレント様が入るとマネージャーからヘアメイクまで総勢10名を、私一人で捌き、見張り、交渉し、本社や関連会社の広報との間に入ってスムースな進行ができるように走り回ることになる。

えええ、、一人?と思うであろうが、、、こっちだって予算っつーのがある。大体、取材についていくことを、単なるアテンドだと思っている人が多すぎるため、なかなか十分な予算が降りない。アテンド、ではなく、この仕事はアレンジャーであり交渉人であり、そして、最終的に会社にプラスになるように(マイナスがないように)ディレクターと方向性確認などをしながら取材をリードしていく知能犯的な役割を担うのにである。決して、カメラが回るのを日向でニコニコ見学している訳ではない。さすがにこの状況で一人は我ながら良く生きていたと思う。

また、テレビの取材のやり方に日米で決定的な違いがある。
ここで毎回本社広報とイザコザ、、、、どっちが悪い訳ではなく習慣の違いである。

日本は「捨てる編集」である。
どういう事かというと、たとえば編集後の出来上がりが10分欲しい、という場合もその何倍も何倍もカメラを回す。ひどい時は2時間くらい、、、
アメリカは、「捨てる編集」の概念はない。というより、あらかじめきちんとプランし、必要な尺プラスアルファで撮り終える、が優秀とされている。

そのため、本社広報にしてみれば、ここのシーンは5分程度のオンエアでと言っているのに、延々と社内を歩き、あちこちカメラを回し続け、挙句に、追加でここも撮っておきたいと言い出すクルーに「はあ????💢(それ、使うの?使わないの?)」という反応をするのである。彼らは使わないのに撮る、は理解できない。

当然ご立腹な本社広報が、「十分必要な部分は撮れているでしょ、十分、私たち、協力したわよね、、ねえ、きちんと彼らに伝えてちょうだい!!!」と言い出すのである。

念の為ここも、念の為、、使うかもしれないし、多分使わないとは思うけどわからないし、念の為、、、などとディレクターに食い下がられて、私は間に入って苦笑いなのである。

説明することにはしている。日本はたーーーくさん撮って、いらない部分を捨てていくのが編集、なんだよ、と。まあ、アホか、という顔はされますが、、、(ほぼ、全キー局同じです)

そんなこんな、一口に取材でカメラを回すといっても日米のやり方の違いがあるのだ、と頭の片隅には入れておき、双方の考えを尊重しながら調整していく、世界平和を目指すことが必要ですね!


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