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美味しそうな写真の本質|事実で美味しさを担保する

僕はインスタグラムをやったことがなく、Facebookも数年前から放置してしまっているため、いわゆる「インスタ映え」の潮流に対して著しく疎いです。

そのため、食事に行った時に出てくる料理を美味しそうに撮影する習慣もあまりありません。思い出として撮影することはあっても、みんなに伝えるために拡散することがないのです。

ただ、そんな僕でも過去に撮影した美味しそうな写真を人に見せびらかす機会はあり、飲み会などでスマホを直接見せて共有することは多くあります。SNSは利用しなくとも「他者にその美味しさを伝えたい」という気持ちは持っているのです。

この前ビールを飲んでいた時に見た目から美味しそうだったので手元のスマホで撮影したのですが、あまりにも当たり前の光景だったので、何度録り直してみても大した写真に仕上がりませんでした。

その時に「美味しそうな写真」とは一体何なのかを深く考え直すこととなり、過去に撮っていた写真を振り返っていたところ、美味しそうな写真をいくつか掘り返すことができました。

当時の僕が「この美味しさをどうにかして伝えたい」と思っていたのは、ミャンマーに旅行に行った時に飲んだビールです。その名を「ミャンマービール」と言います。

旅行に行ったのは2018年のことで、生ジョッキで注文すると現地通貨で800チャット、現在の為替だと60円程度という安さでした。(何故か瓶ビールで買うと2,000チャットと割高になる)

このミャンマービールは日本人が飲み慣れたラガービールであり、日本人からすると正統派の味わいがする非常に美味しいビールだったのです。東南アジアの灼熱な気候と激安な価格も手伝って、ゴクゴクとミャンマービールを飲みまくっていたことを覚えています。

そのミャンマービールがいかに美味しいかを誰かに伝えたく、注文する度にカメラを向けて、ピントを合わせながら絞りを利かせ、美味しさを引き立たせようとトライアンドエラーを重ねていきました。

その当時のミャンマービールの写真がこちらです。

こちらは生ビールで注文したもの。800チャットくらい。


こちらは瓶ビールで注文したもの。2000チャットくらい。

これを美味しそうに思ってくれる方がいれば嬉しい限りですが、良いカメラをもっているわけでもなく、カメラにこだわった経験があるわけでもない僕にはこれが限界でした。

個人的には、ミャンマービールは画像に写っている以上の美味しさを秘めている。そう思っていたので、もっと美味しさが伝わる方法はないか、頭を使って考え続けていました。現地は高温多湿で汗がとめどなく流れ、その環境でキンキンに冷えたラガービールを飲む爽快感も、画像だけでは伝え切ることができません。

そこで、ミャンマービールを「飲み切った事実」を写真で示せば、美味しさを担保できるのではないかと思いつきます。どんなに見た目が美味しそうでも、高精度な加工ができる現代において、説得力を付与するほどの見た目を再現するのは困難に思えたのです。

そこで、撮影した写真がこちらです。

あまりにも美味しかったので立て続けに5杯目を注文した時に、飲みほしたジョッキを横に並べて撮影したものです。

これであれば、ひとつひとつの被写体の美しさではなく「5杯目を注文した」という事実によって、それだけ飲んでしまう美味しさを伝えることができるようになります。

高精度なカメラを持たず、撮影技術やセンスも持ち合わせていないながらも、事実で美味しさを担保する方法だったら、充分に美味しさを伝えることができるのではないかと思います。

画像がネット上に大量投稿されている時代において「美味しそうな写真の本質」は考えておいても損はないはずです。

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