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「声に出して読みたいオープンダイアローグ」をやってみよう その2:2023年度第1回研究会(2023.4.27)の報告

 産業オープンダイアローグ研究会(勉強会)の報告をさぼっておりました。今回ご紹介するのは、「声に出して読みたいオープンダイアローグ」です。2023年2月の第6回勉強会、および2023年4月の第1回勉強会で取り上げましたので、まとめてご報告します。zoomによるオンラインで実施しました。

●「声に出して読みたいオープンダイアローグ」とは

 「声に出して読みたいオープンダイアローグ(以下、読むOD)」は精神科医、大井雄一さんのアイデアから生まれたもので、雑誌「精神看護」に3回シリーズで連載されました。(オープンダイアローグでは、「先生」といった呼称、肩書を使わないのが通例なので「さん」呼びで書いております)
 かつての私もそうでしたが、オープンダイアローグの本を読んだり講演を聴いても、「具体的にどうやるのかイメージがしづらい」、「どのように学んでいったらいいかわからない」といった声がよく聞かれます。そういった方の学習の一助となるように考えられたのが「読むOD」です。その方法は、面接場面のロールプレイと考えていただくのがわかりやすいと思います。大井さんが作成した、複数の人物が登場する面接のシナリオを、参加者が自分の担当を決め、シナリオに従って順番に読んでいく。ただそれだけです。そしてなんと、このシナリオを無料で公開してくれているのです!何という太っ腹。リンクからご覧ください。

●シナリオ・ロールプレイをやってみた

 2023年2月の勉強会では「読むODシナリオ1」を、2023年4月の勉強会「読むODシナリオ2」を取り上げました。勉強会の前半は雑誌「精神看護」の大井さんの解説部分を米沢が読み上げ適宜コメントを加え、後半はシナリオの登場人物の担当を決め、残りの人はロールプレイの「観察者」として参加しました。観察者はビデオをオフにして画面から消えます。ダウンロードしたシナリオを画面に表示し、シナリオに従ってそれぞれの役柄が読み上げていきます。
 ロールプレイというと、「役柄を演じなければ!」と構えてしまうものです。特に「観察者」がいると、うまくやらなければ!と思ってしまいがちですが、大井さんは、「安心して棒読みで参加してください」と書いています。そう言われると肩の力がちょっと抜けますね。本当にそれでいいんですか?と思ってしまうかもしれませんが、大丈夫です!棒読みで十分に体験できます。ともかく気楽にやってみましょう。

●プレーヤーの感想

 読むODシナリオ2の所要時間は約20分でした。以下のような感想をもらいました、
 
スクールカウンセラー役
・話しやすい空気を作ろうとするのに一所懸命、シナリオを読むのに一所懸命になった
・まるでそこにいて体験しているような、不思議な感覚になっていく
・自分がスクールカウンセラーになったような気持ちだった
・大下君のことがすごく心配になって、リフレクティングのところでも感情が乗り移ってしまった
・セリフを読むだけなのに、みんなで通じ合えている感じがした
 
生徒役
・シナリオをそのまま話すだけでもシチュエーションに引き込まれていく
・心配していると言ってもらえ、ハッとした
・追体験できる。不思議な感じ
 
担任役
・日頃のクライアントへの関わりとオーバーラップした
・焦っている感じ、すごく心配なので早く解決してあげたいという気持ちを感じた
・それを感じながら話していくと、対話の速度が違うと感じた。焦りとは違って、少しゆっくりで、核心にズバッと切り込む感じではなくて、対比が感じられて面白かった
 
養護教諭役
・シナリオの文字をずっと追いかけていたせいか、全体がつかめなくて、あれ?あれっ?と思いながらやっていた
・誰と誰がリフレクティングをやるのか、わからなかった
 
 棒読みでいいとあえて断って始めたわけですが、やはりロールプレイが進むにつれ、みなさんが役柄に入っていくんだなと感じました。米沢は観察者でしたが、事前にシナリオを読んでいなかったので、途中、「教室に入ると、変な目で見られたり、悪口を言われているような気がして」という大下君の言葉を聞いて、あれ、これは妄想?とか考え始めました。そして、あ、自分はこうやって診断しちゃうのだなと気づき、その後のやり取りにまた意識を向け直しました。各人が一通り感想を述べたあとは、自由に意見を語り合い、議論を深めました。最後に、「型」ではないけれど、シナリオを使って体験としてやってみられるのは、やはりいいと思うという春日のコメントで会を閉じました。

●「読むODシナリオ1」の報告

 2023年2月の勉強会では「読むODシナリオ1」でロールプレイを行いましたが、録画を忘れたのでメモ書きを簡単にご紹介します。

・シナリオを読んでいるだけでも感情を感じてくる
・自分も子どもを持つ母親なので、母親役だったらたまらなかった
・シナリオを読んでいくと冷静になっていった
・アドリブが入るともっと感情が出るんだろうか
・棒読みではなく感情をこめたらどうなるだろうか
・ケースにあてはめてやってみたくなった
・自分が喋る番がくるまで緊張した
・シナリオにはいつもは言わないような暖かな言葉があった

 大井さんから「読むOD」の話を聞いたのは2022年12月の日本心理劇学会でした。雑誌が出てすぐ購入しシナリオを読んでみたのですが、実はその時はあまりぴんときませんでした。けれど実際に役を割り振ってロールプレイをやってみると、違うのです!これがポリフォニー(多声)の意義なのかもしれません。ひょっとすると一人でも、声を出してやってみたら違うのかもしれませんが、やはり人が集まってやってみて、それぞれの感想をシェアする方が実りが多いように思います。
 
 次回の勉強会は6月29日。「読むODシナリオ2」の続きの話となる「読むODシナリオ3」を取り上げます。どんな展開になるのかというワクワク感をとっておきたいので、私はシナリオ3の予習はしないことにしました。
 

リンク

1)精神看護(医学書院)「声に出して読みたいオープンダイアローグ」
https://note.com/yuichi___/n/n31b36d08c555
2)学会参加報告:日本心理劇学会 第28回大会でオープンダイアローグを味わう
https://note.com/sangyo_dialogue/n/n0c45fbdfdfdf?magazine_key=m83de889eb77a

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