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【学びメモ】「異物をとり入れる」「自分が誠実にできる範囲で誠実であればいい」夏葉社・島田さんと稀人ハンター・川内イオさんのトークイベントを聞いて。

昨日、夏葉社の島田潤一郎さんと川内イオさんのトークイベント「ひとり出版社は中華料理店に似ている!?夏葉社・島田さんに聞く仕事と暮らし -気鋭のスモールビジネスの、はじまりのお話。」をオンラインで視聴した。たくさんの気づきや感じたことがあったので書いておきたい。(自分ごとに落とし込んで書いたメモです)


誠実であれる範囲は限られている。

「僕が誠実であれる範囲で誠実であればいい」とおっしゃった。
自分が心地良いお客さんとの関係性が築ける状態で、どのくらいの数のお客さんだったら対応できるのかを考える。例えば、法人が顧客であれば、担当者との他愛もない会話が楽しくて仕事を続ける理由になっているのであれば、その会話をしながら対応できる数のお客さんでビジネスを回せばいい。
誠実の形も人それぞれかもしれないが、万人に誠実にはできない。

転職エージェントで働いている時、担当するお客さんの人数が増えていくほど、一人ひとりへの気配りが薄くなっていく感覚を覚えた。電話していたところをメールにするとか、一人ひとりに書いていたメールをテンプレにするとか。自分が誠実にできる範囲を超えてしまうと、誠実さが薄れていく。その極みは、仕事への面白みを感じられなくなることだと思う。

ライターの仕事も同じだと思う。自分が誠実にできる範囲で誠実に仕事をしてきたい。「自分が誠実にできる範囲で誠実であればいい」この言葉、心に刻んでおきたい。


「あこがれ」て模倣するところから始める

島田さんは、先人たちがつくった本を見て、あこがれて、模倣するところからモノ作りを始めるという。「あこがれ」をただ模倣するのではなく、自分の中にもプラスアルファがあるから、それと合わせてモノ作りをする。

何かにチャレンジするとき、「あこがれ」から入っていいんだ。あの人みたいになりたい、と言うと鼻で笑われたりもするかもしれない。でも「あこがれ」から始めていい。

編集という仕事はものづくりに近い。

島田さんにとって、本作りは、モノづくり。
まずは作りたい形があって、内容はそのあと。

厚さ、デザイン、紙、まずはモノを作りたい気持ちが先にある。
やっぱりモノが好き。
そのモノを見て、誰かが大切にしてくれることが嬉しい。

いいなと思えるモノがあれば生活が豊かになる。
本作りは、絵とか木彫りの人形とかを作っている感覚と近い。

「島田さんの本作りはモノ作り」

いろんな好きがあっていい。
同じコトをするにしても、好きところ、好きな理由は自由。
自分が好きな理由で始めればいい。続ければいいんだと感じた。

島田さんでも、何年かに一度は怒られる。

出版の仕事を始めて15年目の島田さんも、何年かに一度怒られるとおっしゃっていた。自分の気質や自分の癖みたいなところをわかってくれている人が周りにいて、時々ピシャっと怒ってくれる環境っていいなと思った。

怒られない環境に長く身を置くと不安になる。同じ職場で同じ仕事で、その仕事の重鎮のような存在になると、自ら環境を変えない限り、怒ってくれる人が誰もいなくなる。お客さんの声はもちろん嬉しいけど、その道のプロである同業の人がいいねと言ってくれるとさらに嬉しい。その代わり同業の目は厳しい。厳しい目で見てくれる人が近くにいる、厳しい目で見てもらえる環境に身を置くことも大事なのだと思う。

本を読むというのは、声を聞くことに似ている。

本によって、聞こえてくる声の大きさや、声が違う。
僕らは、本の声にお金を払っている。

本が人に思えてくる。本を買うとき、その本の装丁が好きか嫌いかは大事だ。その本を持ち歩きたいかどうか、部屋の本棚に並べたいかどうか。
その本の声が好きかどうか。
本屋さんで本を手に取る、本を開く、目で文字を追いながら声を聞いているのかもしれない。

こうしてnoteを書く。仕事で原稿を書く。手紙を書く。
書くときも読む時も、そこには「声」がある。
私の声は、読む人に伝わっているだろうか。

「世の中の時間の流れのいかに外にいるか」


今の世の中は、時間の流れが早い気がする。
いかに、今の時間と歩調を合わせないかが重要。

島田さんの話を聞いて、時間に追われまくってきた自分を思い出す。生きていて一番辛いことは時間に追われることではないか。時間に追われている時、人は生産ラインの一部と化してしまっているように感じる。

いつも時計を見て時間を気にして生きているけど、キャンプに行くと時計を見ずに過ごす日がある。世の中の時計、物差しじゃなくて、自分の時計、自分の物差しで生きれたらいいな。

知らないことがあるからチャレンジができる。

子どもは知らないことがたくさんある。大人になると知らないことが減っていく。だからこそ、知らないことをやっていかないと新しいものは作れない。そこからいい仕事が生まれる。


異物を取り入れる。


年をとると、周りにあるものが自分と近いものばかりになる。
自分と異なるものと接する機会を作らないと新しいモノは作れない。

島田さんは、毎日時間を決めて本を読んでいる。
6時半-7時 の朝の時間は、読みやすい本を。 
13時-13時半のお昼は、自分にとって異物になるものを読むと決めている。 

自分を形成する言葉が100あったとして、それ以外の言葉を入れていかないと自分は変わらない。自分に対して常に揺さぶりをかけていかないと新しいものは作れない。」

異物の本を読むとは、自分では買わない本を読むこと
なぜそれを島田さんは異物を取り入れるのか?
仕事で第三者の原稿を読んだりするので、自分の頭を活性化させ続けないと
自分の慣れでしか仕事ができなくなる。異物を取り入れて頭を活性化させることで感性を磨き続ける。

異物を入れる行為は、運動をしているような感覚。
お昼の30分は、異物の本の内容が、わからなくてもとにかく読む。

異物の本は、どんな本を読んでる?


