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日本全国交通事故マップ(2019年〜2022年) with 円グラフ で地域の特徴と危険な場所を知る

はじめに

警察庁がオープンデータとして公開している交通事故統計情報では、2019年以降に起きた交通事故の場所や状況が網羅的に記録されています。このデータを加工して、下記のウェブ地図を作成しました。

今回はこのウェブ地図から見えてきたことをいくつか紹介します。

ウェブ地図の見方

マップを開くと、下図のように数値と円グラフが表示されます。
これは、交通事故発生箇所を特定範囲ごとに集計して、件数を数値で示し、そのうち「歩行者と車による事故の割合」等の各種比率を円グラフで示したものです。

交通事故発生箇所と比率のマップ(首都圏)

東京都及びその周辺市は、事故件数が非常に多く、2019年〜2022年の間に18万件以上の事故が発生しています。
そのうち、「車と歩行者の衝突事故比率」を円グラフから読み取ると、約16%(6分の1程度)が該当するようです。実際に元データから東京都のみを抽出して手計算すると16.3%だったので円グラフの見た目と一致しています。なお、参考までに全国平均を手計算したところ約12%(8分の1程度)でした。

上記の図の範囲内だと、群馬や長野、甲府など首都圏から離れるにつれて、歩行者関連事故の比率が下がります。長距離の通過交通、人口密度や生活様式の違いを鑑みると、納得感のある結果かと思います。

円グラフはマップ移動やズームをするたびに再集計されて書き変わりますので、気になる箇所があれば、そこを拡大していくと更に詳細な情報をご覧いただけます。
そして、ローカルレベルまで拡大すると、一件ずつ「どこでどんな事故がいつ起きたのか」という内容を確認できます

ケーススタディ

東京郊外で歩行者関連事故が多い場所を知る

東京郊外に注目すると、神奈川県の横須賀や千葉県の勝浦あたりの円グラフの比率がやや高めに見えます。特に、勝浦は4分の1程度が歩行者関連事故となっています。
確認のため、先ほどのウェブ地図をもう少しズームしてみましょう。

交通事故発生箇所と比率のマップ(横須賀周辺と千葉房総地域)

こうしてみると、横須賀はやや高めですが、横浜市やその周辺も20%くらいはあるので、これは人口密度や都市型の生活様式の結果の範疇と考えられそうです。
一方で、勝浦市は歩行者関連事故の比率が25%ほどあり、千葉県南部の中ではかなり高めに見えます。ここをさらに拡大してみます。

交通事故発生箇所と比率のマップ(勝浦市周辺)

勝浦市周辺が見えるレベルまで拡大しました。こうしてみると、やはり勝浦に近づくに連れて歩行者関連の事故率が25%程度まで上がっています。事故件数も一定数あるので、偶然ではなさそうです。

勝浦市だけでなく隣の御宿町なども比率が高めで、このエリア一帯はサーフィンや海水浴スポットとして有名なので、仮説として「行楽で遠方から来た自動車と地元民との事故」または「行楽で来た人が歩行中に地元民の車と衝突した事故」のいずれかと考えています。

自分が住む場所周辺の危険箇所を知る

このウェブ地図の最もシンプルかつ身近な使い方としては、やはり「自分の生活圏で危険な箇所を知る」という目的かと思います。

そのため、このウェブ地図の画面右上にはいくつか基本的な機能をつけています。そのうちの一つが「現在地取得」ボタンです。
ここをクリックすると、デバイスの現在位置を確認して、そこに移動することができます。
なお、こちら側でユーザーの位置情報等を取得することは一切ないのでご安心ください。

交通事故発生箇所と比率のマップ(現在地取得)

現在地を取得すると、ウェブ地図はローカルレベルまでズームされた状態で表示されます。
ここまで拡大すると、情報は円グラフではなく個別の事故内容までピンポイントで把握できる仕様になっています。
赤枠の丸で示された点をクリックすると、下記のように一件ずつ、事故の内容を確認することができます。

交通事故発生箇所と比率のマップ(内容確認)

このように、現在お住まいの地域を拡大して見た際に、単純に点が複数集まっている場所は事故が過去数年で多発しており、何らかの対策が必要な箇所と言えるでしょう。
さらに、直近1、2年で件数が増えている傾向にあれば、その場所はうまく対策がとれていない可能性があります。
特に、赤塗りの丸で示したところは死亡事故が起きた地点であり、それを無下にしないためにも、明確な対策を取るべきと言えます。(上図の箇所も、実際にその後信号機が設置されました。)

もし、交通事故が多い危険な箇所で対策がとられていない場合は、警察だけでなく、地元の市議会議員さんに掛け合ってみると動きが早いと思います。

集計情報を切り替えてみる

今回作成したウェブ地図は、ご紹介した以外にも下記の通り何種類か用意しています。

  • 歩行者が関連した比率

  • 夜間の事故比率

  • 65歳以上が関連した比率

  • 死亡事故の比率

参考までに、各種円グラフの結果を日本全国のズームレベルで示します。
画面内に収まるように、地図自体をドラッグして少し傾けてみました。こうしたインタラクティブな表示の仕方もウェブ地図ならではのメリットです。

歩行者が関連した比率

今回メインでご紹介したもので、「歩行者と車との事故」の件数比率を示します。「歩行者が巻き込まれた比率」と大まかに捉えても良いです。(元データの性質上、厳密には異なります)
東京周辺が16%程度でやや高め、その他の地域は多くて12%程度で、若干の地域差が見受けられます。

交通事故発生箇所と比率のマップ(歩行者が関連した比率)

夜間の事故比率

日没から日の出までの時間帯に発生した事故件数の比率です。
どのエリアも概ね25%程度となっており、明確な地域差は見られませんでした。全国平均を手計算した結果も26%でした。

交通事故発生箇所と比率のマップ(夜間の事故比率)

65歳以上が関連した比率

事故の当事者いずれかの年齢が65歳以上である件数の比率です。
全体的に3分の1から5分の2くらいの比率です。地域で大きな差異は見えませんが、東京などの大都市よりも地方のほうが高めでしょうか。単純に高齢化率が高いことに起因しそうです。
本当は18歳以下が巻き込まれた事故比率も出したかったのですが、元データから情報が確認できなかったため、年齢区分はこの指標のみ用意しています。

交通事故発生箇所と比率のマップ(65歳以上の関連比率)

死亡事故の比率

死亡事故の件数比率です。全体の1%程度(手計算によると0.85%)でした。集計件数が多い円グラフでは差異が見えませんが、ローカルレベルまでズームしていった際にこの比率が高い箇所があるなら、そこには重大事故の要因が潜んでいるかもしれません。

交通事故発生箇所と比率のマップ(死亡事故の比率)

おわりに

今回は、警察庁オープンデータの交通事故統計情報に基づき作成したウェブマップを使って、日本の交通事故における地域ごとの特徴について見てみました。
ズームレベルによって大まかな地域別の比率の差異を確認したり、居住地域周辺の危険箇所を確認したり、いくつかの使い方が見えてきた気がします。

さいごに、前回記事の締めでも書きましたが、データでは1レコードに過ぎなくとも、当然ながら交通事故1件はその人の一生を大きく左右するものです。データを取り扱う際にはくれぐれもその点をお忘れなく。自戒を込めて書いておきます。


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