聴覚障害のあるわたしのもとに、身体障害者手帳がやってくるまでー申請と交付の流れー
「身体障害者手帳」というものをご存知ですか?これは、障害のある人に交付される手帳で、例えばわたしたち聴覚障害者でいうと補聴器の購入費や修理費を助成を受けたり公共交通機関の割引を受けたりするときに必要になるものです。
また、写真や住所が記載されていることもあり、身分証としても使うことができます。わたしら自動車の運転免許証を持っていないので、この身体障害者手帳を身分証の提示を求められた際に提示することが多いです。
生まれたときから右耳がまったく聞こえず、左耳の聴力も年々低下しているわたしですが、身体障害者手帳の交付を受けたのは今年に入ってから。
身体障害者手帳の交付手続きをするのは、自分の人生でも子育てでもそう何度も経験することではない思います。わたしの経験が、次の誰かの参考になれば思い、今回noteに備忘録を残すことにしました。
ちなみに、この流れの中で支出が6,000円ほどありました。それについては、こちらをご覧ください。
○「障害者手帳」の種類
・身体障害者手帳
わたしが持っているものは「身体障害手帳」というものです。これは、身体障害者福祉法という法律に基づいて1〜6級までに等級が分かれています。数字が小さいほど障害の程度が重いと判断されます。
わたしたち聴覚障害単独の障害者は、聞こえの程度によって2〜6級に分類されています。わたしはその中でも一番軽い6級を持っています。
他にも
・視覚障害
・平衡機能障害
・音声・言語・そしゃく機能障害
・上肢・下肢・体幹障害
・心臓障害
・じん臓障害
・呼吸器機能障害
・ぼうこう又は直腸機能障害
・小腸機能障害
・肝機能障害
・免疫(ヒト免疫不全)機能障害
などの障害者も、身体障害者手帳を取得できます。
幼少期は視力検査や聴力検査を正確に行えないことなどから更新が必要なこともありますが、原則有効期限はありません。
・療育手帳
知的障害のある人に交付される障害者手帳です。これは法律で定められたものではなく、各自治体の裁量で制定されている制度になっています。東京都では「愛の手帳」さいたま県では「みどりの手帳」のように名称も各々異なります。
18歳を迎える前後で更新が必要なこともありますが、知的障害は年齢を重ねるごとにより重度化していくことも多いので、障害の程度が変わるタイミングで更新する人もよく見ます。
・精神障害者福祉保健手帳
精神保健福祉法に基づき、精神疾患のある人に交付される手帳です。1〜3級に分かれており、数字が小さいほど障害の程度が重くなります。
更新は2年に1回必要で、うつ病だけでなく発達障害や学習障害者もこの精神障害者福祉保健手帳を交付されます。
○身体障害者手帳交付対象の聴覚障害
実はわたし、身体障害者手帳の交付を受けたのは今年に入ってから。生まれつき全く聞こえない右耳があっても、左耳の聴力がちょいと良いと、国から「障害によって困ってます」と認定してもらえないのです。
ちなみに聴覚障害の等級基準は
2級
両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上のもの(両耳全ろう)
3級
両耳の聴力レベルが90デシベル以上のもの(耳介(じかい)に接しなければ大声語を理解し得ないもの)
4級
1.両耳の聴力レベルが80デシベル以上のもの(耳介(じかい)に接しなければ話声(わせい)語を理解し得ないもの)
2.両耳による普通話声(わせい)の最良の語音明瞭度が50パーセント以下のもの
5級
該当なし
6級
1.両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)
2.一側耳(そくじ)の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳(そくじ)の聴力レベルが50デシベル以上のもの
