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楽天市場の送料無料施策は不可避

少し前の記事になりますが、今後楽天市場で3,980円以上を購入すると、一律で送料を無料にするという施策を、楽天が発表しましたよね。直近の報道を見てると、3月くらいから楽天で一定額を購入すると、送料が無料になるようです。ところがこれが様々な波紋を呼んでいるようで・・・。


何が起こっているのか

日本のEC市場では王者として君臨してきた楽天ですが、ここ最近ではAmazonが猛烈な勢いで楽天市場を追撃してきており、仁義なき戦いが繰り広げられております。
今回の施策は「プライム会員なら送料が無料」となるAmazonを強く意識したものであることは間違いでしょう。

ちなみに、ここ直近のデータではすでにAmazonは楽天を抜き去っており、もはやAmazon追撃という言葉適当では無いかもしれません・・・。え、楽天っていつのまにか抜かれてるの・・?(知らなかった・・)


一方で、この送料無料とする施策ですが、この送料の負担を「楽天は負担をせず出店者に課す」という内容になっているため、出店者たちは激しく反発しています。

公正取引委員会なども横からチャチャを入れる騒動になっていて、未だに鎮火する気配がありません。

出店者の皆様からすれば「こんなことをすれば、出店者の負担が増えて、出店し続けることができない」ということでしょうし、「決めるのなら楽天も費用の一部を負担してくださいよ」というのが偽らざる本音でしょう。

実際、各報道を見ていると、なんとなく「大企業の楽天が、小規模の出店事業者をいじめている」というような構図になっていますが、実態としてはどうなのでしょうか。


楽天市場・楽天グループが置かれた厳しい現状

まず前提として、「楽天はそんなに儲かっているのか」という点です。

直近の決算資料(2019年Q3)を見てみましょう。

まず楽天市場が戦場としている国内EC市場の2018年Q3→2019年Q3を比較すると

売上 1,020億→1,274億(+24.6%)
営業利益 153億→151億(-1.5%)

となっています。売上は増えていますが、収益はむしろ減るという、なかなかしんどい状況ですね。収益力は確実に下がってきています。

ECは、Amazonの他にもZOZOを取り込んだYahoo Japan、急成長のメルカリなど、新興勢力も活発なマーケットです。今後も「楽天市場が勝ち続ける」と言いきれる状況では全くありません。


楽天全体を見ても、他に楽天カードや楽天銀行などを始めとするフィンテックセグメント(金融事業)が利益(165億)を上げている一方で、現在苦戦しているモバイルセグメント(携帯電話)事業で大きくマイナス(-145億)を出しており、2019年Q3はIFRS営業利益ではなんと11億でギリギリ黒字といった状況です。

携帯事業などで先行投資がかさんでいるとはいえ、全体的に余裕がある状態ではないといえます。


敗走続く日本IT勢

過去を振り返ってみると、国内ITビジネスというのは、「日本の市場である程度ビジネスを広げた頃に、海外から巨大企業が乗り込んできて力負けする」というケースの繰り返しです。SNSではFacebookに敗れ去ったmixi、動画配信ではYoutubeに対して劣勢を強いられているニコニコ動画、携帯アプリではAppleに一掃されたドコモのi-modeなど、例を上げればキリがありません。

その原因は個別にはそれぞれあるにせよ、大まかに言えば「日本人ばかりを相手にして儲かってるぜと安心してたら、海外で力をつけた巨人が乗り込んできて、その巨人が強すぎて力負けしている」という状況です。
その点でいうと、海外に収益源をほぼ持たない楽天のEC事業は全く同じ状況と言えるわけです。

GAFAの一角である、巨人Amazonを相手に激闘を繰り広げている楽天市場は、幸いにも日本におけるEC市場では先行していたこともあり、他のITビジネスに比べれば比較的健闘してると言えます。とはいえ、すでにAmazonに逆転を許している状況なわけで、今後も楽観視出来る状況では無いのも事実です。


ついてこられる出店者だけで良いと考える楽天

もともと、楽天市場は、日本を相手にしたビジネスであり、顧客は全部かきつつあつめても日本人である1億人強しかいません。対して、10億人以上がいる中国市場のアリババ、世界中に顧客を持ち、有料プライム会員だけで世界1億人以上いるAmazonとの体力差は歴然です。

今回の「3,980円以上は送料無料」の施策についても、出店者の事情などにもっと配慮が必要なのではないか、という意見が挙がっていますが、楽天の立場にたてば「そんな声にかまっていられる状況ではない」というのが実情だと考えられます。

楽天とすれば、今後もユーザーをAmazonに持っていかれないための施策を打ち続けなければなりません。つまり、今回の「送料無料の施策」は単なる通過点にすぎず、今後も「ついてこられない出店者は退去してもらって結構」という流れは続いていくと思います。

もちろん出店しておられる皆様にとっては、今回の施策が自らの生活に関わる死活問題ではあるので、勘弁して欲しいということだと思いますが、楽天がなんとかしてくれるわけではないでしょうから、何らかの対策を早く練っていくしかなさそうです。


既存の日本マーケットを守りきれるのか。それとも、他のITビジネスのようにGAFAに屈するのか。楽天の今後の動きにも、引き続き注目をしていきたいところです。

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