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サンプンブンコ
2018年6月10日 19:03
放課後の教室は海の底のような静けさをもつ。海面の海鳥や漁師たちの賑やかな声が遙か遠い世界のものかの如く、窓の外の校庭の音が遠くから聴こえてくる。ただ一枚の窓を隔てた世界には、水深2000m以上もの距離があるのだ。 そんな海の底でふらふらと彷徨う、まるっとした人影があった。それはとても弱りきった様子で何かを探す。 「ぼくの、教科書。」 泣き声混じりに呟くその言葉は、彼が探していた物の名前