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ネバネバの めかぶをたたいて 春を感じる。

ネバネバした食べ物にハズレはない

と思っている。山芋をすりおろしたとろろに、納豆に、オクラに、モロヘイヤ……。どれも、醤油を混ぜて、炊き立ての白いご飯と一緒に食べたくなる。

そしてそんなネバネバの中で特に好きなのが、めかぶ。それも、千切りに刻まれてスーパーで一食分ずつパックに入っているやつじゃなくて、しっかり茎がついてまだ黒い色をした「THE 獲れたてです!」な状態のめかぶ。それをさっと湯がいて、茎を外して、包丁でたたいて、お醤油を混ぜて白いホカホカご飯に載せて食べる。

買ったお店が見えちゃうので。
ちなみに、仙令平庄さんが仲介されてました🐟

このめかぶは、春が近づくと少しずつスーパーに出回って暖かくなる頃にはスーパーからなくなってしまう。獲れる時期がこれくらいなのと、とても足が早いものだから、あたたかくなってからは出回らない。

スーパーにも毎日売っているわけではないので、見つけたらそのときに手に入れて、少なくとも次の日には調理しないといけない。あと、わたしの経験的に西へ行けば行くほど遭遇率が低い。

というのも、この「めかぶ」は、東北の三陸地方、特にワカメなんかを扱っている漁港で、いわゆる「雑草」のようなものだったらしく。昔は、市場で「売る」ようなものだという認識が、その地方の漁師さんたちにはあまりなかったと聞く。

なんでわたしがこの食べ方を知っているかというと、わたしのおじいちゃんが三陸地方の海沿いにあるお寺の和尚さんだったことがルーツで。おじいちゃんが昔から檀家である漁師さんたちからよく差し入れでもらっていたもんだから、和尚さんを辞めた後も自分の家でよく作っていて。それが父に伝わり、母が作るようになり、わたしへ。

わたしも幼い頃からこの時期は「スーパーでめかぶを見つけた日はめかぶご飯!」と育ってきたので、オトナになって何度かの引っ越しを経ても、スーパーでめかぶを見つけた日はいつもより少し多めにご飯を炊いて、その間にめかぶをたたく。

関西に住んでいたときはこの習慣がほとんどなかったので、やっぱり東日本じゃないとなかなか手に入らないんだろうなぁと思っている。ちなみに、今回購入したものも宮城県産。地元の魚屋さんの名前が載っていて、少し安心する。

オーガニックじゃなきゃいけないとか、フェアトレードのものしか買わないとか、そういう拘りはない方だけれども、実家で昔から食べているお店の名前は「これは、大丈夫」と思わせるから不思議だ。どうせなら、顔を知っている人にお金を落とす方が納得感も増すような気がする。

そんなわけで、お鍋でさっと5秒ほど湯がいて、冷水でキンキンに締めて、包丁で可食部とそうでないところを分けて、まな板の上でたたいていく。

昔はどうもぬるっとして、細かくする前に腕が疲れてしまっていたけれども。幾度か叩いていくうちにコツを掴んだのか、今ではわりとすぐにたたけるようになってしまった。

これを楽しむ日は、特におかずもなくお新香とお味噌汁とめかぶをのっけた白ごはんだけで良い。めかぶ特有の甘さが口の中でふわぁっと広がって、いつもよりもご飯が進む。食べられる日は、いつも炊く三合のうち一合を、わたしひとりで食べきるほど。

ネバネバしている食べ物は、すっと口におさまってしまうから、調理時間のわりにすぐ食卓からなくなってしまう。なんだかちょっと悔しい気もするけれども、あの口に入れた瞬間のふわっと広がる香りがたまらなく好きなので、あともう少し暖かい日々がやってくるまで、お店で見つけては「今日はめかぶの日!」を今年も目一杯楽しもうと思います。

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