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アフターコロナの教育とLX(Learning Experience)

コロナウイルスの影響で弊社含め、教育業界にも様々な変化が強いられています。そんな折、このコロナ時代の学校の変化をふまえて「アフターコロナの教育」についてツイートしたところ、大きな反応を頂いたので記事化することにしました。

要約

結構長くなってしまったので、3行でまとめると
・リアルの学校でなくても学べるというタブーが明白に。
・大事なのはオンラインかリアルではなくLXの良し悪し。
・アフターコロナの教育はLXの観点から再構築される。

って話です。
※後日談として本記事が元になり、NewsPicksでも記事化頂きました。


長期の休校が教育のオンライン化を一気に進めた

アフターコロナを語る前に、この2ヶ月の出来事を軽く振り返ります。

コロナウイルスの影響で、2/27に政府から全国一斉休校要請が出されました。そして、3/25に小池都知事からの自粛要請会見。そして、4/7には安倍首相から5/6までの緊急事態宣言が出されました。
春休み期間も含めて、多くの学校では3/2以降、2ヶ月以上の長期休校が確定。学習塾やプログラミングスクールも同様に開校自粛の中にあります。

そんな中、子どもたちへの学びを届けようと、リアル(集合型)ではなく、オンライン(非集合型)で教育を届けようとする動きが一気に加速しました。

公立学校では熊本市の動きが目立ちました。タブレットを使ったオンライン授業を早くから実施、4/15からは全小中学校でオンライン授業を実施。タブレットやPC環境がない家庭にはLTE対応端末の貸出もしています。


私立学校では武蔵野大学中高が早々と授業を全てオンライン化。
同校の日野田校長の発信によれば、

 ・オンラインコンテンツは、「スタディサプリ」
 ・ポートフォリオ・連絡は、「Classi」
 ・提出・共有は、     「ロイロノート」
 ・質問や朝礼・終礼は、  「ZOOM」
 ・その他は、       「Google コンテンツ」

と様々なツール・コンテンツの強みを組み合わせ完全オンラインの授業を実現しています。

ちなみに、弊社も学校の授業用にオンラインでプログラミングを学べる教材 Life is Tech ! Lesson のご提供を行ったり、一部の学校の授業にはZOOMを使った遠隔授業サポートも行っています。
また、学校外の講座ですが、通塾型のスクールや短期開催のキャンプも全面的にオンラインに切り替えしてリスタートしています。この記事のトップの写真(VRツールのclusterを使ってスクールのエンディングを行っているシーン)もその一場面です。弊社の取り組みはまた別で詳しく書きますので、今回は割愛します。


いくつかの事例をピックアップしましたが、実際、いきなりこのようなオンラインでの学びを構築するのは簡単ではありません。学校・家庭双方の機材・ネットの問題がありますし、そもそも授業の前に生徒・児童と連絡が取れる状態を作るところがスタートです。
なので、全国でオンライン化が一律で実現されたという状況では全くない点には留意しておきたいところです。

ただ、この2ヶ月で教育の世界で、初めて真にICT、そしてオンライン教育の必要性が理解されたことは確かです。全国の学校・教委・文科省・民間事業者も、みんなが一斉にオンラインでの学び実現に動くなんて、2ヶ月前には想像すらしていませんでした。

アフターコロナの教育を語る前提となる2つのタブー

さて、そんなコロナ対応佳境の中ではありますが、ここからは少し先の話をしていきます。この大きな変化を経て、

「アフターコロナの教育」(あるいは「ポストコロナの教育」)

はどうなっていくのだろうという話です。
特にアフターコロナの学校がどうなるのかは非常に興味深いテーマです。
そのことについて論じる上で前提となる2つのタブーは、

①実は、学校じゃなくても学べる
②実は、オンラインで済む

というこれまでなんとなくみんなそう思ってきたけど、明確にはなっていなかった2つの事実、あえて言えば「タブー」が白日のもとに晒されたことです。

①は以前から、特に1970年代頃のイリイチやフレイレ、あとはカール・べライターなどの脱学校論で論じられてきたことでした。ただし、世界的に学校に行けなくなるという状況は戦時中を除くと近代では初めてのことですから、脱学校論がこれほど大きな社会実証に晒されるのも初でしょう。

また、②についても、90年代以降、インターネットの普及に伴い様々に論じられてきました。N校などの通信制の学校ではすでに実現できていることですが、全ての学校がオンライン化の必要性に立たされたのは少なくとも日本では史上初です。

「学校じゃなくても学べるし、オンラインで済む」

この考えが正しかった場合、これから学校に毎日行く必要はないし、リアルで会う必要もなくなります。そうすると、先生はこんなにたくさんいらないし、学校の必要数も減るでしょう。この事実が社会で広く共有されることは、リアルの学校の存在意義が揺るがされる。だからダブーなのです。


ただ、本当にそうなのでしょうか?
そして、オンラインの学びはそんなに完璧なのでしょうか?

