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履歴書がAIにスクリーニングされる時代

海外の記事なのでそのまま日本の状況に当てはめることはできませんが、現代を象徴するような就職活動に関わる記事を読みました。

履歴書の長文化は、履歴書を確認する企業側が採用においてAIによるスクリーニングをかけていることが大きな要因のようです。求職者はAIスクリーニングを突破するために、アピールができるスキル関連のキーワードを大量に記載することになるため、結果的に履歴書が長文で膨大な量になる傾向が生じているのです。

日本の就活事情は欧米のようにジョブ型雇用に切り替わることがまだまだできていないため、この記事のようにスキルに関わるキーワードを大量に記載することが、あまりピンとはこないかもしれませんが、企業側の採用傾向にあわせてアピールできる情報を提供するという本質的な行動は全世界で共通のことかと思います。

では、ジョブ型ではなくメンバーシップ型と呼ばれる日本の就活事情では、履歴書のAI化によってどの様なことが起こるのでしょうか。

メンバーシップ型とジョブ型の顕著な違いは、「人」が優先されるか「職」が優先されるかです。「人」を優先させるメンバーシップ型は、仕事を人に合わせて割り当てますが、「職」を優先させるジョブ型は仕事に対して人を選定します。

そのため、ジョブ型雇用である欧米ではAIスクリーニングが待ち構えている「職」に対して、求職者はどんな仕事ができるかを、スキルに関するキーワードを大量に記載することでアピールしているのです。「pythonとjavaができます」とか「excelで表計算ができます」といった記載です。

そうすると、メンバーシップ型である日本の求職者がアピールすることは、スキルではなくもっと抽象的で人柄を表現するようなものばかりになることが考えられます。

「和を重んじて職務を遂行できます」とか「絶えることなく知識を吸収し続けます」とか「素早い判断で現場の状況を報告することを常に意識しています」とか、そういったことが大量に列挙されるようになるのかもしれません。

また、メンバーシップ型の場合はジョブ型とは異なって「何ができるか」ではなく「どこに所属していたか」を答える傾向があります。

ジョブ型では「私は営業をしており、今は○○社に勤務しています」と答えますが、メンバーシップ型では「私は○○社の社員で営業を担当しています」と答えます。メンバーシップ型では、職種よりもどの企業に所属していたかにアイデンティティを置いているのです。

だとすれば、AIスクリーニングを突破するために、過去に在籍したことがある企業のなかから最も社会的知名度や信頼度の高いものを大量に記載する求職者が出てくることが予想されます。「ソフトバンクに勤めていました」とか「NTTデータの仕事をしていました」の様な書き方です。

また、未だに日本では学歴が一定の信頼を提供することができる事実が残り続けているので、AIスクリーニングを突破するために受験勉強をするご家庭も増えてくるかもしれません。

しかし、AIのスクリーニングが求職者をどの様に判別するのか、技術的な詳細を理解するのは難しく、今後も更なる進歩が続くため、これを探求することに時間を割くのは賢明ではありません。そして、スクリーニングはあくまでも書類選考という初期の段階でのことなので、実際の入社に至る最終面接までには人的なコミュニケーションも介在されるはずです。

時代の変遷を象徴するような記事ではありましたが、その様な時代においても変わらない本質的な指摘が記事の最後に書かれていたので引用します。

一方で履歴書にスキルを詰め込み過ぎれば、事実の「誇張」につながるリスクが生じるとも述べた。雇用主がそうしたスキルをテストする可能性を軽視してはならないという。

「耳にしたことがある、または需要が多いといった理由だけでそうしたスキルを履歴書に書くべきではない」とソルトレリ氏。「そのスキルと実際の職務経験に相関がなければ、怪しい危険信号だ」と語った。

出典:Bloomberg,履歴書の長文化に採用担当者げんなり、スキル詰め込み過ぎは逆効果も

よくよく考えれば、当たり前のことが書かれているだけのシンプルな記事なのです。

変化の早さに焦りを感じる気持ちもわかりますが、本質を理解していれば当たり前のことをしていればよいだけなのではないかと思います。

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