となっています。わたしは、右耳が130dB、左耳が75dBなので、6級の1.両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)に該当します。
以前の補聴器を購入するタイミングでも、身体障害者手帳の申請をするか悩んだのですが
・わたしの左耳は中高生くらいまで30dB程度まで聞き取れていたこと
・前の補聴器を購入するときは18歳以下の小児難聴に適用される自治体の補助があったこと
・佐村河内事件の直後で6級の2で手帳の申請をすることに耳鼻科側が難色を示したこと
などの理由で、手帳の申請には至りませんでした。
今回新しい補聴器を購入するにあたって、前回の補聴器購入からずっと手帳の基準を満たす聴力であることを耳鼻科と補聴器屋さんから認めてもらい、身体障害者手帳の申請をすることになりました。
○居住している区市町村の障害福祉課で、申請用紙を受け取る
耳鼻科や補聴器屋さんと身体障害者手帳の申請をすることになったら、まずは区市町村の障害福祉課に行って申請用紙を受け取ります。
わたしの居住区では、窓口で聴覚障害があることを伝えると筆談か手話通訳を選ぶことができました。間違いなく情報を得たかったので、わたしは手話通訳をお願いしました。
ひとつは、わたしが記入する申請用紙
もう一種類は、指定医に記入してもらう診断書
この二種類の用紙をもらいました。(東京都福祉保健局ホームページより)特に二枚目の診断書は、自治体の指定医の記入しか認められないとのこと。わたしのかかりつけ医は指定医であることを補聴器屋さんとも確認していましたが、このタイミングで障害福祉課でも確認してくれました。
○指定医に診断書を書いてもらう
二種類目の診断書の書式を持って、耳鼻科に行きます。定期的に聴力検査をしていますが、今回は手帳の申請のために再検査がありました。
普段は「音を流しても聞こえないからやらないでおこうね」と言ってもらえる右耳にも音を流します。右耳は130dBという耳のそばで飛行機のエンジン音を聞くくらいの強い音圧が流れます。音としては聞き取れないけれど、ものすごい振動が伝わってくるのでちょっとフラフラしちゃいます。
また、聴力検査は聞き取れる最小音に集中し続ける検査です。聴覚障害者には耳鳴りのある人や音を聞くこと自体に慣れていない人もたくさんいます。わたしは前者の耳鳴りがあるタイプなのですが、大人になった今でも本当にしんどいなーと思う検査。
補聴器や人工内耳をつける子どもたちにとってと、本当に気力と体力を使い果たす時間になると思います。終わったあとは、「がんばったね!」とたくさん褒めて美味しいお菓子のひとつやふたつ買ってあげてほしいなぁーと、耳鼻科や補聴器屋さんで子どもたちを見るたびに思います。本当にすごい!
そして、このタイミングで診察や検査、診断書料金で支払いが発生します。あらかじめ、いくらくらい必要なのか目安があると安心ですね。
○申請用紙と診断書を持って障害福祉課に持っていく
・申請用紙
・診断書
・申請者の写真
・個人番号のわかるもの(マイナンバーカードか住民票の写し)
・身分証明証
を持って、また障害福祉課に行きます。この日も手話通訳をお願いして申請の手続きをしました。文字とイラストで視覚的にわかるような手順の流れも見せてもらえたので、安心して手続きをすることができました。
ひとつその場で決めないといけなかったのは、身体障害者手帳をカード式のものにするか紙の手帳型のものにするか。
カードといっても磁気で情報を管理するようなものではないらしく、機能としては特に変わりないそうです。ただ、カード式のものは写真がモノクロに、紙の手帳型のものは写真がカラーになるとのこと。あと、カード式の方が少し小さめサイズ。
ちょっと悩みましたが、お財布やカードケースと一緒に持ち歩けたら便利だなと思ったので、わたしはカード式を選択しました。
○交付の日は時間に余裕を持って窓口にいく