オンラインに浸かったからこそ見えたリアルの価値

弊社もこの2ヶ月、オンラインでの学びの構築にどっぷり浸かったことで、リアルの価値が際立つ部分があることも見えてきました。例えば、

・初期の関係構築
・感情(エモさ)の共有や往来
・ライブ感ある演出やセッション
・チームを頻繁に入れ替える対話や創作
・大きな動作をともなう活動
・開発画面など同じものを見ての即時フィードバック

とかはやっぱり集まってリアルでやる方が良い。今のオンラインツールだけでは限界があります。

ちなみにこのような感覚を持ったのは、ライフイズテックが学びの中で「人と人のインタラクション(相互作用)」を重視しているからだと考えています。インタラクションを含む学習体験に関しては、オンラインだとリアルと比べて情報量や同期性が失われ、体験の質が劣ります。
かたや、一方向的な情報伝達だけであれば、オンラインの動画や文字情報だけで済みますから、大きな違いは感じなかったかもしれません。

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写真は2019年12月に開催した弊社クリスマスキャンプより。こういう風景がしばらく見れないのは非常にしんどい・・・

また、学校に目を移した場合、学校というリアルな場に集まること自体に大きな意味があったことも再認識されています。

・友達と同じ場所で一緒に時間を過ごせること
・家庭以外に居場所があることでのセーフティネット
・毎日対面で会うことで健康状態を確認できること
・給食による食生活の担保
・ICT環境がない子たちの下支え(PC・ネット・プリンターなど)
・(親の視点から)子どもを日中預かってくれる場所があること

などなど。

私はコロナ時代にオンライン化が進んでも、リアルの価値は変わらず残り続けると考えています。なので、アフターコロナの教育に起こる変化は、リアルの教育が無くなるというような単純な話ではありません。

アフターコロナの教育を考えるための「LX」という観点

アフターコロナの教育を考える上で、重要となる観点はずばり、LX(Learning Experience)という概念です。

webやアプリのサービス設計において、UX(User Experience)という概念が重要視されて久しいわけですが、その学習版がLX(Learning Experience)です。ライフイズテックではリアル・オンライン問わず、全ての学習サービスでLXを大切にしています。

学習の内容や方法を個別で見るのではなく、目的や対象に応じた「学習体験」として総体的に捉える観点を与えてくれるのがLXです。
例えば、「これまでの授業スタイルで、生徒にとって本当に良いLXが届けられていたか?」「より良いLXを実現するには、何をどう変えればいいのか?」などと考えていく観点になるわけです。
 
ちなみに、弊社の場合、イベントの注意点を伝えること1つとってもLXにこだわります。箇条書きの説明を読むだけでいいところを、笑える動画やアニメ、時には体操で伝えています(笑)意味不明だと思いますが、実はそこがライフイズテックのキャンプ初日においては、LX、特に学習共同体への円滑な参画を実現する上で大変重要だったりします。

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なお、上のシュールな写真を見てもらった後に急に真面目な話であれですが、LXは学術的にはインストラクショナルデザイン、カリキュラムデザイン、ワークショップ、学習共同体、学習環境デザインなどなど、学習科学や教育工学を中心にいくつかの分野で語られてきたことを内包しています。
ただ、それらを全て整理して語ると博士論文が書けるレベルになるので(震)、ここでは、学習体験を考える上で重要な観点とくらいに捉えておいてください。LXについてはまた別で詳しく論じたいと思います。

アフターコロナの教育で大事なことは?

