Chapter13.5:官庁訪問って何ぞや?

※この記事は国家総合職の官庁訪問について書いています。国家一般職や国家専門職、及び外務省や防衛省の専門職はまた違う制度となっています。
※毎年スケジュール等が変わります。特に受験生は最新の情報を直接確認してください。



こんにちは。三条です。

ここまで既に13回お送りしてきた就活体験記ですが、いよいよ(やっと?)本番に入ります。


そう、「官庁訪問」です。




しかし、官庁訪問と言ってもピンと来ない方が多いと思うので、軽く説明をしたいと思います。
官庁訪問とは、国家公務員を採用する行政機関が行う採用活動のことです。戦前からこの古臭い名称を使っているとか。
官庁訪問の中身は省庁によって様々であり、一概に語ることはできません。しかし、少しネットでググれば分かるように、短期決戦・長時間拘束が大きな特徴となっています。この長時間拘束はどれくらいかというと、途中で帰らされない限り


12時間は当たり前



とされています。ググッてみると、事前に終電の時間を確認されて終電間際まで拘束されるケースもあったようです(近年は無いと信じたい)。


アホか。




思わずこう口をつくくらいのアホさです。正直、志願者が減るのは当然というか、自業自得と言う他ないでしょう。




という本音はさておき、2021年度の官庁訪問は下記のようなスケジュールでした。


第1クール→6月23日、24日、25日
第2クール→28日、29日、30日
第3クール→7月1日、2日
第4クール→5日
第5クール→6日
最終合格発表→6日

※2021年度は第1クールはオンライン必須、第2クールは対面可(という名の実質的な対面強制)でした


官庁訪問はクール制を取っており、各クールで各省庁を1回しか訪問できません。また、第2クール以降から参加することも原則としてできないはずです。この制度より、以下のことが導き出せます。


・挑戦できる省庁は3つまで
・途中で落とされたら試合終了、救済は無し



これだけでも、相当過酷で非合理的であることはお分かりいただけると思います。


また、官庁訪問の実態を知る上で、総合職試験の最終合格者数と各省庁の採用予定数の合計について知る必要があります。

2021年度は、大卒の全ての試験区分(法律区分、政治・国際区分、経済区分など)の最終合格者数を合算するとおよそ450人です。しかし、各省庁の採用予定数の合計はおよそ150人です。したがって、


3人に2人は落とされる




という計算になります。それなりの期間をかけて対策する必要がある総合職試験を乗り切ってもなお、3分の2がお祈りされるという世界です。気が狂ってますね。


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ここまで官庁訪問の制度やスケジュールについて説明しました。


何でこれで人が集まると思っているの?




というのが、就職活動を円満に終えてからの率直な感想です。ここまで過酷な採用活動と入省後の薄給激務ぶりを踏まえると、コスパが悪いどころの話ではありません。文字通り国のために死ねと言われているに等しいでしょう。
キャリア官僚の不人気さはここ数年5月になると毎年のようにニュースに出てきます。その背景には、このような過酷な採用活動(それに民間企業よりもかなり遅い)も一因としてあることを知っておくと良いと思います。



……というわけで、本筋から逸れてしまいましたが、これらを頭に入れておくと次回以降の官庁訪問編を読みやすくなるのではないかと思います。ご笑覧ありがとうございました。


Chapter14 に続く



(ここから先は見苦しさを含む愚痴になります。見たくない方は読まないことを推奨します。)



 キャリア官僚の志望者が激減しているというニュースは毎年出てきます。志望者が減っているということは、1ミリでもなろうと思う人が減っているということでもあります(実際は総合職試験を模試がてら受験するだけでなる気は1ミリも無い志願者もかなりいますが、毎年そこまで変動するわけでもないと思われるので除いて考えます)。
 では、なぜ1ミリでもなろうと思う人が減っているのでしょうか。すぐ思い浮かぶ要因としては、公務員の仕事自体に魅力を感じなくなったという「積極的な忌避」が挙げられます。確かに、行政の縦割りや叩かれがちな汚れ仕事、不祥事などのマイナス要因は少なくありません。しかし、それならばもっと官僚の不祥事が明るみに出て非難された時代はありました。1980年代後半から90年代にかけて、政治とカネの問題絡みで官僚の不祥事も多く報道されました(ノーパンしゃぶしゃぶとか)。その時代よりもここ4~5年の方が深刻に叫ばれているということは、積極的な忌避だけが原因とは考えにくいのです。
 そこで、私が最終的に公務員を避けた理由でもある「消極的な忌避」があります。これは、官僚自体が変わったわけではないけれど、周囲が変わったことにより官僚の悪さが際立ったことです。具体的には労働環境です。かつて私が生まれていない頃には、モーレツサラリーマンという言葉が流行りました。「24時間働けますか?」というキャッチフレーズで栄養ドリンクが飛ぶように売れたそうです。この時代の長時間労働は官民を問わないものです。日本型雇用による団結と長時間労働は、日本の生産性の源でもあったと言われることもあります。しかし、その慣習はここ10年で一気に変わっているように思います。知名度がある企業ほど長時間労働の是正は進んでいるように見えますし、何より新卒の就活生の間で労働環境は最重要項目と言っても過言ではありません。しかし、公務員(特にキャリア官僚)はどうでしょうか。確かに昔よりはマシになったかもしれません。しかし、残業時間200時間が100時間になったことは、数値上劇的に改善していたとしても、事実上、長時間労働は是正されているでしょうか。元就活生としては、残念ながら極めて厳しい視線を向けざるを得ません。
 また、官僚の労働環境の実態についてピンと来ていない人もいるかもしれません。私が知る限り、以下のようなエピソードがあります。


・私よりひとつ年上の先輩の予備校時代の友人で総合職に就職した人たちは、1年目で半分程度が退職した(これは実際より多いとしても、3分の1程度は1年目で退職しているという話もある)

・私が受けた某省は、説明会で「昔よりだいぶ労働環境は良くなった」としきりに宣伝していた(その省は現在でも残業時間の平均が高いことで有名)

・在籍校の授業で某省の役人が講演に来た際に、「私も若手の頃は300時間くらい残業したこともありました」という旨の発言した(後輩からの又聞き)

・かつて財務省では、残業時間の多い職員を順番に並べた「恐竜番付」なるものが存在した(その上位にいたのがモリカケ問題で証人喚問された佐川氏)

・残業代は80時間や99時間で切られるのが当たり前だったが、河野太郎が行革大臣をやっていた時に一時全額支給されるようになった


これらの話が複数の筋からそれなりの信頼度を以て流れている時点で、近年の就活の情報戦において圧倒的敗北を喫していると言わざるを得ません。完全に近年のトレンドに乗り遅れています。日本や世界のトップレベルを張れる人材のうち、激務でも適切な報酬を貰いたい人はコンサルや総合商社に行き、職務と報酬のバランスを取りたい人は多様な業界の大企業に行き、自ら世の中に新しい価値を届けたい人はベンチャーに行ったり起業したりする。他にも目標に応じて様々な道がある。官僚はその目標を達成するための有力な手段になり得るか、と言われると、現時点では魅力に乏しいと言わざるを得ません。さらに言えば、魅力があったとしても失うものがあまりにも多すぎるでしょう。
 キャリア官僚の志望者減少について、リアリティを持って危機感を感じていた方は多くないと思われます。しかし、この記事を読んで、少しでもこう思ってくれる方が増えてくれれば、書き殴った甲斐があります。


国の頭脳とその原石を侮辱するな。


そして、


こんな制度を続けて今後も優秀な人材が集まり続けるだなんて死んでも思うな。


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