見出し画像

脳出血当事者が実践する!ブレインドリブンな習慣~『脳が冴える15の習慣』を読んで~

脳出血の急性期・回復期ではリハビリが行われます。この期間に当事者が意識するのは「身体を動かすこと」ですよね。

一方で、社会復帰後の展開期・維持期に意識するのは「脳を(安定して)機能させること」

画像1

私は右脳頭頂葉からの出血で身体麻痺も軽度だったため、半年の休職後はフルタイム+残業ありで就業していました。

しかし今思い返せば、睡眠時間や休息時間を削って仕事をして生活習慣が乱れ、日によって「脳機能のムラ」がありました。

▼24歳での脳出血発症・社会復帰の経緯はこちら

この記事では仕事にのめり込み、ブレインドリブンな生活が出来なかった私の失敗体験と、築山節さんの『脳が冴える15の習慣』を参考に脳出血発症から半年(回復期)以降の方に向けて、脳機能を効率よく使い、健康に生きる「ブレインドリブンな習慣」をご紹介します。

書籍の中から私が実践している習慣を抜粋し、体験談を交えながらまとめますので、生活の見直しの参考にしてみてくださいね。

脳のウォーミングアップのための習慣

過去記事でもご紹介させていただきましたが、脚・口・手を動かす機能は頭頂部に集中しているため脚・口・手先を動かす活動をすることで、脳全体に血液が循環し、脳機能が向上します。

この特性を踏まえて、私は次を朝の習慣にしています(在宅勤務ver.)

〔脳のウォーミングアップのための朝習慣〕

①10分程度のウォーキング

②洗濯物の片付け・掃除機をかける

③音読

脳機能を効率よく使うための習慣~締切りを設ける~

朝に脳のウォーミングアップを済ませたら、脳機能を効率よく使えるように仕事に取り掛かります。

脳機能を効率よく使うために必要なのは「集中力(注意力)」と「集中した時間内で効率よく作業すること」です。

この点について本著で築山さんは脳機能を効率よく使う(脳の基本回転数が上がった状態を保つ)ために「時間の制約が必要」「時間の制約は長くても2時間」と述べています。

これらの特性を踏まえ、私は効率よく仕事をするために次を習慣にしています。

〔集中力と脳機能を効率よく使うための習慣〕

ここまでご紹介した「脳のウォーミングアップ」「脳を効率よく使うコツ」を時系列にまとめると次のとおりです。

画像2

①1つのタスクに割り振る時間は最大2時間

②1つのタスクが終わったら、残った集中力を活用して業務スケジュールの見直し、雑用をこなす

③集中力の切れを感じたらドリンク休憩

感情系に従う回数を減らすための習慣~予定表をつくる~

「1日の何となく過ごす」ことを減らすためには感情系に従った生活から理論系の脳機能に従った生活を組み立てる必要があります。

先ほどご紹介した1つのタスクの制限時間を2時間に設定するなど、集中力の限界を認識した予定表を作成することで行動の習慣化が進み、脳機能のムラも少なくなるのでおすすめです。

ここまでは主に、仕事中に脳機能を効率的に使うための習慣をご紹介しました。次に日常生活や仕事で必要になる「問題解決」を向上させるための習慣についてご紹介します。

注意力を高めるための習慣~立体的な視覚情報を得る~

橋本圭司さんの『高次脳機能障害』で解説さているとおり、主に前頭葉の働きを図式化した「神経心理ピラミッド」のうち注意力・集中力は日常生活の質(QOL)向上に直結します。

無題

注意力・集中力が著しく低下している脳出血当事者はまず、集中しやすい環境づくりが必要ですが、「注意力・集中力の補強」をするために情報を積極的にインプットする行動を習慣化する方法もあります。

私が注意力の補強・切り替えをスムーズに行いやすくするために習慣化している行動は次のとおりです。

〔注意力を高めるための習慣〕

①仕事以外でのPCやスマートフォンの使用時間を1日1~2時間に制限する

→平面からの情報取得は距離感・角度の注意力調整があまり必要ない影響で、情報を得る方法を平面に依存させると注意力が低下しやすくなるため

②写真撮影などをとおして、広い空間から視覚情報を得る

→距離や角度が異なる対象に注意を向けるトレーニングになるため

問題解決力向上のための習慣~家事+思考フロー化~

画像3

問題解決力は日々の仕事やトラブルの対処の際、必要になります。

脳出血当事者は出血箇所によって低下した脳機能は異なりますが、理論的な思考を司る前頭葉を鍛えることで問題解決力が向上しやすくなるそうです。

「問題解決力」と言うと自己啓発やビジネスに関する書籍を手に取りたくなりますが、実は日常生活で鍛えることが可能です。

〔問題解決力の基礎を鍛える方法〕

前頭葉の主な機能「選択」「判断」「系列化(順番決め)」は料理などの家事で必要になるため、自己啓発やビジネスに関する書籍で応用をインプットするよりも家事をとおして前頭葉の基礎機能を鍛える方がおすすめです。