さて、話を元に戻します。アフターコロナの教育の世界はどうなっているでしょうか?さっと浮かぶものだけでも、

・オンラインでの学びが生徒にとって特別なものではなくなっている。
・パソコンを一人一台持つことが学習権の保障上、前提とされる。
・上記の前提となる家庭のネット環境整備も必須になる。
・社会的にもオンラインでの学び・自宅学習への理解が高まる。
・結果的に、教員の仕事のICT化が進む。

あたりは確実でしょうね。
「環境整備そんなに早く進む?」と疑問の方もいるでしょうが、昨年度文科省が打ち出したGIGAスクール構想(パソコン一人一台政策)の前倒しも発表されておりまして、環境整備は驚異的な速さで進むはずです。ただし、このコロナの混乱でパソコンの生産・調達と現場の人員リソースがボトルネックになりそうですが。


さて、上記のような状況をまとめると、アフターコロナとビフォーコロナでは「全員がオンライン化を経験したこと」が大きな違いです。そして、その経験により「オンラインで何ができて、何ができないのか」が広くメタ認知されることで、リアルとオンラインの機能分担が再定義されます。

LX(Learning Experience)の観点で考えた時にも、
・リアルじゃないとできないこと
・リアル→オンラインで代替できること
・オンラインでないとできないこと
が今より明確に理解されているはずです。逆に言えば、その違いを理解して手段を選べないと、良きLXは実現できません。

正確な判断をする上で特に気をつけるべきは、本来、
リアルのLX>オンラインのLX
なのにも関わらず何かしらのバイアスで
リアルのLX<オンラインのLX
と考えてしまう危険があること。すごく簡単に言えば、

「オンラインやればOK」というのは違うってことです。

それは今のウィズコロナ時代もそうです。
今はスピードが求められるし、私も含めて試行錯誤の中ですが、その最中でも「このオンラインの学びは本当にLX良いかな?」、「LXをよくするためにもっとできることはないかな?」、「LXを考えたカリキュラムデザインとかメタ的な思考も再度やっておこう」など常々考えていたいと思います。

でないと、この数ヶ月かそれ以上になるかもしれないオンライン教育期間が苦痛になります。学校の一斉講義よりも堅くてつまらない授業動画や、じっと机に座って家で一人で配信型の授業を聞くだけってのはなかなかつらいです。

でも、結局これもオンライン教育の良し悪しの話ではなく、LXの良し悪しの話です。良いLXを実現している先生の授業を、生徒や学生が楽しく受けてる事例も沢山出てきています。逆に、厳しい言い方をすれば、LXが悪いオンラインの授業をやっているということは、元々のリアルの授業でもLXに対して無思考であった可能性が高いと思います。

まとめです。アフターコロナの教育、そして現在進行中のウィズコロナの教育において大事なことは

・無思考なオンライン礼賛は危ない。
・逆もしかりで、無思考なリアルへの帰依も危ない。
・リアルとオンラインの両方の選択肢を広く選べる時代になる。
・だからこそ判断はLXですべき。

ということです。これは学校でも、学外の学びの場も一緒です。

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写真は、2〜3月に行ったソニーさんとの中高生向けクリエイター育成プロジェクト「ENTERTAINMENT CAMP」の一場面。こちらでもLXにこだわりつつ、オンラインで領域横断の映像作品を作るPBLを行いました。

アフターコロナの教育はLXの観点から再構築される

ここまでで5000字超えてるので、ここまで読んで頂いた方には感謝しかないのですが、いよいよ最後の結論です。最後にお伝えしたいのは、

「アフターコロナの教育はLXの観点から再構築される」

ということです。

■アフターコロナ時代のリアルの教育
まず、リアルの教育は、オンラインの教育に対してLXでの優位性を持てないと存在意義が急速に薄れます。学校の場合、極論として、託児所&給食施設としての役割しか期待されなくなる可能性もあります。学校には行くけど、質の良いオンライン授業動画を教室で見るというスタイルも増えてくるでしょう。
また、塾やプログラミングスクールにしても、リアルで学んだ方がLXが良いと保護者・生徒に判断されなければ、オンライン化が進むでしょう。特に民間事業者の場合、オンラインの方が収益性は高まるので(コストが低減する)、オンライン化を進める動機が十分にあります。
逆に、弊社の話でも出したようにリアルの優位性が明らかになった部分もあり、リアルでしか得られない価値を求める生徒・保護者も多く出てきます。リアルだけの特別なLXを提供できる場には、コロナが落ち着いた後に必ず人が戻ってきます。他との違いが明確になり、生徒が増えるところもあるでしょう。

