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平凡な街の鬱陶しい出来事⑨かまってちゃん考

老人はある時は自転車に乗っている事があった。そして相変わらず見知らぬ女性のそばで「馬鹿女~··。」と他所を向きながら声を上げては、そろりそろりと自転車を漕ぎながら離れた。
自分が言われたのに気付いた人は、ジッと去って行くのを見ていた。
誰も関わらなかった。
私は(爺さん、自転車に乗るのか?何処から来てるんだろう?)と思った。
近所でないなら、家族に直ぐにはバレないかも知れない。

でも、昔からなぜかこのスーパーの近くには、妙な人物が出没するのだ。駅へ真っ直ぐ向かうメイン通りを2つに分ける様に雰囲気が違うのだ。
なぜかは分からない。そしてまたパチンコ屋がある付近で様子が変わる。
メイン通りの明るい感じでない方にたむろする人達が確かにいる。
それ程大きな街でも無いのに、そういう事がある。

その老人も明るいメイン通り側にいるのを見たことが無い。
そして私の知人のKさんの勤めるスーパーには行く事は無い。
Kさんの所は明るいメイン通りの方にある店だ。駅に隣接している活気のある所だ。住み分けがあるのを私は何となく昔から感じていた。

いつもはKさんのいるスーパーに来ない人がある時珍しく来ていた。
その人をよく見掛けるからと云うより、サッカー台のビニール袋を大量に使うので覚えていたのだ。
50代位の女性だ。
その人は周囲を気にしながらおどおどビニール袋を手にしていた。
そのスーパーではビニール袋を欲張って持ち帰る様な客はまず見掛けない。
彼女は仕方無く買った全ての物をひとつひとつ、袋に入れた。
前に見掛けた時は、そんな大人しかったかな?と思った。
沢山袋を取るのは後ろめたいからだろう。恥ずかしいのかも知れない。
そして、急ぎ足で出口へ向かっていった。
何で来てしまったのかなと私まで思ってしまった。

話はあの老人に戻るが、暫く例のスーパーに出没していた。
そしていつもの様に罪の無い女性達の気分を害していた。
でもなぜか私はそんなに嫌ではなかった。
勿論気分が良い訳でも無いが。相当馬鹿にされてきたのが伝わってくる。
そうしたのが母親だったのか、奥さんだったのかは分からないが。
でも、言い返す力は無いし何か出来る訳でも無くて、非常に肩身が狭いんだろうなと思った。

遭ったとき心の中で言ってみた。
(じいちゃん、元気そうだね?)
その日、私に馬鹿女とは言わなかった。
そんな事が何度かあって、いつの間にか老人は姿を現さなくなった。

年齢が年齢だからか、引っ越しでもしたか、病気になったのか、まさか、家族に街で何をしていたのかがバレたのか?
どうしてかは分からない。
分かるのは悔しい思いをどうして良いか分からなかったのだろうな、と云う事だけだ。

また続きます(  ̄- ̄)



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