AIは名建築をデザインできるか
こんにちは。santas代表の宮崎です。
今回の記事は、画像生成AIと建築デザインについてです。
建築業界でもAIの活用が急速に普及し始めています。最初はエンジニアリングでの使用が主で、利用者数を予測した空調制御や、構造設計で用いられていました。昨今ではChatGPTを筆頭にAGI(汎用型人工知能)に近いAIが公開され、エンジニアリング領域のみならず、デザイン領域においても活用方法が模索されています。
今回は注目されているAIの中から、画像生成AIのMidjourneyを使用して、建築家の言葉から建築(の画像)が生成できるか、実験的に試してみます。
検証する住宅=サヴォア邸
今回参考にさせて頂くのは、近代建築を代表する建築家であるル・コルビュジエのサヴォア邸です。この住宅はコルビュジエが提唱した近代建築の5原則を最も反映した建物として知られています。この言葉をベースに、サヴォア邸がデザインされるか検証していきます。
STEP1:近代建築の5原則を入力してみる
最初に、近代建築の5原則「ピロティ」「自由な平面」「自由な立面」「独立骨組みによる水平連続窓」「屋上庭園」と入力してみます。指示内容は以下の通りです。
結果、以下の画像が生成されました。確かに近代建築の5原則は含まれていますが、何故か集合住宅なのと、建物の形状が異なりすぎているので、次は形状を指定してみます。
STEP2:サヴォア邸の特徴を入力してみる
次は、近代建築の5原則に加えて、サヴォア邸の特徴である「白い建物」「四角いボリューム」「住宅」「2階建て」を加えて入力してみます。指示内容は以下の通りです。
結果、以下の画像が生成されました。近づいている様な近づいていない様な。。後、何故か植物が沢山描かれています。
STEP3:時代背景を入力してみる
最後に、サヴォア邸が建てられた「1930年」「フランス」「モダニズム建築」と、「植物は少なめで」を加えて入力してみます。指示内容は以下の通りです。
結果、以下の画像が生成されました。残念ながらサヴォア邸とは似ても似つかない建物となりましたが、街中で見かけそうなデザインになってきたのは興味深い結果です。
検証結果:名建築は再現できないが、模範することで新しいデザインは生まれそう
ここまで、コルビュジエの言葉をベースにサヴォア邸をデザインできるか試してきました。結果として、おそらくこのまま細かな指示や優先順位を与えていけばそれなりに出来る気はします。但し、そもそも私がサヴォア邸を知っており、そのデザインに近づけるための指示を出し続けているため、正確には「AIは名建築をデザインするのではなく、再現できる」ということになります。
一方で、その過程で生成されたたくさんの画像は、別の建築デザインを考える上で非常に参考になると思いました。デザインは過去の模範から生まれることは往々にしてあるので、デザイン手法としてのAIの活用は大いにありえると思いました。その意味では「AIは建築家/デザイナーと競合することで名建築を生む」可能性は大いにありえるでしょう。コンセプトデザインだけで
あれば、AIは例えばファッションデザイナーが建物をデザインするための強力なツールになると思います。
余談:もしコルビュジエが2023年にサヴォア邸をデザインしたら?
以下の画像が生成されました。正解かどうかは、コルビュジエのみが知るといったところでしょうか。
■筆者
宮﨑 敦史 / Atsushi Miyazaki
慶應義塾大学大学院修了後、Speac、日建設計、Arupを経て2022年にsantas Inc.を設立。「クリエイティブ」「マネジメント」をコアスキルとして、主に建築・都市における企画、設計、プロジェクトマネジメント業務に従事。さらに、コミュニティ・エンゲージメント活動、環境建築に関する書籍の出版など、幅広く活動中。様々な専門家と協働し、社会に新しい価値を生み出すことを信念としている。
https://santas-inc.jp/
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