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ふたたび、居場所探しの旅へ~障がい受容の先に生きがいと働きがいを求めて~

先日、人生の転機に必要なアイデンティティの再構築に関する記事を公開しました。

「新しく何かを始めるためには"古い自分"を終わらせる必要がある」と主張する、アメリカ人コンサルタント、ウィリアム・ブリッジズの『トランジション』を参考にまとめた記事です。

トランジション(=人生の転機による心理的変化)は脳出血を発症してからの3年間に感じた「アイデンティティの喪失と回復」を体系的に説明できる概念でした。

今回の記事では以下の図にあるニュートラルゾーンの「④過去をまとめる」にあたる行動として、2021年までの軌跡をまとめ、2022年の活動指針を記していきます。

note「ただ"始める"だけじゃ意味がない!?新しい自分になるための3ステップ」より抜粋

脳出血当事者さんはもちろん、就職・転職、結婚・離婚など人生の転機にある方が目的をもって生きるための参考になれば幸いです。

ニュートラルゾーンの記録

2018年~2020年3月:思いがけない変化を理解するより、仕事に没頭する

私は2018年の3月3日、24歳で脳出血を発症しました。

脳浮腫が酷く、すぐに手術ができなかったため、発症の2週間後に11時間の手術を受けます。

そして半年のリハビリ治療の末に人材紹介業界のメディア編集者として復職をしています。

発症から6ヶ月目までにあたる急性期〜回復期は復職と一人暮らしを目標に治療を受けることに。

この頃は復職のために麻痺の程度を軽くしたい一心でリハビリに専念しており、主治医から「高次脳機能障がいには当たらない」と言われていたので安心しきっていました。

実際に一般雇用で復職し、仕事の中で脳機能の低下を自覚する間もなく、2020年まで新卒で入社した企業で働くことになります。

今振り返れば、脳の器質的変化(出血による脳の変化)がある以上、それによる高次脳機能の低下は必ず起きていたはずです。

しかし半年の休職をしていた遅れを取り戻したい焦り、そしてやりがいのある仕事で成果を出したい欲によって変化に向き合うより、仕事に没頭していました。

また仕事に没頭した理由は症状の否認も大いに関係していたと思います。

そして、復職から約2年が経った後にワークライフバランスが取れる環境で働きたいと思い、退職を決意しました。

2020年3月~2020年6月:働きがい+働きやすい環境で

前職(復職した企業)が業界内でも多忙だと言われていただけあり、片麻痺の私が働きながら次の職場を見つけるのは難しい状況でした。

そのため、退職後の3か月間を転職活動期間に充てることになります。

転職先ではWeb解析・マーケティングのスキルを身に付けたい一方で、脳出血後の自分と向き合う余裕も欲しかったため、ワークライフバランスが取りやすい企業を選び、初めての転職を終えました。

2020年8月~2020年12月:愛猫の難病発覚、そして症候性てんかん発作

転職して間もない頃、愛猫の食欲が落ちていることに気が付き、病院を受診すると難治性の免疫疾患であること告げられます。

急変の多い病気なので、1日中気が抜けません(フルで在宅勤務ができる環境だったのは不幸中の幸いでした)。

そして闘病開始から数か月経過した頃、赤血球の血中濃度が著しく低下し、愛猫は瀕死の状態に。

フル在宅勤務とは言え、転職後の慣れない環境で仕事を続けていた上、愛猫の看病もしていた私は心身ともに疲労が蓄積していたようで、動物病院で初めての症候性てんかん発作(重積状態)を起こします。

この事件は自分が明らかに脳出血前と異なることを認識するきっかけになりました。

2021年1月~:脳出血後の変化を客観的に理解し、業務改善に活かす

愛猫の難病発覚は唐突な不幸で、避けようのない事態でした。

一方、症候性てんかんに関しては以前に似たような軽い症状が出たことがあったため、明らかに自分の変化に向き合わなかった自分の怠慢です。

そして症候性てんかんについて理解し、対策ができるようになるまで、フル在宅勤務が続いていた幸運もあり、愛猫とともに実家で仕事をすることに決めます。

休日には症候性てんかんに関する本を読み、noteに学びをまとめて症状認知に努めたのもこの頃です。

▼症候性てんかんに関するnoteはこちら

そして、症候性てんかんにより再び命を落としかけた私は社会人として長く働くためにも2021年の目標を「脳出血当事者の症状認知のためになるnoteを12本公開する」と定めました。

▼症状認知に関するnoteはこちらから

また、上記のnote更新に併せて、より仕事がしやすくなる方法が分かったため、週3回の在宅勤務と業務指示の確認を適宜テキストで行うことを配慮条件に、一般雇用から障害者雇用に転換をしました。

症状認知+障がい受容に努めた2021年の意味

ここで、症候性てんかん(重積状態)をきっかけに、高次脳機能や身体麻痺に関する症状認知、障がい受容に努めた2021年の意味を考えたいと思います。

2021年は高次脳機能や神経心理学に関する本を読み、MRI画像から器質的変化について専門医に意見を請うなど、脳出血当事者になった現実と向き合い、自分の能力を深く分析した1年でした。

▼脳出血当事者におすすめの本一覧はこちら

そしてこの1年の意味は人生の転機(トランジション)において、脳出血発症前の自分の「終わり」と「ニュートラルゾーン」の一部に寄与したことだと考えています。

生きがいと働きがいを探す、始まりの旅へ

2021年までを振り返ると、トランジションの3ステップの中で「ニュートラルゾーン」の「④過去をまとめる」までの道のりを歩んできたことが分かります。

ならば次にやるべきことは「⑤本当にやりたいことを見出す」から始まる、新たな旅路を歩み始める準備に取り掛かることです。

そして2022年、私は脳出血当事者であることを心から認め、以下のことに挑戦します。
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〈脳出血当事者かつコンテンツマーケターとして生きがいと働きがいを感じる〉

  1. ウェブ解析士の資格取得をとおしてコンテンツマーケティングの専門性を上げる

  2. ニューロダイバーシティを体現しているコミュニティで働く

  3. 脳出血非発症者1人以上と出会い、理解し合う時間を増やす

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つまり、症状認知・障がい受容から始まった私のトランジションは「異なるコミュニティとの出会い」をきっかけに、本当にやりたいことが見つかり、新たな旅路に繋がるのではないか…と考えています。

最後に

今回は直接的なノウハウ記事ではなく、私が脳出血を発症してからのトランジション(人生の転機)をまとめてみました。

まとめてみると、脳出血当事者としてのアイデンティティの再構築は、生涯発達心理の中でも高齢期に向き合う「サクセスフル・エイジング(加齢変化による選択と対処)」に当たるように思えます。

これは若年層では起きる確率が低い心理的変化ですから、以前の自分とは変わっていることを理解するのは混乱も伴う作業だと考えるのは難しくありません。

そして今回のふり返りを経て、脳出血を発症して起きた変化に向き合うことは家族やパートナー、職場の方々、Twitterやnoteで出会った方の協力なくしては成しえなかったと改めて痛感させられました。

私を支えて下さるすべての人にこの記事を捧げたいと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。

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