哲学書が多い。600ページ読んでもわからなかったのはニーチェ。
外聞なども読む。格闘して読んだものの中に面白いものがある。
読んでいて喉越しのいいものは、読んでる時は面白いが、忘れてしまう。
読んでる時はわからないが、異物が残るものがある。それが何かを考えるヒントになる。

2016年から、働く時間は1日5時間 今は、5時間半。

島田さんのコアタイムは9時半ー10時半。
コアタイムを1時間と決め切っているのがすごい。
自分の頭が最高にいい状態で動いて、いい仕事ができる時間を把握しておくことが大切なのだと思う。もし自分のコアタイムが1時間しかないとなれば、どんな1時間を過ごすだろう。コアタイムを先に決めてしまうことで、集中できるかもしれない。


2016 年より前は、1日10時間働いていたという島田さん。
半分しか働かなくなった今の方が仕事でやれる量が増えたそうだ。

なんで仕事の密度が濃くなったのか?
子育てにすごく興味があって、仕事の生産性が上がった。
働く時間が短くなったことで、何の作業をするのも楽しくなったとおっしゃっていた。夏休みも3週間休みをとって旅行に行かれたそうだ。
1日5時間半勤務で、お休みも3週間もとれる。
「Appleよりもトヨタよりも、自分の会社が一番好き」
って言える島田さん、かっこいい。

いつでもアルバイトをする心の準備はできている。

マーケティングとかそういうことではなく、コンビニとかそういう「誰かの生活の支えになるような仕事がしたい」。自分が支えたい人たちがそういう人たちだからとおっしゃっていたのが印象的だった。
自分の時間を使って仕事をすることで、支えたい人は誰だろうと考えた。自分が働くことで支えることができる人の顔が見えた方ががんばれる。

転職エージェントの仕事は目の前の人のために、がんばれる仕事だった。ライターの仕事も届けたい誰かがいて、書いている。企画を出す時点で、届けたい人がいる。これまで出会ってきた人、過去の自分、今の自分かもしれない。

俗っぽさを大切にしている。


洗練されること、美しいものを作ることは、実は難しくない。
年をとればとるほど、選択肢は少なくなるので、ブレないのは当たり前。

「世の中の時間の外にいる」こととつながっているような気がする。
CMが好きで、輝いている人を見るのが好き。
スターが好き、妻とテレビを見て話をするのが好き。
テレビもみる、ゲームもする、漫画も読む。
娘がYOASOBI歌ったらいい歌だなーと思う。
普通の暮らしを大切にしている。

世の中は煽ってくる。洗練しよう、美しくなろうと煽ってくると思う。
そのなかで、自分にとっての普通でいることの方が難しいのだと感じた。


売れる本は、わからなさが残る本。


作った後も、わからなさが残るものの方が売れている。 
わからなさが残る本には、読者にとって対話の要素がある。 
わからないものに読者が反応しているのだと思う。
10人いたら、10人解釈が異なるような本は売れている。
10人いて、10人同じことを受け取るような本は消費されている本だと思う。
自信満々で作った本ほど売れない。
よくわからないまま書いた本の方が売れる。


感想:わからなさは宝物?

「異物を取り入れること」「わからなさが残る本は対話の要素がある」とのお話を聞いて、「稀人ハンタースクール」や「本屋アルゼンチン」での体験を思い浮かべた。

「稀人ハンタースクール」は、今年3月に開講した稀人ハンターの川内イオさんが主催するスクールだ。師匠のイオさんはじめ、出会う人からおすすめの本を教えてもらう。自分の人生では出会ってこなかった本たちにたくさん出会うことができた。これからも私ひとりでは手に取らない本たち。みんな生きてきた道が違うから、選ぶ本のジャンルもバラバラ。新しい本に出会い、新しい言葉に出会う。島田さんがおっしゃっていた、異物を取り入れて、新しい言葉に出会う体験ができたことが嬉しい1年だった。

「本屋アルゼンチン」は、福岡の糸島にある大好きな本屋さん。4畳の小さな本屋には、私にとって異物しか並んでいない。どれも自分では買わない本ばかり。その異物との出会いを楽しみにしている。

本屋が主催するイベントに参加することで、異物の本たちに囲まれ、まみれ、逃げることもできず、しぶしぶ読むことになる。その苦行が気持ちいいと感じる。無理やりにでも自分をそこに置かないと、読もうとしないからイベントに参加するというのもある。一度参加してみたら、異物を取り入れることで、自分の頭の中で地殻変動が起きる感じがクセになる。

去年「ほぐす学び」に参加した。
ひとりでは読まない本、読めない本をみんなで体当たりで読む。本に書いてあることの細かいことはわからなくても、なんとなく感じることがある。
「わからない」だらけの場に、対話が生まれる。
島田さんがおっしゃる、わからなさが残る本は対話を生む。わからなさの残る本の方が売れるとのお話とつながった。


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