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「あの大学って何してるの?」を概念マップで探索してみよう 【九州大学】

今年もようやく年の瀬ですね。外出を避けることが増えたのでクリスマスの情緒もあまりなかったですが、来年はどうなることやら。

さて、科研費データベース(KAKEN)から取得した研究概要データを使った概念地図、今回は九州大学の研究像を見ていきます。2010年〜2019年の10年間で約8千件の研究が対象です。下で紹介するマップ画像をクリックすると、自由にブラウジングできるウェブアプリにリンクしますので是非そちらもご覧ください。

九州大学の研究マップ (2010-2019年, 約8千件)

全体像をざっとみると、医学系の研究エリアが大きな部分を占めていますね。そして次に目立つのは右側の材料系分野、こちらは金属とか無機系材料の研究の密度が高いようです。構図自体は前回ご紹介した名古屋大学とかなり似ているなという印象を受けたので、これらの大学同士の構図を比較してみると面白い発見が得られるかもしれません。

「久山町研究」と認知症

もう少し細かく見ていきましょう。医学系のエリアの左側から社会科学系に連なる一帯には「久山、住民」「脳、障害」とラベリングされた研究エリアが見られます。調べてみると、「久山町研究」というものがあるんですね。認知症ネットの説明によると「久山町研究は、福岡県の久山町で長年にわたって行われている大規模な生活習慣病の疫学調査」とのこと。1961年から住民調査を行ってきたそうで、特に認知症の基礎データとしてよく登場するようです。たしかにマップ上でも認知症関連の研究がこの周辺に集中していますね。例としてはこんな研究がありました。認知症に脳神経のみならず遺伝子の影響があるとすれば、こうした経年の住民調査は大きな意義がありそうです。一方で、認知症や高齢化対策は地域社会の包括的なアプローチも重要だと思いますので、このマップの左辺にあたるエリアの研究が充実してきたら更に良いなと思います。

複合研究は生態系分野の革新に繋がるか

次は医学系エリアから離れて右側の材料系エリアに注目します。ここは名古屋大学のマップと見比べると面白い違いがあるのですが、右上側に海洋・環境・河川といった水系環境の研究が集中している箇所があります。同様の構図を持つ名古屋大学の研究では、このあたりに位置するのは「宇宙」の研究でした。「宇宙」と「水系環境」は全く別分野のようで、マップをよく見ると”流体”とか”シミュレーション”といったキーワードレベルでは共通項が多く見受けられます。それらの応用先が名古屋大学と九州大学では異なっているのが対比として面白いと感じました。九州大学の周辺地域は河川など水系環境の研究材料が豊富なのかもしれませんね。

また、マップ中央に位置しているのが「種、進化」といった生態系研究の箇所なので、医学・環境系に加えて材料系など別分野の研究がクロスして、この生態系研究で新たな革新が生み出されるかもしれません。例えばこの箇所ではソフトロボットというテーマでの研究がありましたが、こうした複合分野の研究は社会革新の種として個人的に期待したいところです。

続いて今度はマップ左上側を見てみると、ここは法学研究の箇所で特に密度が高い部分がありました。民放、刑法などの研究が点在しておりますが、筆者が当該分野に詳しくないこともあって、このエリアに関しては特段の言及ポイントは見つけられませんでした。

まとめ:環境・生態系の新技術や認知症分野の研究に要注目

ということで、今回は九州大学の研究像を見てみました。前回の名古屋大学と比較してみると、「宇宙」と「水系環境」の対比・共通項から、お互いのちょっとした特色の違いが垣間見れたようで面白かったです。生態系分野における複合研究という点は要注目ですね。

また、「久山町研究」とその周辺の認知症研究については、高齢化社会におけるニーズが大きいテーマなので注目していきたいと思います。遺伝子の影響など認知症の要因に関する研究も重要ですし、そうした予期・予防だけでなく、同時に社会包括的に認知症をどうケアしていくかという課題も考えていけたら、長年の地域研究の蓄積が大きな意味を持つ気がしますね。

出典・免責事項

当記事の情報は、KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)( https://kaken.nii.ac.jp/ )をもとに筆者が独自に加工し、考察した内容となります。正しく公正な情報を提供するように努めてはおりますが、必ずしも正確性を保証するものではありません。

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