申請の手続きをしてから約3週間後、郵便で身体障害者手帳の交付準備ができたとの通知が届きました。また窓口まで交付手続きに行く必要があるとのこと。
区市町村の窓口の空いている時間に、何度も足を運ぶのは正直しんどいなー……とも思うので、インターネットとかでも申請できないのかななんてことも考えながら向かいます。(ちなみに、できないらしいです。補聴器の修理の助成とかは補聴器屋さんを通して依頼できたのですが。)
窓口で交付通知を見せると、係の方がすぐに準備を始めてくれました。この日も、手話通訳の方がいらっしゃいます。
本人確認や記載事項の確認をして、やっとわたしのもとに身体障害者手帳がやってきました。申請の手続きを始めてから、だいたい一ヶ月ちょい。
このあと、手話通訳派遣のための登録手続きや都営のバスや地下鉄の無料乗車券の交付、身体障害者手帳があることで受けられるサービスの説明などを受けて手続きは全て終了です。
交付の日は説明やその他のサービス利用のための手続きもたくさんあるので、時間に余裕をもって窓口に行くことをお勧めします。
○身体障害者手帳をお財布に
そんなわけで、晴れて自治体からちゃんと「身体障害者だよ!」「福祉的な助成が必要な人だよ!」と認めてもらうことができました。これで、「わたし、耳が聞こえにくいんだよね」なんて遠回しな言い方をしないで「聴覚障害があるんだよねー」と言えちゃうんです。
身体障害者手帳の交付を受けてから約10ヶ月。
・補聴器購入の助成
・都営全線の無料乗車
・タクシー乗車の割引
・水族館、映画館、美術館の入場料割引
などのサービスを利用しています。
補聴器購入の助成、マジで助かりました。このおかげで、ワンランク上のモデルの補聴器を手にすることができて、いろんな音を聴いています。あと、聴覚障害も原因のひとつで三半規管ヨワヨワなので、しんどいときに一駅でもバスに乗れたりタクシーの割引が使えるのも本当にありがたい。
○実は……日本の「身体障害者障害者」の基準は、世界的にも厳しめ
ただ、冒頭でもちょっと触れたように、わたしは生まれつき片耳がまったく聞こえないのにずっと身体障害者手帳を持たないいわゆる公的に障害者と認められない聴覚障害者でした。
日本の身体障害者手帳を交付されることができるのは、最低でも
1.両耳の聴力レベルが70デシベル以上のもの(40センチメートル以上の距離で発声された会話語が理解し得ないもの)
2.一側耳(そくじ)の聴力レベルが90デシベル以上、他側耳(そくじ)の聴力レベルが50デシベル以上のもの
のどちらかが必要です。でも。補聴器等を装用しない裸耳聴力が60dBを超えると何をいっているのかを聞き取るのはだいぶ厳しくなります。さらに、裸耳聴力が30dBを超えるのであれば補聴器は必要と言われています。
WHOでも、41dBを超えたら福祉サービスを必要とする聴覚障害者だよ、と明文化しています。それでも、30-69dBの福祉サービスは必要だけれど、国から聴覚障害者として助成を受けられないでいる一年前のわたしのような人はまだまだたくさんいるはずです。
この課題についても、もっと議論が進んでいくといいなと思っています。(このことについてもまた、別記事でお話しできたらと思ってます)
○さいごに
わたしに続く身体障害者手帳を持つ後輩たちや、仲間たちの生きやすさに、少しでも貢献できるnoteになれるよう、これからも、身体障害者手帳をお財布に忍ばせるわたしの生活について、綴っていきたいと思います。
【新しい補聴器のおはなし】
・補聴器とiPhoneが、はじめてBluetoothで繋がった日のこと 。
・もう、マンゴーをカゴに入れるようなことはしないように。
・「もらえるものはもらっておこう」もほどほどに。
【手話通訳派遣をお願いしたお話】
・一人の夢では叶わないが、みんなの夢になれば実現する。
【身体障害者手帳取得に関するお話】
・聴覚障害のあるわたしのもとに、身体障害者手帳がやってくるまでーぶっちゃけ、いくらかかったの?ー