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2024年冬における抗原検査キットの活用


▼コロナの動向と抗原検査の意義

○コロナの動向

 研究所noteでは新型コロナウイルスに関する情報も定期的に取り上げてきました。この冬もこの冬も12月から増え始め、年明けから急拡大しています(資料1)。オミクロン系になって感染力はインフルエンザの3倍などとも言われており、この冬も多くの方が感染する可能性があります。何とか賢く乗り切りたいものです。

○抗原検査は自分の感染を確認し、他人にうつさないために活用する

 コロナの感染拡大を防ぐ方法の一つとして取り入れられたのが抗原検査キットです。当初日本では、抗原検査はPCR検査に比べ感度が低いので信用できない、みたいな言い方がされました。ウイルス量が少ない時期に検査すると陰性の結果が出てしまうので(いわゆる偽陰性)、感染の確認ができないというわけです。しかし逆に言えばウイルス量が多い時期は抗原検査が陽性なり、他人にうつす可能性が高く、感染拡大を防ぐ(防疫)のためにはPCR検査よりも役に立つことがわかってきました。図1を見ていただくとこのあたりのことがわかるかと思います。

<抗原検査 図1>

 抗原検査キットの活用については辻洋志氏が詳しく述べていますので、興味ある方はご覧ください(資料2の4ページ)。
 デルタ株(2021年)までと、それ以降(2021年末以降)のオミクロン期では、ウイルス動態が異なることがわかっています。今回は最新の研究結果を踏まえた抗原検査キットの使い方をご紹介します。

▼2024年冬における抗原検査キットの使い方

○コロナ初回検査は症状が出た翌日に。陰性なら2日後に再検査

 新型コロナの難しさの一つは、症状が出る1、2日前にはウイルスがかなり増えていて他人にうつすことでした。症状が出る頃に鼻腔のウイルス量がピークになっていたので、症状が出た時に抗原検査を行えば感染の有無がわかりました。ところが最新の報告では、感染してから症状が出るまでの期間が短くなり、症状が出た日に検査しても、陽性になる確率は30-60%なのだそうです(資料3)。検査の感度が最も高くなるのは4日目あたりなのです。「熱が出たので抗原検査したけれど、陰性だったからコロナじゃない」と言って出歩いている人が少なくないのですが、実はコロナだった可能性があります。

<抗原検査 図2>

 こういった事態を避けるためには、まず風邪症状が出た日には検査は行わず、人に会うのをやめ待機して、翌日に1回目の検査をしてください。
 今はインフルエンザも流行っていますので、1回目の検査はコロナとインフルエンザを同時に測定できるキットをお勧めします。
もしも1回目の検査が陰性だったら、米国CDCは48時間後に再検査することを勧めています。この時はコロナの検査だけでいいと思います。それも陰性でまだ症状がある場合は医療機関を受診してアドバイスを受けてください。溶連菌感染症など他の疾患かもしれません。症状が軽くなっていて受診するほどではないと思った場合、念のためにさらに48時間後に検査して、陰性を確認した上で行動すると安心です。ウイルス量のピークは4日目あたりということを忘れないでください。
 なお基礎疾患等があってコロナに罹患すると重症化する恐れのある方は、主治医とよく相談して対処を決めておいてください。

○抗原検査キットを数個、家庭に常備する

 抗原検査キットは各家庭に数個、常備しておきましょう。かかったら買おうと思っても、流行期には品切れで手に入らないことがありますし、身体が辛くて外出どころではないかもしれません。
 
○どんなに色が薄くても陽性は陽性
キットにはC(コントロール)とT(テスト)の文字が刻まれています。CとTの部分の両方に赤などの線が見えれば陽性です。感染初期ですと薄いTの線しか見えないことがあり、陰性と勘違いされる方が少なくありません。見慣れていないから仕方ないのですが、どんなに薄くても陽性は陽性です。まだウイルス量が少ないけれど感染しています。「微陽性」とか「偽陽性」などと仰る方があるのですが、それは間違いです。図3にうすく出ている陽性をお見せします。

<抗原検査 図3>

○待機推奨期間は5日間ですが

 感染した場合、国の待機推奨機関は、発症日を含まず5日間です。しかし2023年の情報では感染性のウイルスが鼻腔から検出される期間は6-9日間と言われています(資料4)。 

<抗原検査 図4>

 実際にはかなり個人差が大きく、発症から3日くらいでウイルスが消えてしまう人もいれば、14日間くらい検出される人もいます。念のため、発症から6日目の朝に抗原検査で陰性を確認してから人と会うことをお勧めします。

○抗原検査結果の推移の実例をお見せします

 感染した場合、抗原検査の結果がどのように推移するか、実例をお見せします。これは2022年5月に米沢が感染した時の経過です!

<コロナ経過 図5>

 朝起きたら咽頭痛!ついにコロナに捕まったか!?と焦りました。ところがその日の夕方に抗原検査を行ったところ陰性。おかしい。経験したことのない痛みでしたので翌日昼に再検査したのですが、それも陰性。コロナではなかったのか?と迷いました。この時期にはまだ先ほどの研究報告は出ていなかったのです。翌日が発症2日後で月曜。咽頭痛は軽くなっていて、仕事に行けなくはなかったのですが、念のため在宅勤務に切り替えました。そして昼に検査したところ、うっすらと赤い線が出ました!やはりコロナだった。その日の夜から一晩だけ微熱が出ました。その後の検査の推移を見ていただくと、4日目、5日目に一番色が濃くなっています。上で紹介した研究報告と一致する所見です。7日目には治った感じでしたが、陰性になったのは9日目でした。実は改めて見直してみると、10日目の検査ではまた薄く赤いラインが出ているようにも見えるのですが、まあ善しとしましょう。

○どこでコロナをもらったのか

 コロナの情報を定期的に発信している立場ですから、日頃の行動もかなり注意していました。どこで感染したかは確定できないのですが、おそらく学会のために利用した飛行機内だろうと思っています。飛行機は換気がいいと言われていますが、飛行機のクラスター報告を後から知りました(資料5)。

▼2024年冬における対策の基本

 私が産業医の立場で一貫して発信してきたのは、職場クラスターで業務を滞らせないための対策です。この冬を乗り切るには以下のような対策をお勧めします。

表 COVID-19対策の基本(2024.1.24版)

1.風邪症状が出たら人と会わない
2.ワクチン3回以上接種
3.三密回避
  密集 → 人が集まる場所を避ける
  密接 → 喋っている人から距離を取る
  密閉 → 換気する
4.三密場面ではマスク
5.手洗い・手指消毒
6.抗原検査キットの活用 

 一番大切なことは、風邪症状のある人ができるだけ人と会わないことです。会う場合はマスクをしっかりとつけましょう。特に今のようなコロナ流行期は、自分がかかっているかもしれないと考え行動してください。自信を持って活動するために抗原検査キットを活用しましょう。検査は自分のためだけでなく、他人にうつさないためにも役立つのです。
 発熱外来やコロナ病棟のドクターに聞くと、ワクチン未接種の方やワクチン2回接種までの方、そして最終接種から1年以上経っている方の肺炎が増えているそうです。無料で接種できるのは2024年3月末までですので、接種をお考えの方はお住まいの自治体に問い合わせてください。

リンク

1) https://moderna-epi-report.jp/
2) https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/3416/6295/0639/3486.pdf
3) https://academic.oup.com/cid/advance-article/doi/10.1093/cid/ciad582/7285011?login=false
4) https://www.nature.com/articles/s41467-023-41941-z
5) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8652895/

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