特に脳出血当事者は仕事をこなしながらQOLを向上させることが大切なので、背伸びをせず日常生活の中で脳機能を鍛えることが生活の豊かさに繋がると感じています。

〔問題解決力を応用する方法〕

①マジック7の性質を理解する

「マジック7」とは情報の保持、系列化できるのは3~7つである人間の脳の性質を指す言葉です。

脳出血当事者は脳機能が低下しているため、保持・系列化できる情報の数が少ない傾向があります。

②思考のフローを書き出す

問題を解決する際は情報の要素を「マジック7」の性質を踏襲して、3~7つの大項目に分けて書き出してから細部に目を通すと問題解決力の補強につながります。

また思考のフローを書き出す習慣は「セルフダイアローグ」に通じるため、脳出血当事者のアイデンティティの再構築にも役立つのではないでしょうか。

③思考フローのフィードバックを受ける

思考した結果(意見)だけではなく、思考フローについて意見をもらうことでより合理的な問題解決につながります。

記憶力向上のための習慣~アウトプットのためのインプット~

脳出血当事者のTwitterアカウントやブログを見ていると「読んだ本の内容をすぐ忘れるようになった」と語る方も少なくありません。

脳出血の影響でインプットの過程に問題が起きている場合も大いに考えられますが、ここではあくまで「残った脳機能を活用して」記憶力を向上させる習慣をご紹介します。

〔記憶力向上のための習慣〕

目的もなしにインプットした情報は記憶として定着する可能性は低くなります。そのため、私は情報を記憶するために次の行動を習慣化しています。

①アウトプットのためにインプットする

②インプットした情報に解釈を加える(=ノートにまとめる、音読)

③相手に伝えるためのアウトプットをする(=ペルソナに合わせて要点をまとめる)

画像5

アウトプットは成果物ではなく、人との会話でも十分です。相手のために記憶(=情報を解釈したもの)を要点を絞って出力することをアプトプットと定義しています。

脳機能の管理をするための習慣~失敗ノートを書く~

私は2018年3月に脳出血を発症し、発症した半年後に復職をしました。

復職当初はフルタイムで働き、成果を出すことで精一杯だったため、抑うつ状態をかき消すためハードワークに逃げる結果となりました。

今思えば、感情系が優位な状態で仕事に臨んでいることが度々あり、それゆえに人間関係で失敗した経験があります。

これらの経験から、私はnoteで脳出血当事者向けに脳機能を理解して、社会復帰するためのノウハウを発信するようになったのですが、冷静に失敗を分析するために習慣化したのが「週次で失敗を書き出す」ことです。

本著でも築山さんは「失敗の分析は小さな失敗を書き出すと、低下している脳機能の傾向をつかめる」「人から指摘された失敗をまとめると良い」と述べています。

〔脳機能の管理をするための習慣〕

①失敗ノートを書く(小さな失敗の傾向から、脳機能の低下傾向をつかむ)

②第三者から指摘された失敗など、客観的な事実を脳機の低下を認識する材料としてまとめる

最後に

今回の記事では脳を正しく使うための習慣についてご紹介しました。これら以外にも重要なのが「十分な睡眠時間の確保」です。

記憶力の向上には睡眠による脳機能の恢復や、情報整理が欠かせませんし、易疲労を感じやすい脳出血当事者にとって特に重要な習慣だと考えています。

脳出血当事者が社会復帰すると現実と認知の乖離によって悩みを抱える場合も少なくありません。このように不安な出来事が続けば十分な睡眠時間が確保しにくいこともあるでしょう。

しかし、脳機能の重要性を痛感している脳出血当事者だからこそ、残った脳機能を最大化するための習慣の第一歩として、決まった時間の起床・就寝を目指したいところです。

私も発症から3年が経過した今でも、仕事や日常生活がうまくいかない時があります。そんなときは就寝時間が遅くなることも…。

しかし、その他の習慣が守られていれば「あ、ブレインドリブンに生きているのだった」と生活リズムの改善に意識が向けられるようになります。

最後になりますが、この記事が脳出血当事者、またそのご家族が「ブレインドリブンな生活」を送るための一助になれば幸いです。

*****
最後まで読んでいただきありがとうございます。

脳機能向上のために習慣化していること、ご意見やご要望があればコメントで教えてください✍️

*****


この記事が参加している募集

リモートワークの日常

脳出血当事者・支援者に向けて、社会復帰の課題と改善策を発信しています。サポートいただけると励みになります…!共に生きましょう。