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「同級生」は必要か。十勝の田舎に移住、「複式学級」を体験して思うこと

4月から、山村留学で子供たちと十勝の小さな村に移住している。
学校は全校生徒20名!
そして、なんと、2年生の息子には同級生がいない。
都会のマンモス校で1年学んだ後の、まさかの同級生なし「1人で2年生」。

先日参観と懇談があり、学校の様子について思ったことをまとめてみた。

同級生がいない「1人きり学年」

もともと、昨年学校を見学しにきた当時も、1年生はいなかった。

「同じタイミングで山村留学を検討している家庭で1年生がいる」、という話を聞いていたので、まあ2人だけなのだろうと覚悟はしていた。

けど、どうやらそこは申込しなかったようだ。山村留学合格が正式に決まった後に、1人学年、ということを知る。

息子は結構気が優しいところがあるため、直前まで本人には話さないことにしていたが、さて、いよいよ「1人」と聞いた時、いつもポーカーフェイスな彼の顔がさすがに曇ったような気がする。
そりゃそうだろう。

元の小学校は、マンションが増加中の駅近エリアで、各学年、ひとクラス33人のクラスが5クラスも編成されるマンモス校だ。
同学年で知らない子がほとんどという感じ。
そんなところで1年生を過ごしたのだから、ギャップは大きいに違いない。

複式学級ってどうなってる?

息子のクラスは、1年生3人と彼で、4人からなる。先生は1人。
複式学級の授業では、前と後ろにそれぞれ黒板があって、先生は同じ時間内に、1年生の分と2年生の分を順番に教えていく。
4人のクラスながら、教室も少し小さめになっているので、サイズ的にはスカスカということもなく、ちょうど良く感じた。

参観日にみてみると意外にちゃんと授業を受けていて安心したが、初日などは不安になった。
なんせ毎日持って帰ってくるプリントが「迷路」だった。

迷路とは、
スタートからゴールまで道をたどる、あの「迷路」である。
ある時はくまだったり、コアラだったり、象だったりするのだけど、とにかく迷路のプリントだ。

2年生が毎日学校で迷路やってると思うと、大丈夫か、との思いは強かった。
1年生に逆戻りしてしまったか?と焦る。
本人は、とても楽しそうにしている。

複式学級のメリットデメリット

結局、迷路は1年生のアイスブレイク的なこともかねて、余り時間にご褒美的にやっているものらしく、そこまで心配する必要はなかった。

とはいえ、下の学年と同じとなると、「少し進みがゆっくり」というデメリットはあるのかもしれないと思う。同級生がたくさんいたマンモス校に比べて、様々な刺激を受けられない、というデメリットもあるかもしれない。

それ以上に、上回るメリットがあるか?

答えは、「ある」。

今回の参観で、少人数ゆえのメリット、1人学年ゆえのメリットがあることを、しっかり発見できた。

息子が授業中に生き生きとしていた。
ちゃんと先生と会話している。

もともと、気持ちが優しく、11月と生まれが遅めでマイペースな息子。
元いた学校では授業で手を挙げることもせず、暇そうにしていた。
テストでは100点をとることもあったから、遅れているわけではなかったが、特段参加意欲があるわけではなく、参観時にはつまらなそうにしている姿をよく見た。

ところが、
4人クラスでは、否応なく当たる。
2年生はどう?と聞かれると、自分が答えるしかないし、
とにかく、毎日の授業が全て自分参加型。
話を聞いて終わり、ノートをとって終わり、の授業は一切なく
クラスは発表形式で全員前に出るのが基本となる。
全員が参加しないと授業が成り立たないので、退屈しているひまなどない。
自分の言葉で発表する機会が「全員」に「毎日」ある。

1年生と一緒になって、進みが遅いのではという不安は、するりとどこかに消えた。
むしろ下の子のお手本となるようにという気概が生まれている気がする。
のびのびと発表しているし、
掃除や給食などでリーダーシップを発揮しているらしい。

あの彼が。と思う。
休み時間は1年生たちと仲良く遊べるようになったらしい。

聞けば、5月生まれの1年生もいるらしく、うちの子は11月生まれだから、ほぼ半年違いだ。
これまでのように同級生の5月生まれ、いわば自分より半年早く生まれた子と一緒に学ぶのと、ひとつ下の学年の自分より半年ほど後に生まれた子と学ぶのと、いずれも同じ、「生まれの半年違い」。
でも、自分が前を行ってるか後を行ってるかで立ち位置は違う。
どちらの立ち位置で輝けるか、も、その子によって違うのだろうけど、うちの息子は立ち位置が変わったことで、生き生きとしているように見える。

「同級生」は、4月2日生まれ~翌4月1日生まれまで という役所が区切った期間の中でたまたま同じになった子というだけ、という当たり前のことを改めて認識する。
同級生と学ぶ、ということ自体に、よく考えたらあまり意味などないのかもしれない。

マンモス校と複式学級の両方を経験すると


ここまでくると複式学級が良い!という意見に見えるかもしれないけど、
わたしは、ぜひ、両方経験することをおすすめする。

2つの全く違う経験は、いろいろな価値感をくれると思う。
同学年同級生が、150人規模でいるという圧倒的なスケールのマンモス校には
優秀な子もいれば、いじめっ子だっている。
こんな子もいるんだ!っていう刺激もあれば、悲しい思いだってすることもある。
ある程度マニュアルでどんどん進む授業にだって、ついていかなきゃいけない。
毎年のクラス替えでは、ほぼ8割くらい「全く知らない子」との関係づくりとなる。
色々もまれるからたくましく、社会性は育つと思う。

一方、全校生みんな知り合い、という小規模校の安心感。
精神的安心感の中で、自分の意見を毎日表明する訓練ができるし、
参加型のカリキュラムは「自分がやった」という自信も積み上げてくれる。
複式学級で学年を超えて一緒に学ぶ経験で、新しい価値観をくれるだろう。
人数が少ないからできない、という制限の中で工夫もある。
自信や自己肯定感をよりいっそう育てられると思う。

どちらも、一方しか知らなければメリットを当たり前と思いデメリットを気にしてしまうこともあるが、
両方を経験することで、2つの経験が100倍の価値を生むのじゃないかと思う。

その意味で、「山村留学」という短期移住型で環境を変えることはひとつのやり方だ。
「同級生がいない経験」をしたければ、1年間田舎の村の学校で学んでみよう。
ちなみにだいたい各学年2人くらいはいたので、村の子でも「同級生がいない経験」ができるのは稀。息子はかなり貴重な経験をさせてもらっているようだ。ありがたいと思うことにしよう!

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