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青森・田村ファミリーのすごすぎる手作り生活 PART2「自宅に水道を引いてみた」編

青森県にすごい家族がいる。
過去に何度もテレビで取材され、「超節約家族」「究極の0円家族」「自給自足家族」などのキャッチフレーズで紹介された。
わかるとおり、田舎で自給自足生活を送る家族だ。

前回の記事では書籍『都会を出て田舎で0円生活はじめました』の中から、「20万円で家をつくってみた編」を紹介した。

今回は、電気ガス水道も自給自足で賄う田村ファミリーが自宅に「水道」を引いたときの様子をご紹介する。

書籍『都会を出て田舎で0円生活はじめました』(サンクチュアリ出版)

みなさん、はじめまして。僕の名前は田村余一といいます。
我が家は、青森県にあるとある平屋。家主である僕と、妻である嫁さん、そして息子の3人暮らしをしています。 よその家とちょっと違うのは、その家がぜんぶタダでもらった廃材でできていて、建てたのは大工さんではなく、家主自身が1から建てた手造りの家だということ。 そしてもう一つ違うことといえば、我が家では電気・ガス・水道を契約していない。スーパーでの買い物もあんまりしない。ほとんどお金を使わない生活だということだ。
えっ、それで生活できるの? と思うかもしれない。 できる!家族3人、充分に生活できている。そんな僕たちの「手作り生活」の様子を、書籍から抜粋してご紹介させていただきます。

カミさんとは、カミサマのことだったのか!

そもそも水は、生きていくのに必 要不可欠なもの。自給自足生活の舞台を考える場合、水のことを第一の軸にするのもありだと思う。 電気はソーラーパネルや風力発電で、ガス(火)は森林資源や廃材が多少なり入手できればまぁどこでも使うことができる。

だけど、水はそうはいかない。雨水だけで生活用水を確保するのは至難の業だし、 昔話のようにそのへんの川で洗濯なんてできやしない。今や日本中の河川は、陸の汚れが集まる巨大な排水溝のようになっている(どーしてこーなった?)。

個人でやれる濾過にも限界がある。もしどこかで飲めるほどの清流が流れているようなところがあったなら、そこは自給自足をするに相当なアドバンテージを持っていると思う。

しかし我が家の場合、新天地たる土地探しをしたわけではなく、実家でもともと所 有していた空き地を利用した、いわば「妥協地」である。 700坪の土地の半分はどういうわけか人為的な砂利がたっぷり入っていて畑になんてできやしないし、全体としては段々畑のように4段になってゆるく傾斜してい る。自給自足の王国とするにはなんとも使いにくい土地だ。

最初は、農業用水は屋根からの雨水をためて使い、実家の水道水をキャンプ用の水タンクに入れてきて飲み水や手洗い水にした。洗濯は実家の洗濯機を使わせてもら う。水に関してはオフグリッドとは程遠いありさま......。 そんな状況を1日にして変えたのは嫁さんだった。

ある日、畑に小川出現!

ある秋のこと。朝から所用でお出かけして、夕方前くらいに戻ってきた僕は驚愕した。なんとなんと、畑に小川が出現しているではないか!なぜか泥だらけの嫁さん。聞くと、畑の水はけをよくするためにスコップで溝を掘っていたらしい。

掘り進めるにしたがって土が泥状に変わり、徐々に水がたまってきた。 なんじゃこりゃ〜!と、泥だらけになりながら敷地のほぼ端っこまでズンズン掘って、後ろを振り返るとそこには小さな川ができていたとさ。

ほ〜ぅと感心したのも束の間。水はどんどん流れていく。じゃあとにかく水をためてみようと、廃材の大きなドカンを引っ張り出し、土地の落差を利用して小川の水を 引き込んだ。開通したばかりの小川の勢いは強く、あっという間にドカンは水でいっぱいになった。

縦割りした竹を樋にしてオーバーフローした水を敷地の端へ誘導した。あまりに突然の出来事。慌てつつもなんとか水場を作って収めてみた。水はかなり泥で濁っていたけど、日が暮れる頃にはだいぶ透明に近くなっていた。 こうして、たった1日にして水を掘り当て、小川を作ってしまった嫁さん。水源近 くを掘っているときには、体の半分くらいが土に埋まっていたらしい。

普通の土と違って、泥は水を含んでかなり重くなる。およそ メートルの距離を1本のスコップでひたすら泥を掻き出しながら進んだ。華奢な女性だと思っていたけど、見上げた「掘り根性」だ。その日の嫁さんは、泥にまみれた美しいカミサマだった。

イラスト:田村余一

翌朝、水場に行ってみると・・・

翌朝、水場に行ってみると泥の濁りも完全になくなり、透き通った水が見事に蓄えられていた。ちょっと心配だったオーバーフローの水は敷地の端のほうで、水はけ良く地下に自然浸透してくれていた。

こうして突如としてあらわれた我が家の水場はその後、毎年のようにアップデートを重ねていった。異物が混入しないように簡易濾過したり、フタ付きタンクに切り替えたり、風雨でも快適なように東屋を建てたり(もちろん廃材で)......真夏の日照り続きにこそ数日枯れることはあれども、真冬も凍らず、渾々と流れてくれている。

実家のジジィに聞いてみたら、大昔この土地は田んぼだったとのこと。つまり、もともと水が集まる場所だった。それまでずっと地下を流れていてまったく見えてこなかった水。うちの場合、それはかなり浅いところにあった。ひょっとしたら昔の田んぼの水路にドンピシャだったのかもしれない。なんにしてもミラクルな出来事。我が家の歴史に深々と刻まれることとなった。

以来、この水が我が家の揺るぎない生活用水となった。でもジツはこの水、少し曰く付きで僕らも飲むことはしていない。環境問題に関心がある人であれば想像に容易いかと思うけど、まぁそれについてはまた別の機会に。水、大事ですよぉ〜!

イラスト:田村余一


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