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死せるレジェンドと生き続ける凡人

ソニーミュージックがイギリスのロックバンドであるクイーンの楽曲権利を取得する交渉に入ったという記事を読みました。「ボヘミアンラプソディー」を含むクイーンの楽曲の権利を取得することで、総額10億ドル(約1600億円)の規模になる可能性があるそうです。

数年前にヒットした映画「ボヘミアンラプソディー」によって、最近の若い年代の人も既にご存じかもしれませんが、ボーカルのフレディ・マーキュリーは1991年にエイズにより死去しています。

僕が幼少期の頃に亡くなっているので、クイーンを知った時は既にフレディがこの世にいなかったので、亡くなったスーパースターとして認知していました。

僕は学生の頃にクイーンの魅力を知り、ベストアルバムから聞き始めてそのまま全アルバムをファーストから順次聞いていき、ライブDVDも全て集め、繰り返し鑑賞していたのを今でも覚えています。やはりウェンブリースタジアムでのライブと映画「ボヘミアンラプソディー」でもメインに取り上げられているライブエイドでのライブが一番のお気に入りでした。

これほど凄まじいライブが存在するのならば、いつか実際にライブに行ってみたいと何度も思いましたが、フレディが既に亡くなっているという事実から、その夢は叶うことはありませんでした。しかし一方で、その事実は辛くとも、反対にその「叶わぬ夢である」という事実が、クイーンの曲をより魅力に感じさせたようにも思います。

こういった経緯でクイーンのファンになったこともあり、フレディが亡くなった当時、世界ではどの様な反響があったのかを調べてみたところ、やはり世界的な大ニュースであったことがわかりました。

そして、クイーンのライブに行くことを「叶わぬ夢」と感じ、フレディを神格化して見なしていた僕と同様に、フレディは世界中で死して尚人気が高まっていったことが見て取れます。

フレディの死が、クイーンの人気をさらに高めたともいわれている。1980年代に、クイーンが遅れて人気となったアメリカでは、彼の死後の1992年に、アルバム販売数が劇的に増えた[56]。1992年には、アメリカの批評家の一人が「冷笑家が『死去したスター』と呼ぶ効果が出た。クイーンは復活している途中だ」と語った[57]。また、「ボヘミアン・ラプソディ」が使用された映画「ウェインズ・ワールド」は、1992年に発表された。アメリカレコード協会によると、クイーンのアルバムは、アメリカで7810万枚売れ、これらのうちのおよそ半分は、フレディが1991年に死去してから売り上げた[58]

フレディ・マーキュリー wikipediaから引用

この様に、現役で活躍をし続けているアーティストは、亡くなってしまうことで却って伝説の様になることが起こり得ます。死することで神格化するのです。

もちろん、ファンにとっては生き続けて欲しいですが、「叶わぬ夢」となることが却って生前の映像や音楽を美しく昇華させるようになります。

人は誰もが老いていくものであり、容姿も若い頃より衰えてみえるのが一般的です。その様に衰えていく先を周囲に見せることなく伝説として亡くなるのは、どの様な気持ちなのでしょうか。

クイーンが活躍するより少し前の1960年代に「Don't trust over 30」という言葉が流行ったことがあります。「30歳以上は信じるな」という意味で、若くして死ぬことが美徳とされていたのです。

当時は、かつて世の中を支配していた世代に対してのカウンターカルチャーが花開いたばかりで、若者が愛と平和を歌うことで社会に変革を起こしていた真っ最中でした。そんななか、ロックスターの多くが薬物やアルコールの過剰摂取で27歳に亡くなってしまうことが多く、亡くなった彼らは伝説として神格化されていきました。

こういった死せるレジェンドの美しい姿を観ていると、世の中に大きな影響を与えることなく会社員としてただただ年を重ねていってしまう自分の生き方に疑問を感じてしまうことがあります。このまま老いていくよりは元気で若さが残っているうちに亡くなって、周囲の記憶には美しく留まり続ける方が良いのではないかと。

しかし、それは美しい死せるレジェンドばかりを観て感じている生存者バイアスに過ぎません(死せるレジェンドが対象だからこの場合に限っては死者バイアスと呼ぶべきかもしれない)

実際には現在も生き続けているレジェンドは多くいます。未だ現役で活き活きと、そして美しく生きている人は多く存在するのです。クイーンのギタリストであるブライアン・メイは、まさにそれにあたります。

今年の2月、ボーカルにアダムランパードを加えたクイーンのメンバーが来日を果たしました。

ブライアンメイはこの時76歳ですが、往年のギタープレイは健在で今も現役のレジェンドとして活躍していたようです。見た目こそ老いていますが、白髪は威厳を出すこととなり、若い頃とは違ったカッコよさがあります。

やはり、どうせなら長く生き続けたうえで、世の中に影響を与え続けることに最も強い憧れを抱きます。

一時的に伝説となって世の中に強烈なインパクトを与える人もいれば、長きに渡り信頼を勝ち得続けて、世間に影響を与えている人もいます。

自分が生きていくのであれば、どのように生きていきたいでしょうか。僕にとっては、やはり人生は一度切りなのだから、長く生き続けて少しでも世の中に影響を与え続けていきたいと思っています。

みなさんはいかがでしょうか?

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