■アフターコロナ時代のオンラインの教育
アフターコロナの時代は、オンライン教育だったら何でも良いのかというとそうではありません。これまではオンラインの学校や塾が先行者利益を得ていた状態でしたが、コロナを機に新規参入者が増えますし、生徒・保護者も様々なオンラインサービスを経験した上で厳しい目をもってサービスを取捨選択するようになります。その中で勝ち残るサービスになるにはLXが重要です。それは様々なwebサービスでUXが重要視されているのと同じことで、何も特別なことではありません。
学校のオンライン教育は二極化します。コロナ期間中に、オンラインで良いLXを実現できた学校はリアルとオンラインを使い分けることで、学びの効率化と深化の両方を達成し、未来の学校へとアップデートを遂げます。一方で、この期間中にLXの悪いオンライン教育を続けた学校は、教員・生徒ともオンラインの学びを忌避するようになり、結果としてこれまでと変わらないリアル一辺倒かつLXが悪い教育を続けることになるでしょう。そういう学校にいる方(先生も保護者も生徒も)はまじで危機感を持った方がいいです。アフターコロナの時代の変化によって、明確な格差が生まれますから。

ということで、長くなりましたが、アフターコロナの教育をLXという観点から書いてみました。ただ、途中にもお伝えしましたが、これは未来の話ではなく、今現在も起こっている話です。

ウィズコロナの時代の今こそ、同じ教育と言っても、LXにより明確な差が生まれています。それは学校や塾などの教育提供者の未来を左右するだけならまだしも、その傘の下にいる子どもたちの未来をも大きく左右します。

だから、今一度、リアルかオンラインかの手法論ではなく、どんな状況においても子どもたちのLXを起点に学びを考え直しましょう。コロナの緊急事態だからと言ってそこから逃げてしまっては、より良い学びを届けることができなくなることを、我々教育関係者は(ひょっとしたら保護者としても)肝に銘じなければいけません。それは私自身もです。

あとがき

まず、むっちゃ長くなってすいませんm(_ _)m 
いろいろ考えが溢れすぎて、書き始めてから3週間ほどかかってしまったのですが、その3週間の間に教育業界や学校を取り巻く状況も毎日のように変化がありまして、この記事も増改築を繰り返す羽目になりました。これほど状況が変化することは過去に経験がないです。

この未来の見通しが立たない中でも、各学校・教委の関係者、課外の教育事業者の皆さんも、なんとか子どもたちの学びを止めず、より良いものにできないかと、それぞれに考え、行動しています。

学校の場合、外部にいる我々がおかしな教育に違和感を持つことは正直ありますし、適切な異論を唱えることは必要だと思っています。
ただ、学校を攻撃するような批判だけでは非生産的ですし、真正面から喧嘩するほどの余裕がある時期でもありません。助言やアドバイス、適切な情報提供をする、あるいは自分が当事者となって新しい学びの機会をつくるという行動を通して、その違和感を子どもたちの学びが良い方向に進むエネルギーに昇華させてください。正当な違和感や怒りは社会を良くする根源です。

最後になりましたが、アフターコロナの教育でも大事になるLXにこだわって、こだわって、こだわり過ぎて大変なことになっている(笑)、ライフイズテックのサービスをご紹介させてください。ともにオンラインですので、全国どこからでも学んでいただけます。テクノロジア魔法学校は無料体験もできますのでぜひ!そして、学校の先生は休校期間中のご支援もしているLife is Tech ! Lessonをご覧ください!


皆様、最後までお読みいただきありがとうございました!
「いいじゃん」とちょっとで思ったらぜひ、シェアお願いしますm(_ _)m

今後もコロナ時代の教育について、様々な角度から発信していきますので、フォローしていただけるとありがたいです!(完)

後日談

本記事を多くの方に読んで頂いたことがきっかけになり、NewsPicksでも記事を書かせて頂きました。見出しがやや煽り気味ですが、サムネイル画像の方にある「コロナ後の世界 教育で起こる 7つのシフト」の方が中身を一番表している、真のタイトルです。

ちなみに、この記事には続きがありました。3000字のオーダーに対して、12000字も書いてしまったからです(ひどい)
ものすごく端的に編集頂いたNewsPicksの皆様には感謝しかないのですが、その中で大きく割愛した「アフターコロナの教育のさらに先の話」がありますので、そのへんはまたどこかで記事化できればと思います。

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