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記憶の中の波間にゆれる

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書いた詩を まとめています。
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2023年8月の記事一覧

無題

窓を開けたら
少しだけ欠けた月が
紺碧に溶けていた

ああ、優しいな、と思った

ときおりぬける
暑い夏の
生ぬるい風が

わたしの足をさらう

旅の途中で出逢った
走馬灯のような 人たちが

きっときっと
満ち足りた気持ちで一日を終えていると
信じたい

わたしは

紺碧に溶けた
少しだけ欠けた月に

目を閉じて
願いをかける
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム

シスコの少年

芝生の庭を横切って
玄関のポーチに腰掛けた
ジーンズのすそのほつれを気にしながら

世界が
ひだまりの色に染まる時
在ることが

あなたの髪の色と
とても似ていて

僕は ちいさくため息をつく

きっとそこに在るのに
探し物がなんなのか僕は知らない

あなたは 笑うだろうか
若い僕の 憂鬱の理由

恵まれているのよ
悩みがあるなんて、と

あなたは いうだろう

世界に無関心

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記憶

どれもこれも
いい加減で

呆れ返るほどあからさまに愛したり
辟易する

もう二度とごめんだ

優しすぎる
子供すぎる
わがまますぎる

だけど
どうしても切れない
だれのことも愛さないあなたとの細い糸

いいえ
切る気がないのは
まぎれもない

わたしひとりだ
#詩作 #詩を書く#詩#ポエム

無題

昨夜 すこし気取ったバーに行った

こんなとこで
大人の女みたいに
ひとりで お酒を飲んでみたかったの

琥珀色したバーボンを

なにか もの憂いしい感じで
だまってぐいっとお酒をあおってみたかったの

特に悩みなんてないの

でもそんなことは
どうだっていい

ちょっと そういうのに憧れただけのこと

外の空気が
思いのほか 冷たくて

雨のアスファルトを走り去る車の音が

なんだか
とっても盛

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早朝

つたう朝露と
自分の過去と
つなぎ合わせて

それらしくふるまう

スープを作るみたいに

いつもやっていることよ、というみたいに

確かなことは
わからないけど

それらしくふるまう

じゃり石のうえを
じゃこじゃこと歩くみたいに

大切なのは
毅然とふるまうこと

わたしにしかわからないことなの、というみたいに
#詩 #詩を書く#詩作#ポエム