見出し画像

深夜、1人、青信号になるのをまつ/短編エッセイ


これを渡ってしまったら、
それこそ私はダメになる気がする。


夜が深くなっていくと、道を歩く人はほとんどいない。
終電を過ぎたこの時間は車も少なくて、
帰れなくなった人たちを乗せたタクシーが数台
通り過ぎていくような状態だ。

こんな時間になると、
田舎の信号機は働くことをやめるけれど、
都会の信号機は「もしも」に備えて稼働し続ける。


だから毎回試される。


車も人もいない状況での赤信号。
たった数歩で渡り切ってしまえそうな道での赤信号。

「誰も見てないから」


悪魔の囁きが頭をよぎる。
でも私はわたらないし、色が変わるのを待つ。

当たり前のことだけれど、
深夜に当たり前をやっている人は少なかったりする。
暗黙の了解みたいに、
昼間できていることが夜にはできない。

止まっている私を横目に進んでいく人を何人みただろうか?

まあ、どうでもいいのだけれど、、、、。



私が渡らないのは、
こんな小さなことでも自分を裏切った行動をしたくないから。
私の取柄は馬鹿正直なところだと思っているし、
その分上手くできなくて自暴自棄になることも多い。

でも、そんな時に胸を張って言えることが
一つでも多いと自分を認めてあげられるのだ。

馬鹿正直は生きづらい。
でも周りに流されることなく、守るべきことを守っている。
そう思うだけで少し誇れる。

こんな自分でも良い部分があると思える。
だからこんな小さなことでも私は私を貫こうと思う。


例えそれが誰もみていないとしても、

” 自分はその行動を見ているのだから。”



私が私を肯定してあげられるように、
今日も深夜に1人、赤信号を見つめる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?