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音の世界と音のない世界の狭間で

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聴覚障害のこと。わたしのきこえのことを、つらつらと。
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#最近の学び

蛇口の捻りが甘かったときのお水って、どんな音をしてこぼれているんだろう。

大なり小なり、人には「許容範囲」というものが存在するだろう。 例えば、湯船にお湯をはる頻度だったり、エアコンの設定温度だったり、寝具を洗うタイミングだったり。 先日、彼の家で朝方にトイレをしたら手洗い場の水が出なかった。しょうがないから台所で手を洗ってもう一度布団に入って、彼が起きてから「ねぇ。トイレの手洗い場、水が出ないんだけど」と伝えた。 すると「あぁ。昨夜、僕が強く締めたんだよね。さんまりちゃん、水出しっぱなしでお風呂に入っちゃったんだもん。だから、えいって!」と

通訳は誰のために

この世界は、多い人に合わせて作られている。 たとえば、ここがスペインだったら。お店で出てくるメニューはスペイン語表記のものがほとんどで、日本語表記のものはあったとしても頼まないと出てこないだろう。 たとえば、ここが通勤電車だったら。電車に乗る人は大多数が大人で、吊り革は160cmくらいの高さにある。地下鉄通学をしていた小学生時代はなんとしてでも座るか握り棒を握りしめていた。 そしてこの日本は、キコエル日本語話者が大多数で。わたしたち聴覚障害者、もとい手話を使う人たちは圧

聴覚障害のあるわたしのもとに、身体障害者手帳がやってくるまでーお値段、いくらかかったの?ー

前回「聴覚障害のあるわたしのもとに、身体障害者手帳がやってくるまでー申請と交付の流れー」という記事で、身体障害者手帳の申請から取得までの流れとそのときに感じたことを紹介しました。 すると、この記事を読んだ方から「診断書等でお金の支払いはあったのか?」という質問をいただきました。 結論から言うと、身体障害者手帳の申請自体は無料で行えます。しかし、自治体の指定する医師からの診断書を受けるときと、証明写真の撮影で支払いが発生しました。金額は、6,000円程度です。 今回は、聴

自意識過剰、万歳。 #tokyo2020

あの日、オリンピックの開会式を中継したテレビ画面に、手話通訳者のワイプ映像が映らなかった。 ピクトグラムの演出で沸き上がり、長嶋茂雄さんが聖火を持って走る感動に包まれたあの開会式の最中、複雑な気持ちを抱えた人たちが、確かに存在した。わたしたち聴覚障害者の中にも、複雑な思いをもった人が少なくないだろう。 わたしの記憶の中で一番古いオリンピックは、2000年のシドニーオリンピック。当時わたしは小学1年生で、担任の先生やクラスの友達が「オリンピックだ!」という話題についていきた

人形が、夢から目覚めない。

お風呂に入る時間が、1日の中で一番好きな時間だ。春夏秋冬温泉に行きたいし、自宅の湯船には、真夏だろうとお湯をはる。 春先に引っ越したばかりの知り合いの家に遊びに行ったら、引っ越して2週間くらい経つというのに「一度もお湯をはっていない」と言われて、本当にびっくりした。せっかく浴槽があるのに、そこにお湯をはらないという選択肢があるのか!そんなのもったいない!、そのままお湯をはって一番風呂にまであずかってきた。わたしのお風呂好きは、お節介な上に、図々しいにも程がある。 お風呂と

もう、マンゴーをカゴに入れるようなことはしないように。

最近どうも、男の人の声が、聴き取れない。 「もらえるものはもらっておこう」もほどほどに。に書いたように、今、新しい補聴器を借りて試聴していまして。気付いたら、この補聴器との生活も、そろそろ2ヶ月になる。 こんなに長い間借りても良いのか?!とも思いながら、3週に一度くらい音の調整をしてもらいながら、試聴を続けている。 補聴器を変えてみて、言葉が聴き取れる割合がグッと上がった。普通の音声での会話は大体60dBくらいと言われているんだけれど、この60dBで大体65%くらいの言

耳マーク:たった30秒の、誰もが嫌な思いをしない「聞こえる優しさ」の世界

みなさんは、「耳マーク」なるものをご存知ですか? こんなマークで、バスの運転手席の近くや駅の窓口、役所の窓口なんかで見かけたことがあるかも!なんて思いだした方、大正解。 この「耳マーク」は 聞こえが不自由なことを表すと同時に、 聞こえない人・聞こえにくい人への配慮を表すマーク (一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会) を意味したもので、よく近くに「筆談できます」とか「手話できます」とか書いてあったりする。 そして、ここ最近はこのマークを起用したCMが、お茶

「もらえるものはもらっておこう」もほどほどに。

外出したとき、ヒヤッとする瞬間ベスト3に 補聴器の電池がなくなりそう かつ 替えの電池を持っていないとき がランクインする。そして昨日、ついにそのトキがやってきてしまった。 先日「補聴器とiPhoneが、はじめてBluetoothで繋がった日のこと。」にも書いたんだけど、今わたしは新しい補聴器の試聴をしている。 眼鏡やコンタクトを装用して生活している人は、このnoteを読んでくださっている方々の中にも多いのではないかと思う。かくいうわたしも、眼鏡を小学2年生から、コン