見出し画像

耳マーク:たった30秒の、誰もが嫌な思いをしない「聞こえる優しさ」の世界

みなさんは、「耳マーク」なるものをご存知ですか?

画像1

こんなマークで、バスの運転手席の近くや駅の窓口、役所の窓口なんかで見かけたことがあるかも!なんて思いだした方、大正解。

この「耳マーク」は

聞こえが不自由なことを表すと同時に、
聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマーク
一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会

を意味したもので、よく近くに「筆談できます」とか「手話できます」とか書いてあったりする。

そして、ここ最近はこのマークを起用したCMが、お茶の間に流れているらしい。ここで「らしい」と書くのは、わたしがテレビを持っていないが故に、本当にテレビで放送されているかを確かめられないから。

ちなみにわたしは大学院に入るタイミングで寮生活を始めたんだけど、その部屋があまりのも狭かったのと、当時あまりにも貧乏だったからテレビを買わなかった。寮には共用のテレビがあったし、その後も今のところHuluやTVerで事足りていると思っていて、今のところしばらくわたしの生活にテレビを導入する予定はない

さて、そんなことは置いておいて。この春、かのACジャパンが主催する第17回「ACジャパン広告学生賞」のテレビCM部門で、耳マークをテーマにした「聞こえる優しさ」(東京工芸大学 滝口太郎さん)がグランプリを獲得したらしい。

ちなみにかのACジャパンなんて書いてしまったのは、2011年春にわたしの地元が震災で連日メディアに取り上げられたときに繰り返し流れた「ポポポポーン」のイメージが強すぎて、わたしたち聴覚障害者とあのCMがどうもすぐに結びつかなかったからだ。

あのCMはちょっとトラウマだけれど、震災特番は必要だし、特番になったら予定されていた番組は放送されなくて、スポンサーも見つかりにくい。そして、わたしの親戚は震災特番の中継のおかげで安否が確認できたなんていうエピソードが実際にあったもんだから、震災特番の必要性は十分理解している。

だからこそ、そんなタイミングで日本経済の屋台骨といえる大企業が会員に名を連ねるACジャパンがCMを提供することは、本当に意義のあるものだということも、震災から時を経るにつれて理解してきた。

そんなACジャパンで、今月から放送されているCMがこれだ。

たった30秒のCMだけれど、

耳マークを見つけた難聴の女性はためらいなく【書く】と身振りで伝え、それを受け取った店員さんはさも当然かのような顔をしてホワイトボードを手渡す。それをみている男性も、最初は耳マークとはなんぞや……なんて表情をしていたけれど、彼女と店員さんのやりとりを腫れ物のようには感じていなさそう

たった30秒の短い動画だけれども、誰もが嫌な思いをしていない優しい世界が、そこにはあった。

昨日の音の世界と音のない世界が、ほんのり明るくなって、青いピンが赤に変わった。にも書いたけれど、わたしたち聴覚障害者も聴こえる人と同じように、街で見つけたお店にふらっと入ってサービスを楽しむ。

音声でのやりとりが文字に変わったり、口の形が見やすくなったり、そのために照明がちょっぴり明るくなったり。音の世界の人たちが、音のない世界をちょっぴり覗いてくれるだけで、わたしたちの日常はガラッと変わる。

なんて偉そうなことを書いているけれど、実際のわたしはあんまり筆談をお願いすることはなくて。そういえば、昨日のnoteで取り上げたお店でも、店員さんが何て言っているか分からないのに「はい」と言い続けていた。

「耳マーク」掲示しているお店でも、店員さん忙しそうだなとか筆談してバスのダイヤが乱れたら申し訳ないよな、とか思うと、わたしは分かったフリをしてその場をやり過ごしてしまうことが多い。

でも、このCMみたいに実際に身振りや筆談をしているところを「耳マーク」や聴覚障害者を知らないきこえる人に見てもらわないことには、世界は変わっていかないよな。とちょっぴり反省した。

そして、反省の証にこのnoteに「耳マーク」のことを書いてみるなどしている。このnoteを読んだり CMを見た一人でも多くのきこえる人が、わたしたちの世界を覗いてくれるきっかけになりますように。なんて願いながら。

【参考にした記事】
・「耳マーク」一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
・第17回ACジャパン広告学生賞 テレビCM部門 グランプリ受賞作品
聞こえるやさしさ(公益社団法人ACジャパン

見に来てくださりありがとうございます。サポート、とっても心の励みになります。みなさまからのサポートで、わたしの「ときめき」を探してまたnoteにつらつらと書いていきます。