管理ディストピア(後編)
世界が中高一貫校に通うようになって半年が過ぎ、若干十三歳の少年が泥酔いするサラリーマンと共に電車から吐き出される事に慣れた頃だった。夜遅くになって帰宅し、更に自宅で課題に向き合わなければならない少年が、学習机に顔を向けて俯かざるを得ない姿を複雑な心境で視ていた。以前、休憩している世界のノートをチェックした際に、余りに整然と解答している事を訝しんで問い詰めてしまった。模範解答を観てノートを埋め合わせるしかない少年。気が付かなければ善かった。全ては将来、難関大学に合格する為の苦行ではあるにしても、彼の年齢でしか得る事の出来ない大切な時を棄てさせられて、自ら牢獄に戻り、自分で鍵をして、その鍵を渡すことを強いる親という名の看守。世間では働き方改革が叫ばれて久しいが、未だに大企業を中心とした勝ち組が労働環境を改善しているに過ぎない。そしてその勝ち組に加わろうとする為の免罪符は、一度牢獄に入る事でしか得る事が出来ないかの様に思える。世界の本音はこうだろうなと想う、皮肉はもう充分だと。
〈掲載…2019年10月7日 週刊粧業〉
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