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管理ディストピア(前編)

 妻の真帆と言い争いが起こる事は、かつて包家の最大の禁忌であった。しかし冷戦時代のイデオロギーの衝突の如く、家内戦が勃発し、洋三はあっという間に敗戦へと追い込まれた。後に言う一時間戦争である。世界の中学受験問題に対し、真帆陣営は早期の受験教育が息子の将来につながると主張した。がちがちに管理しないと、この年頃の男子は必ず墜落するのよ。それを心を鬼にして親が堕ち行く子供を引き上げないと駄目に決まってるじゃない。それに将来あの子が何かに成ろうとした時、その可能性や選択肢を拡げる為にも、面倒見の良い学校に入れてあげないと。貴方の時代と違って、高校から名門校に入るのがどれだけ大変か知ってる?そして最近の大学は一般入試なんかで中々入れないのよ。世界の為なのよ。
 それに対して私の武器は、「なんか可哀そうじゃないかな」のみであり、太刀打ち出来る筈も無かった。その後、小学校生活を早めに切り上げるかのように三年が過ぎ、世界は名門中学に入学を果たしたのだった。


〈掲載…2019年8月26日 週刊粧業〉

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