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震災とコロナ5度目の冬(JES通信【vol.177】2024.2.13.ドクター米沢のミニコラムより)


1.震災後のメンタルヘルス

 能登の震災から1ヶ月が過ぎました。当初は被害の全貌がなかなか明らかになりませんでしたが、日を追って入ってくる映像や情報に愕然とした方も少なくないのではないでしょうか。地盤が4m(二階建て住宅の高さ)隆起したとか、海岸線が数百m沖に動いたなど、想像を絶する事態に言葉を失いました。

▼被災者の回復の二極分化

 大災害が起きた時、まず自分の命を守り、可能な範囲で救助に動きます。大きなケガなどがなければ避難所等へ移動し、次は「命をつなぐ」ための衣食住が重要になります。寒い体育館などで低体温症を起こすと、助かった命も危険にさらされます。何とか命をつなぐことができると、1ヶ月を過ぎた頃から復旧が徐々に進み、生活が平常化に向かう方も出てきます。この時期になると、生活再建に積極的に立ち上がる人と、さまざまな原因で立ち直りに向かえず、取り残された感覚が強まり、周囲から孤立していく人に二極分化していくと言われています(資料1)。
 メディアが取り上げる頻度も徐々に減っていきます。「人々は復興に向けたくましく立ち上がり」といった報道に接すると、世間は徐々に「もう大丈夫なのかもしれない」と考えて関心が薄れていくのですが、被災地の人には取り残され感を生むことになるでしょう。

▼メンタルヘルスのサポートはこれから

 私たちEAPやメンタルヘルスのサポートを担う立場の人間は、これからが出番と感じています。精神的健康を回復・維持・増進するための適切な情報提供と、判断に迷った時の身近な相談者として、また人により様々な回復や復旧への道程のしばらくの伴走者として、役割を果たしていきたいと考えております。

2.コロナ5度目の冬

 コロナが日本に入ってきたのは2020年1月、今回で5度目の冬です。冬が一番大きな流行になることは過去4年のデータからわかっていますが、この冬も12月から増え始め、年明けから急拡大しています(資料2)。感染予防に大切なポイントをおさらいします。

▼風邪症状が出たら人と会わない

 コロナにかかったかどうかは検査しなければわかりません。感染拡大を防ぐ方法は、発熱、咽頭痛、咳などの風邪症状が出たら、できるだけ人と会わないようにすることです。どうしても会う場合はマスクがあるとリスクを低減できます。ウイルスは発症から6-9日間、鼻腔から検出されるので(資料3)、マスク装着の目安となります。

▼抗原検査キットを活用しよう

 人にうつさないための確実な方法は、抗原検査キットで感染力の有無を確認することです。流行期は品切れのこともありますので、あらかじめ数個用意しておくと安心です。
 以下の記載は健康に問題のない方がコロナにかかったかもしれない時の検査の使い方です。基礎疾患等、コロナに罹患すると重症化する恐れのある方は、症状が出た際にすぐ受診した方がよいか、主治医とよく相談してください。

 ○色が薄くても陽性は陽性

 キットにはC(コントロール)とT(テスト)の文字があります。CとTの部分の両方に線が見えれば陽性です。感染初期はTに薄い線しか見えないことがあり、陰性と勘違いされる方が少なくありません。見慣れていないと仕方ないのですが、どんなに薄くても陽性は陽性。ウイルス量がまだ少ないので薄いのですが、感染していることに違いありません。線の薄さから「微陽性」とか「偽陽性」などと表現するのは、間違いです。

 ○初回の検査は症状が出た翌日に。陰性なら2日後に再検査

 コロナ禍の初期は症状が出る頃に鼻腔のウイルス量がピークになっていたので、症状が出てすぐに検査すれば感染の有無がわかりました。ところが、最新の報告では感染から発症までの期間が短くなり、発症日に検査しても陽性になる確率は30-60%だそうです(資料4)。
 
 そのため、症状が出た日はまずは人に会うのをやめ待機して、翌日に1回目の検査をしてください。現在はインフルエンザも流行っているので、1回目の検査はコロナとインフルエンザを同時に測定できるキットをお勧めします。
 1回目の検査が陰性だった場合、米国CDCは48時間後の再検査を勧めています。
 それも陰性でまだ症状がある場合は、溶連菌感染症など他の疾患かもしれません。医療機関に受診や相談をして助言を受けましょう。症状がなくなったけれど感染が気になる方は、さらに48時間後に検査してください。それも陰性ならコロナの可能性はほぼありません。

 ○待機推奨期間は5日間ですが…

 感染した場合、国の待機推奨機関は、発症日を含まず5日間です。先ほど紹介したように感染性のウイルスが鼻腔から検出される期間は6-9日間ですが個人差が大きく、発症から3日程でウイルスが消える人もいれば、14日間くらい検出される人もいます。念のため、発症6日後の朝に抗原検査で陰性を確認してから人と会うことをお勧めします。
 以上の情報は、図や写真入りでnoteにも掲載しました。より詳しく知りたい方はご覧ください(資料5)。

▼ワクチンの無料接種は3月末まで

 この冬の流行を考えると、ワクチン接種可能な方は追加接種をお勧めします。
 無料接種は3月末までです(資料6)。お手元に接種券がない方は早めに自治体に申請してください。手に入るまで1-2週間かかります。
 私はこの冬が最後の大流行になるのでは、と考えてきましたが、最近の欧米の再流行の様子を見ると、残念ながらまだまだ油断できないのかもしれません。

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